香りの献身 Ωの香水

天埜鳩愛

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邂逅編

二人の青年2

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ヴィオがこの倉庫に連れてこられているところを、建物を移動していたセラフィンが丁度見かけたのが幸いだった。連れであるジルを置き去りにして素早く静かに後を付けたらこんなことになっていた。

「ジル、所長と話をしてくるからちょっとこの子を代わりに抱っこしてて」

 しかしヴィオは急に現れた他の男に預けられるのが怖くて、ぎゅっとセラフィンのシャツにしがみついた。
 ジルは気を悪くするでもなく、くしゃくしゃになったヴィオの頭を優しく撫ぜて目元を合わせて温かく微笑んだ。

「まだ怖がってるね。俺が所長さんと話をしてくるから、セラフィンがこのままこの子抱っこしてた方がよさそうですよ。君、大丈夫だぞ? この先生、顔が綺麗すぎて黙っているとおっかなく見えるけど割と優しいからな」

 先生、という単語を聞き逃さず、ヴィオはまだ震える赤い唇で一生懸命に何かを伝えようと口をぱくぱくとする。
青年二人は彼の話を聞いてやろうと、そろって口元に顔を近づけだ。

「先生? お医者さん?」
「そうだよ。どこか痛いところがあるのか? 君、名前はなんていうんだ?」

 普段はクールな男前が、蕩けるような優しい声を子ども相手に出している。そんなセラフィンの姿をジルは優しく見守っていった。年上だが不器用で放っておけない友であるセラフィンが、誰かに心を配る姿をみるのをジルは好んでいるのだ。

「僕は…… ヴィオ。痛いところはないよ。僕は大丈夫。だけど…… 叔母さんが怪我をして、熱がぜんぜん下がらなくて、薬は隣の街では意地悪されて、売ってくれなくて…… 大人みんなまだ帰ってこなくて。男の人たち、く、薬くれるっていうからついてきたら…… こわいことされて」

 本当にたどたどしい、でも必死な涙声の幼い彼の訴えと、抱いたか細い身体から伝わる震えに、セラフィンもジルも胸をきゅんっと掴まれてしまった。

「わかった。ヴィオ。大丈夫だからもう泣くな」

 その一言に大きな美しい色合いの瞳から、またしても安堵の涙がぼろぼろと零れ落ちていった。

「なんとかしてやる。俺は医者だ。叔母さんの家に行ってあげるから場所を教えてくれ。この街にあるのか? もっと遠いのか?」

「もっとずっと遠いよ…… あっちに見える山のほう。歩いたら…… 夜中になるかも。どうしよう…… 叔母さんすごく苦しんでるんだ。早く帰りたいけど、遠いんだ。ドリの里っていうんだよ」

 その名を聞いてセラフィンとジルは顔を見合わせて頷きあった。
































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