甘い束縛 ~ 薔薇とクレマチス

天埜鳩愛

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 口の中を舐められただけなのに、凄く心地よくてでも途轍もなく恥ずかしい。熱っぽく名前を呼ばれ耳朶を噛まれながら「愛してるんだ。どこにもやらない」と囁かれ、くらくらとする。

(しぃちゃんが、俺を……)

 愛していると。特別だと、思ってくれていた。それだけで十分だった。
 祖父たち以外にもう、この世に薔太を大切に思ってくれる人は紫央しかいない。その紫央から愛の言葉を受け取ることができた。

(俺も好き……、しぃちゃんがどこの誰でも、俺がどこの誰でも、この気持ちは変わらない)

 自分ばかりが幸福に酔った薔太は、紫央からみたらどこかに逃げてしまおうとしている、ずるい想い人と思われているなど、頭からすっぽり抜け落ちてしまっている。
 胸がいっぱいなのに、頭が回らない。はち切れんばかりに張り詰めたものをブリーフから取り出されたからだ。

「ひうっ」
「ここを誰かに触らせたことは?」

 朝の兆しは何度か経験しているが、箱入りで育ったせいもあり、猥談はおろかそうした本を手にして自らを慰めることすら、殆どしたことがない。まして他人の手など借りたことなどないのだ。

「な……、ない」
「じゃあここを」

 べろり、と唇を舐められてから再び音を立てて唇を押し当てられた。びくびくっと身体が揺れる。紫央の大きな瞳が行灯の灯りにぎらりと煌めく。

「唇を誰かに許したことは?」
「な、ないよぉ」

 もう片方は紫央の指先で乳首をこねられ、摘まれた。びりびりとした刺激が駆け抜ける。女の子でもないのにここで感じるなんて、信じられなかったが、痛みだけでなく、湧き上がるそのじんじんとした感覚にすぐに堪らない気分になった。

「あっ、あん……、んんっ」

 自分が出した声が甘く甲高くて恥ずかしい。

「可愛い声、薔太、もっと聞かせて」

 唇を噤んで声を押し殺したら、紫央はそれを許さず舌でこじ開け、深い口づけを与えてきた。

「んっ、んああ、ああ」

 口の中の薔太の良い場所をかき乱され、薔太は文字通り息も絶え絶えになった。紫央の口付けは心地よい。心地よいがわざとなのか吐息まで奪われるようですごく苦しい。苦しくて縋ると彼のペースで呼吸を許され、たまらず薔太は素直に嬌声を上げる他なくなった。
 今まで人から施されたことのない愛撫の数々に薔太は涙目で喘ぎ続ける。その涙の雫を紫央が舐めとり、首筋をざらりと舐めあげられる。
 ぞくぞくする快感を逃そうと腰を揺らめかせたが、そちらもゆるゆると優しく扱かれて逃げ場がない。いっそ自分の手で高みに上り詰めてしまいたかったが、片手は紫央に指を絡められてシーツに縫い付けられ取られている。もう片手で彼の背を引っかくことでなんとか快感を逃すしかなかった。

「腰、動いてる。気持ちいい?」

 無意識にへこへこと紫央の大きな手に擦り付けるように動いてしまうのが恥ずかしいのに、止められないのだ。

「だ、だめ……、なんか、へん……、へんになる、あうっ」

 ぎゅっと目を瞑ると鼻の奥がつんっとなった。薔太は苦し気に歪む顔を、紫央は双眸を凝らして見つめている。

「そうなのか? 本当に誰にも触らせていない? どこもかしこもこんなに敏感で……。疑わしいなあ」
「ないって、いってるぅ、いじわる、しぃちゃん」

 ふっと一瞬、紫央が吐息でふっと笑った気がした。

「だよな。薔太はずっと、ここにいた。外泊することも、遠出することもなかったものな?」

 その間も性器への刺激を与えられ続け、薔太は息も絶え絶えに涙ぐんだ。

「じゃあ、全部俺が初めてだ」
「……しぃちゃんが、初めて」
「なのに、お前は最初の男を捨てて、ここを出ていくのか?」
「さいしょ……」
「朝もあんな風に俺の傍に居ると可愛く約束してくれたのに、夜にはそれを破る。薔太は大人を弄ぶ悪い子だな」

 耳朶を齧られ、艶めかしい低い声で囁かれた。
 悪い子……。そんな風に言われると辛い。良い子であるように努めてきたのに。握られていた性器をぱっと突然離された。涙がすうっと目尻から落ちていく。

「……?」

 代わりに紫央は薔太の胸のあたりをしつこく可愛がり、舐め弾き周りに次々と赤い花を咲かせる。疼く刺激は下半身に逆巻くが、中々いくことができずに辛くて堪らない。でも触って欲しいなんて恥ずかしくて言えないのだ。

「意地悪っ」 

 涙目で睨みつけたら、男は目元を細め、嫣然と唇を吊り上げる。

「でも、善がってるだろ。薔太はここが好きなんだ」
「……っ!」
「俺は優しいから、薔太がいくまで胸をしゃぶってあげる」

 ボロボロぼろっと涙が落ちて、だが覆いかぶさってきた紫央に胸の先を固くした舌先でほじるように舐められ、その後じゅっと吸われたら簡単に腰がひんっと跳ね上がってしまった。これでは自分が胸を可愛がられるのが大好きだと白状しているようなものだ。
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