12 / 36
ep11. 俺様皇子は案外出来る奴
しおりを挟む
威勢よく目覚めたアルバートは、起き上がると一変して項垂れた。
ベッドに足を降ろして首の後ろを掻きながら、気まずそうにしている。
「あのさ、なんだ。悪かったな。俺、最初に結界破られて、気絶した。役立たずで、本当に申し訳ない」
意を決したように深々と頭を下げる。
そんなアルバートの肩を、セスティがひょいと持ち挙げた。
「皆の矢面に立って一番危険な場所を守ってくれたのがアルだ。アルが最初に俺たちを守ってくれたから、無事だったんだよ」
「そうですわ。アルの防御結界がなかったら、恐らく全員死んでいましたもの」
微笑む二人を見上げていたアルバートが、照れたような気まずい表情をしている。
「だってさ、良かったね」
半目の半笑いで、マイラがアルバートの肩に手を置いた。
「お前は、慰めてくれないのな。熱い抱擁とかしてくれてもいいんだぞ」
ほらほらと腕を伸ばすアルバートから、マイラが距離を取る。
「気持ち悪いこと言うな。一人で反省してろ」
フイ、と顔を逸らすマイラも、どこか安堵した表情に見えた。
アルバートの目がカナデに向いた。
「お前、カナだろ? 男の姿になってても、わかるな。魔力が変わらないし、何より。それがお前の素の姿なんだろ?」
少しだけ驚いた。
アルバートはカナデの事情も『儀式』以降の二年間の出来事も知らないはずだ。
カナデ以上にセスティとリアナが驚いた顔をしている。
「なんでわかったの?」
代弁するようにマイラが問い掛けた。
「前の、女のカナデの方が違和感あったからな。着ぐるみ一枚着ているような感じっていうの? マイも感じていたんじゃないか?」
「まぁね。今の方が自然には見えるよ。でも、あくまで男のカナデに会ったから思うことだけどね」
なるほど、天才肌とはこういうことかと、カナデは思った。アルバートは多分、考えるより感じとる直感型の天才だ。
「んー、そうだけど、そうじゃないんだよな。多分、今の方が魔力を自由に使えるだろう? 女だったカナは内側に色んなものを溜め込んでる感じだった」
そういわれても、と思う。
女だった頃の記憶がないカナデにとっては、比べようもない。今はまともに魔法も使えないのだから、余計にわからない。
「俺、記憶がないから今は魔法もまともに使えないし、よくわからないかも」
アルバートが目をひん剥いた。
「記憶が、無い? 魔法が使えない? じゃぁ、さっき俺を起こしたアレは何だよ」
カナデは、自分の額に指を当てて、先ほど起こった事象を思い返した。
「えーっと。何となく指を当てたら、バチバチってなった。アルの魔力が暴走したらしいから、とりあえず笛を吹いてみた」
アルバートが呆然とカナデを眺めた。
呆れかえっているといった表情だ。
「アル、今のカナはこんな感じなんだ。決してアルを馬鹿にしている訳じゃない」
「カナが飛ばされた先の国が、魔法皆無でさぁ。魔法って概念が創作物って感じだったからね。そういうところで、記憶がない状態で二年暮らしてたからね」
「決しておバカになった訳じゃありませんのよ。アルの指摘通り、前より強い魔術が使えていますわ」
三者三様に取り繕ってくれているようだが、悲しいような怒ってもいいような気分になるのは、何故だろう。
「いや、俺もな、起きたばっかりで、皆の事情も今の状況も分かっていないからな。ただ、あれだけすごい魔法を使っておいて何言ってんだコイツって思っただけなんだよ。悪いな、カナ」
謝られたが、素直に頷けないのは何故だろう。
「眠っている状態で、カナの魔法を感じ取ったのか?」
セスティの問いかけに、アルバートは頷いた。
「意識はずっと起きてたよ。魔力を封印されてたし、体の動きも封じられていたから何もできなかった」
「それは、辛かったよな」
体が動かないのに意識だけある状態で二年間寝たきりなど考えるだけで、しんどい。メンタルが良く持ったものだと思う。
「魔法のイメージトレーニングには、ちょうど良かったけどな」
にっかり笑うアルバートを見て、顔に強メンタルが現れていると思った。
(マイラはへこむとか、慰めるのめんどいとか言っていたけど、杞憂じゃないのか。それとも、マイラの前でだけはへこむのかな)
アルバートはマイラに好意を寄せているように見えるし、ゲーム通りの強がりなら、そういう一面もあるのだろう。
「あー、それでさ、この場にキルとジルがいないってことは、俺と同じような目に遭っているんだよな?」
アルバートの問いかけに、セスティが険しい表情で頷く。
「キルもジルも、今どこにいるかもわからない。ジルに至ってはカナと同じように記憶がない状態かもしれない」
「只、アルのように眠っているわけではありませんの。自分で移動して、もしかしたら身を潜めているのかもしれませんの」
セスティとリアナの言葉を聞いて、アルバートが黙り込んだ。
「……二人の居場所は探せるかもしれない。ただし、どんな状態であっても、カナの魔法が不可欠になる。俺を目覚めさせるのが、カナでなければならなかったように」
「どういうことだ?」
前のめりに問うセスティをアルバートが見上げた。
「まだ確信がない。俺が寝ていた間の話を聞かせてくれ。カナデが何故、男の姿に戻っているのかも。詳しい話は、それからだな」
アルバートが思いっきり伸びをした。
「久しぶりに体を動かせるのは、嬉しいなぁ」
伸びたまま、アルバートがカナデに目を向けた。
「何があっても俺たちが守ってやるから、安心しろ、カナ。俺は巫を守る騎士であり民を守る王族だからな」
目配せされて、頷いた。
俺様キャラの天才は決して悪い奴ではないし、上に立つ素養をちゃんと備えている男に見えた。
ベッドに足を降ろして首の後ろを掻きながら、気まずそうにしている。
「あのさ、なんだ。悪かったな。俺、最初に結界破られて、気絶した。役立たずで、本当に申し訳ない」
意を決したように深々と頭を下げる。
そんなアルバートの肩を、セスティがひょいと持ち挙げた。
「皆の矢面に立って一番危険な場所を守ってくれたのがアルだ。アルが最初に俺たちを守ってくれたから、無事だったんだよ」
「そうですわ。アルの防御結界がなかったら、恐らく全員死んでいましたもの」
微笑む二人を見上げていたアルバートが、照れたような気まずい表情をしている。
「だってさ、良かったね」
半目の半笑いで、マイラがアルバートの肩に手を置いた。
「お前は、慰めてくれないのな。熱い抱擁とかしてくれてもいいんだぞ」
ほらほらと腕を伸ばすアルバートから、マイラが距離を取る。
「気持ち悪いこと言うな。一人で反省してろ」
フイ、と顔を逸らすマイラも、どこか安堵した表情に見えた。
アルバートの目がカナデに向いた。
「お前、カナだろ? 男の姿になってても、わかるな。魔力が変わらないし、何より。それがお前の素の姿なんだろ?」
少しだけ驚いた。
アルバートはカナデの事情も『儀式』以降の二年間の出来事も知らないはずだ。
カナデ以上にセスティとリアナが驚いた顔をしている。
「なんでわかったの?」
代弁するようにマイラが問い掛けた。
「前の、女のカナデの方が違和感あったからな。着ぐるみ一枚着ているような感じっていうの? マイも感じていたんじゃないか?」
「まぁね。今の方が自然には見えるよ。でも、あくまで男のカナデに会ったから思うことだけどね」
なるほど、天才肌とはこういうことかと、カナデは思った。アルバートは多分、考えるより感じとる直感型の天才だ。
「んー、そうだけど、そうじゃないんだよな。多分、今の方が魔力を自由に使えるだろう? 女だったカナは内側に色んなものを溜め込んでる感じだった」
そういわれても、と思う。
女だった頃の記憶がないカナデにとっては、比べようもない。今はまともに魔法も使えないのだから、余計にわからない。
「俺、記憶がないから今は魔法もまともに使えないし、よくわからないかも」
アルバートが目をひん剥いた。
「記憶が、無い? 魔法が使えない? じゃぁ、さっき俺を起こしたアレは何だよ」
カナデは、自分の額に指を当てて、先ほど起こった事象を思い返した。
「えーっと。何となく指を当てたら、バチバチってなった。アルの魔力が暴走したらしいから、とりあえず笛を吹いてみた」
アルバートが呆然とカナデを眺めた。
呆れかえっているといった表情だ。
「アル、今のカナはこんな感じなんだ。決してアルを馬鹿にしている訳じゃない」
「カナが飛ばされた先の国が、魔法皆無でさぁ。魔法って概念が創作物って感じだったからね。そういうところで、記憶がない状態で二年暮らしてたからね」
「決しておバカになった訳じゃありませんのよ。アルの指摘通り、前より強い魔術が使えていますわ」
三者三様に取り繕ってくれているようだが、悲しいような怒ってもいいような気分になるのは、何故だろう。
「いや、俺もな、起きたばっかりで、皆の事情も今の状況も分かっていないからな。ただ、あれだけすごい魔法を使っておいて何言ってんだコイツって思っただけなんだよ。悪いな、カナ」
謝られたが、素直に頷けないのは何故だろう。
「眠っている状態で、カナの魔法を感じ取ったのか?」
セスティの問いかけに、アルバートは頷いた。
「意識はずっと起きてたよ。魔力を封印されてたし、体の動きも封じられていたから何もできなかった」
「それは、辛かったよな」
体が動かないのに意識だけある状態で二年間寝たきりなど考えるだけで、しんどい。メンタルが良く持ったものだと思う。
「魔法のイメージトレーニングには、ちょうど良かったけどな」
にっかり笑うアルバートを見て、顔に強メンタルが現れていると思った。
(マイラはへこむとか、慰めるのめんどいとか言っていたけど、杞憂じゃないのか。それとも、マイラの前でだけはへこむのかな)
アルバートはマイラに好意を寄せているように見えるし、ゲーム通りの強がりなら、そういう一面もあるのだろう。
「あー、それでさ、この場にキルとジルがいないってことは、俺と同じような目に遭っているんだよな?」
アルバートの問いかけに、セスティが険しい表情で頷く。
「キルもジルも、今どこにいるかもわからない。ジルに至ってはカナと同じように記憶がない状態かもしれない」
「只、アルのように眠っているわけではありませんの。自分で移動して、もしかしたら身を潜めているのかもしれませんの」
セスティとリアナの言葉を聞いて、アルバートが黙り込んだ。
「……二人の居場所は探せるかもしれない。ただし、どんな状態であっても、カナの魔法が不可欠になる。俺を目覚めさせるのが、カナでなければならなかったように」
「どういうことだ?」
前のめりに問うセスティをアルバートが見上げた。
「まだ確信がない。俺が寝ていた間の話を聞かせてくれ。カナデが何故、男の姿に戻っているのかも。詳しい話は、それからだな」
アルバートが思いっきり伸びをした。
「久しぶりに体を動かせるのは、嬉しいなぁ」
伸びたまま、アルバートがカナデに目を向けた。
「何があっても俺たちが守ってやるから、安心しろ、カナ。俺は巫を守る騎士であり民を守る王族だからな」
目配せされて、頷いた。
俺様キャラの天才は決して悪い奴ではないし、上に立つ素養をちゃんと備えている男に見えた。
10
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけです!
名前が * ゆるゆ になりました。
これからもどうぞよろしくお願い致します!
表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。
悪役令息(Ω)に転生したので、破滅を避けてスローライフを目指します。だけどなぜか最強騎士団長(α)の運命の番に認定され、溺愛ルートに突入!
水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男リヒトには秘密があった。
それは、自分が乙女ゲームの「悪役令息」であり、現代日本から転生してきたという記憶だ。
家は没落寸前、自身の立場は断罪エンドへまっしぐら。
そんな破滅フラグを回避するため、前世の知識を活かして領地改革に奮闘するリヒトだったが、彼が生まれ持った「Ω」という性は、否応なく運命の渦へと彼を巻き込んでいく。
ある夜会で出会ったのは、氷のように冷徹で、王国最強と謳われる騎士団長のカイ。
誰もが恐れるαの彼に、なぜかリヒトは興味を持たれてしまう。
「関わってはいけない」――そう思えば思うほど、抗いがたいフェロモンと、カイの不器用な優しさがリヒトの心を揺さぶる。
これは、運命に翻弄される悪役令息が、最強騎士団長の激重な愛に包まれ、やがて国をも動かす存在へと成り上がっていく、甘くて刺激的な溺愛ラブストーリー。
後宮に咲く美しき寵后
不来方しい
BL
フィリの故郷であるルロ国では、真っ白な肌に金色の髪を持つ人間は魔女の生まれ変わりだと伝えられていた。生まれた者は民衆の前で焚刑に処し、こうして人々の安心を得る一方、犠牲を当たり前のように受け入れている国だった。
フィリもまた雪のような肌と金髪を持って生まれ、来るべきときに備え、地下の部屋で閉じ込められて生活をしていた。第四王子として生まれても、処刑への道は免れられなかった。
そんなフィリの元に、縁談の話が舞い込んでくる。
縁談の相手はファルーハ王国の第三王子であるヴァシリス。顔も名前も知らない王子との結婚の話は、同性婚に偏見があるルロ国にとって、フィリはさらに肩身の狭い思いをする。
ファルーハ王国は砂漠地帯にある王国であり、雪国であるルロ国とは真逆だ。縁談などフィリ信じず、ついにそのときが来たと諦めの境地に至った。
情報がほとんどないファルーハ王国へ向かうと、国を上げて祝福する民衆に触れ、処刑場へ向かうものだとばかり思っていたフィリは困惑する。
狼狽するフィリの元へ現れたのは、浅黒い肌と黒髪、サファイア色の瞳を持つヴァシリスだった。彼はまだ成人にはあと二年早い子供であり、未成年と婚姻の儀を行うのかと不意を突かれた。
縁談の持ち込みから婚儀までが早く、しかも相手は未成年。そこには第二王子であるジャミルの思惑が隠されていて──。
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
新年に余り物でおせちを作ったら、冷酷と噂の騎士団長様に「運命の番」だと求婚されました
水凪しおん
BL
料理人だった俺が転生したのは、男性オメガというだけで家族に虐げられる不遇の青年カイ。
新年くらいはと前世の記憶を頼りに作ったのは、この世界にはない『おせち料理』だった。
それを偶然口にしたのは、氷のように冷酷と噂される最強の騎士団長リアム。
「お前は俺の運命の番だ」
彼の屋敷に保護され、俺の作る料理が彼の心を溶かしていく。
不器用で、だけどまっすぐな愛情を注いでくれる彼と、美味しい料理で紡ぐ、甘くて温かい異世界スローライフ。
悪役令息(Ω)に転生した俺、破滅回避のためΩ隠してαを装ってたら、冷徹α第一王子に婚約者にされて溺愛されてます!?
水凪しおん
BL
前世の記憶を持つ俺、リオネルは、BL小説の悪役令息に転生していた。
断罪される運命を回避するため、本来希少なΩである性を隠し、出来損ないのαとして目立たず生きてきた。
しかし、突然、原作のヒーローである冷徹な第一王子アシュレイの婚約者にされてしまう。
これは破滅フラグに違いないと絶望する俺だが、アシュレイの態度は原作とどこか違っていて……?
追放されたおまけの聖女♂は冷徹王太子の腕の中から離してもらえない〜今さら戻れと言われても、もうこの人の魔力しか受け付けません!〜
たら昆布
BL
聖女のおまけで召喚されたと思われて追放された不憫受けが拾われて愛される話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる