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第41話 心を殺せない②
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「アンタの言葉、何一つ理解できねぇけど。俺が欲しいなら、やるから。戻れっていうなら、マシュマロハウスに戻るから。さっさと連れ帰れよ」
倫太郎が起き上がり、使冴の顔を見降ろした。
「それで御影伊純を守ったつもりでいる? 健気で浅はかで、無力な使冴君らしいね」
精液がべっとり付いた手で、倫太郎が使冴の顔を掴み上げた。
ぎりぎりと、使冴の顔を握り潰す手に力が入る。
「まだ目に光が残ってるよ。どうしたら使冴君の心は死ぬのかな。やっぱり、伊純が死なないと、ダメかな」
「俺が戻れば、良いんだろ。アンタは俺が欲しいんだろ。アンタのモノになってやるから、好きにしていいから。伊純を無事に、帰してくれよ」
手枷に縛られた手で必死に倫太郎に縋る。
その様を、倫太郎が乾いた目で見詰めた。
「怒ってるって言っただろ。使冴君が伊純を思いやるたび、虫唾が走る。あの男に希望を見出すな。汚ねぇ場所でしか生きられねぇお前に、帰る場所なんか他にねぇんだよ。一生、薄汚れたままで、僕の隣だけが生きられる場所だって、いい加減に理解しろよ」
倫太郎の声が震えているのは、怒りだろうか。それすら、わからない。
使冴のネックガードを引っ張った倫太郎の手が、強く締め付けた。
「ぅっ……ぁっ、かはっ」
首が締まって、息ができない。
引っ張られて浮いた体を、ベッドの上に叩きつけられた。
「はっ、はぁっ、はぁっ……」
本能が必死に息を吸う。
全身が生きようと動く。
「今日の外出は、僕を釣り上げるためのDissolveの罠だろ。乗ってやったんだ。僕も相応に楽しませてもらわないとね」
倫太郎が使冴の頬に口付けた。
「使冴君はDissolveでも所詮、使われる駒でしかない。何処に行っても、利用される憐れな存在なんだよ。いい加減、覚えなきゃ。自分はその程度の価値しかない人間なんだ、ってさ」
喉が絞まって、息を吸う口が引き攣った。
(あぁ、嫌だな。倫太郎さんが何を言っても、哀れでしかない。可哀想なのは、俺なんだろうけど。今は、どうでもいい。伊純が生きて無事に帰ってくれたら、それでいい)
倫太郎が言う通り、諦めて絶望して、何もかも投げだしたら、きっと楽なんだろう。
(父さんは生きろって言った。死んじゃダメだって言った。だから俺は、生きてる限り、心すら殺せない)
記憶の奥底に仕舞い込んで忘れていた、死に際の父の言葉。
倫太郎の話を聞くまで、一文字も思い出しはしなかったのに。
忘れていても、あの時からずっと心と体に刻まれていたのだと実感した。
使冴は倫太郎を見上げた。
その顔に手を伸ばす。
「このネックガード、切れなかっただろ。伊純の指紋認証じゃないと外れねぇ。だから伊純を、ここに連れて来てよ」
何とか起き上がって、倫太郎に自分からキスをした。
「ネックガードを外して、項を噛んで。俺を倫太郎さんの番にしてよ。俺が伊純から離れれば、アンタが実質、俺の一番になる。俺を一生、縛るには、充分すぎる枷だろ」
倫太郎の胸に凭れ掛かって、力を抜いた。
「俺には倫太郎さんが、俺をどうしたいのか、わからない。一生側にいれば、倫太郎さん好みの俺になるかもしれねぇから。好きにしてよ」
震える倫太郎の手が、使冴の体を抱いた。
同時に、もう片方の手が首に掛った。
「本当に何にもわかってねぇんだなぁ、使冴ぁ。人並に幸せ者の発想してんじゃねぇぞ。ムカついて仕方がねぇよ」
首に掛った手が、使冴を押し倒す。
倫太郎が馬乗りになった。
「ご希望のようだし、今すぐ突っ込んでやるよ。俺に犯されてる姿を伊純に観てもらいながら、ネックガード外させようか」
「それで倫太郎さんの気が済むんなら、中出しでも項噛むのでも、好きにしていいよ」
倫太郎の顔が、怒りに満ちていく。
きっと、今の使冴が何を話しても、倫太郎の怒りを煽るんだろう。
目の前の男が何を望んでいるのか、使冴には全くわからないのだから、どうにもしようがない。
「その程度で御影伊純は自分を諦めない、とでも思ってんのか? 救えねぇな」
「多分、そうだよ。俺なんかより伊純のほうがずっと俺のこと、好きだから」
「はぁ? んな話はムカつくだけ……」
黒い影が倫太郎の顔面を直撃した。
振り切った長い足が、倫太郎の顔面を蹴り上げた。倫太郎の体がベッドの下まで吹っ飛んだ。
「よくわかってんな、使冴」
ボロボロに裂かれた服で、頭から血を流した伊純が、使冴を振り返った。
倫太郎が起き上がり、使冴の顔を見降ろした。
「それで御影伊純を守ったつもりでいる? 健気で浅はかで、無力な使冴君らしいね」
精液がべっとり付いた手で、倫太郎が使冴の顔を掴み上げた。
ぎりぎりと、使冴の顔を握り潰す手に力が入る。
「まだ目に光が残ってるよ。どうしたら使冴君の心は死ぬのかな。やっぱり、伊純が死なないと、ダメかな」
「俺が戻れば、良いんだろ。アンタは俺が欲しいんだろ。アンタのモノになってやるから、好きにしていいから。伊純を無事に、帰してくれよ」
手枷に縛られた手で必死に倫太郎に縋る。
その様を、倫太郎が乾いた目で見詰めた。
「怒ってるって言っただろ。使冴君が伊純を思いやるたび、虫唾が走る。あの男に希望を見出すな。汚ねぇ場所でしか生きられねぇお前に、帰る場所なんか他にねぇんだよ。一生、薄汚れたままで、僕の隣だけが生きられる場所だって、いい加減に理解しろよ」
倫太郎の声が震えているのは、怒りだろうか。それすら、わからない。
使冴のネックガードを引っ張った倫太郎の手が、強く締め付けた。
「ぅっ……ぁっ、かはっ」
首が締まって、息ができない。
引っ張られて浮いた体を、ベッドの上に叩きつけられた。
「はっ、はぁっ、はぁっ……」
本能が必死に息を吸う。
全身が生きようと動く。
「今日の外出は、僕を釣り上げるためのDissolveの罠だろ。乗ってやったんだ。僕も相応に楽しませてもらわないとね」
倫太郎が使冴の頬に口付けた。
「使冴君はDissolveでも所詮、使われる駒でしかない。何処に行っても、利用される憐れな存在なんだよ。いい加減、覚えなきゃ。自分はその程度の価値しかない人間なんだ、ってさ」
喉が絞まって、息を吸う口が引き攣った。
(あぁ、嫌だな。倫太郎さんが何を言っても、哀れでしかない。可哀想なのは、俺なんだろうけど。今は、どうでもいい。伊純が生きて無事に帰ってくれたら、それでいい)
倫太郎が言う通り、諦めて絶望して、何もかも投げだしたら、きっと楽なんだろう。
(父さんは生きろって言った。死んじゃダメだって言った。だから俺は、生きてる限り、心すら殺せない)
記憶の奥底に仕舞い込んで忘れていた、死に際の父の言葉。
倫太郎の話を聞くまで、一文字も思い出しはしなかったのに。
忘れていても、あの時からずっと心と体に刻まれていたのだと実感した。
使冴は倫太郎を見上げた。
その顔に手を伸ばす。
「このネックガード、切れなかっただろ。伊純の指紋認証じゃないと外れねぇ。だから伊純を、ここに連れて来てよ」
何とか起き上がって、倫太郎に自分からキスをした。
「ネックガードを外して、項を噛んで。俺を倫太郎さんの番にしてよ。俺が伊純から離れれば、アンタが実質、俺の一番になる。俺を一生、縛るには、充分すぎる枷だろ」
倫太郎の胸に凭れ掛かって、力を抜いた。
「俺には倫太郎さんが、俺をどうしたいのか、わからない。一生側にいれば、倫太郎さん好みの俺になるかもしれねぇから。好きにしてよ」
震える倫太郎の手が、使冴の体を抱いた。
同時に、もう片方の手が首に掛った。
「本当に何にもわかってねぇんだなぁ、使冴ぁ。人並に幸せ者の発想してんじゃねぇぞ。ムカついて仕方がねぇよ」
首に掛った手が、使冴を押し倒す。
倫太郎が馬乗りになった。
「ご希望のようだし、今すぐ突っ込んでやるよ。俺に犯されてる姿を伊純に観てもらいながら、ネックガード外させようか」
「それで倫太郎さんの気が済むんなら、中出しでも項噛むのでも、好きにしていいよ」
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きっと、今の使冴が何を話しても、倫太郎の怒りを煽るんだろう。
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振り切った長い足が、倫太郎の顔面を蹴り上げた。倫太郎の体がベッドの下まで吹っ飛んだ。
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