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5 ニャニャモ

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(高校の時の友達もみんな忙しそうだからなかなか会えないし、大学は先輩を避けるために大勢がいるところに寄らなかったせいで折角できた友達とも疎遠になって、悲しすぎる。でもこのまま大学生活ぼっち続きは、寂しいなあ。他によさげなサークルがあったら入ってみようかな。でも一人で入って相談相手もいなくて、それでまたしつこい人に同じような感じで目をつけられたら嫌だなあ)

 卯乃がそんな風に悩みながら皐月の空を眺めていたら一羽の燕がすぃーっと気持ちよさげに視界を横切って飛んで行った。
 その姿に誘われるように追いかけていくと校舎の端っこにある出入り禁止になっている扉の上に、雛たちが顔を覗かせている燕の巣があった。『可愛い』と呟き、卯乃は思わず笑顔を綻ばせた。

「家族が沢山いて、忙しそうだね」

 蒸し蒸しとして、天気が急変しそうな様子で、燕の親はまた低く飛んで餌を探しに出かけて行った。入れ替わりで巣に近づいて行った卯乃は、花壇の横にあったベンチにうなだれる大きな人影を見つけたのだ。

(あれって、同じクラスのサッカー部の人だ)

 深森はこのとき換毛前で耳や後ろ毛までがさらなるもふもふだった。頭頂部に熱がこもったのか、校舎裏のベンチに座って大きな背を丸めうなだれていた。ふっさり立派な尻尾もベンチの上に垂れさがり、彼は明らかにぐったりしているように見えた。驚いた卯乃は人恋しさも手伝って、呑気にぴょんぴょこっと傍に近寄って行った。

「深森くん、大丈夫?」
「……俺に構うなっ!」

 なるたけ人懐っこい声をだして聞いてみたが、牙をむかれんばかりに、ぴしゃりと拒絶された。びくっと身体がなるほどの唸り声だったが、直ぐ引き下がってはいけないと直感的に思った。それほどに深森の様子がおかしかったのだ。
 卯乃は拳を胸の前できゅうっと握ると、勇気を振り絞ってまた声をかけてみた。

「でもすごく調子、悪そうだよ?」
「……」

 深森は暗い顔で目だけぎらつかせ、卯乃を見上げ睨みつけてきた。普通だったら草食獣人が犬歯の鋭い獣人に、こんな風にしゃーしゃー凄まれたら怯えて身を引くというものだ。しかし卯乃の頭の中はもう別の考えでいっぱいでそれどころではなかった。

(ふわああああ。やっぱり! 前々からそう思ってたけど、深森君って間近で見たら余計に、うちの『ニャニャモ』にそっくりだ!)

 卯乃の愛猫だった『ニャニャモ』はサイベリアンの雄猫だった。
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