巡り逢いの柊をみつけて

霞花怜

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第Ⅱ章

第52話【R18】独占的な愛

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 部屋を占拠する大きなベッドが軋む。
 体の下に敷かれた大判のタオルは逢と柊の精液で、既にぐちゃぐちゃだ。
 喘いで体を動かすたびに、湿り気を帯びた布擦れが聴こえる。

「……逢さん、逢さん、まだ寝ちゃ、ダメですよ」

 耳の中に、優しい柊の声が木霊する。
 同時に打ち込まれた熱い男根が、逢の奥を容赦なく抉った。

「ぅあっ! ぁっ……、も……、ダメ、ムリ……、しゅぅ」

 何回出したか、覚えていない。
 意識が飛んでも何度も突かれて、膨らむ快楽と同時に意識が浮上する。

「イク、イク、またっ……ぁあっ!」

 絶頂を何度も迎えた体は、柊の愛撫で簡単に快楽を放つ。
 腹の奥から沸き上がった快感が爆発して背中から脳天を突き抜けた。

「ぁ……、ぁ……、ぅぁ……」

 半ば放心状態で、半開きの口から喘ぎだけが漏れる。

「メスイキ、上手になりましたね。潮吹きしたから、出しきっちゃいましたか?」
「潮……? メス、イキ……?」

 小刻みに震える腰を抱き直して、柊がまた緩やかに中を擦り始めた。

「覚えてませんか? 今宵だけで、もう三回目ですよ」

 記憶は曖昧なのに、体は覚えている。
 何度も絶頂しているのに、その度に、疼きが溜まる。
 彷徨う逢の手は、迷わず柊を求めた。
 その手を強く握って、柊が指先を舐め上げた。

「意識が飛んでも僕を求めてくれる逢さん、可愛いです。この手と唇が、ずっと僕だけを求めていればいいのに」

 柊が睫毛を伏した。
 隠しようもない欲情の裏に、切ない本音が滲んで見える。

(なんで、柊君は、こんなに悲しそうなんだ。俺が柊君を愛してるって、伝わっているはずなのに)

 眷属にして神紋を与えているから、ぼんやりとだが互いの感情が流れ込む。
 柊の愛情は感じるし、逢の気持ちも流れ込んでいるはずだ。

(だけど、柊君の本音までは、わからない)

 普段なら、それでいい。何もかも曝け出すなんて、良いことばかりではないから。
 わからないくらいが、ちょうどいい。
 けど今は、それが酷くもどかしく感じた。

 腕を伸ばして、柊の顔を掴まえる。

「もっと、柊君が、欲しいよ」

 囁いた言葉に、柊が息を飲んだ。
 逢の腰を掴まえて、激しく奥を突く。

「っぁ! ぁっ……、ぁぁ!」

 激しすぎて、喘ぎ声しか出せない。
 ただ、ひたすらに逢の中に入ろうとする柊の動きは、いつもより激しくて、乱暴だ。
 襲い来る快感が強すぎて、逢は歯を食いしばった。

「んんっ」

 体が跳ねて、また絶頂した。
 精液はほとんど出ない。またメスイキしたようだ。
 それでも柊は腰を止めてくれない。
 一番感じる奥を何度も突かれて、何度も絶頂を繰り返す。

(柊くん、なんで……、いつもは、こんな抱き方、しないのに)

 逢を焦らして、その顔を、反応する体を楽しんで、ゆっくりと激しくイカせて。
 そういうプレイが多いのに。
 今日は、いつもと違う。

(もう、何回、イったんだ。わかんねぇ……。潮吹いたのは、何となく……、その後の記憶が、曖昧だ)

 最初から激しく何度もイかされて、途中から意識が飛び飛びで、曖昧だ。
 今だって、何度もトんでいるから、どれくらい突かれているのかすら、わからない。

「ぅっ……、ぁっ……」

 小さな声を漏らして、柊が体を震わせた。腹の中に柊の熱が広がる。
 同時に、逢もまた絶頂した。少しの精液を射精して、イったらしい。
 頭がクラクラして、意識がぼんやりしている。
 夢なのか現実なのかも、よくわからない。

「はっ……、はぁ、はぁ……逢さん……、逢さん」

 柊が、逢の体に抱き付いた。
 その熱だけは、本物なのだと思った。

「……浄化、できた、かな」

 薄く笑う逢を見詰める柊の目が、泣きそうに歪んだ。

「ちゃんと、わかってるんです。逢さんは優しくて、差し伸べる手は相手にとって必要な救いで、気紛れなんて言いながら、握った手を総て零さず救い上げられる。だから、神子なんだって」
「柊君?」

 柊が顔を隠すように逢の胸に、ぴたりと張り付いた。

「眷属の僕の我儘だって、聞いてくれる。こんなに激しく抱いたって、僕が満足するまで、納得するまで、意識が飛んでも付き合ってくれる。絶対に、拒否したりしない」
「俺が柊君に、抱かれたいんだよ。柊君の愛、独り占めして、余すことなく、感じたいじゃん?」

 柊の柔らかな髪を撫でる。
 縋っていた顔が、上向いた。

「そういう、ところ。そういう愛を、逢さんは誰にでも……」

 言葉を飲み込んで、柊が逢の胸に顔を擦り付けた。

「相手に寄り添って、心を大切にする逢さんが好きです。そんな逢さんを独り占めしたくて、誰にも触れさせたくない。僕は、眷属なのに、心が狭いです」
「そんなことないよ。好きな相手を独占したいのは、普通だろ」

 柊の髪を撫でる。
 銀の髪から月明かりが雫のように零れ落ちた。

「柊君に、そんな風に思ってもらえるの、嬉しいよ。柊君は、間違いなく俺の特別だから」

 ごそごそと動いて、柊が逢に抱き付いた。
 重なる素肌が気持ちよくて、眠気が襲う。

「今まで何年も、拒んできたモノ全部、受け入れてでも、逃がしたくなかった。大好き、なんだよ」

 どんな言葉を使っても、この気持ちは伝わらないんだろう。
 
(困ったな。まだ、柊君は寂しそうな目をしてるのに。まだ、足りないのに)

 眠気なのか、絶頂し過ぎて気を失いそうなのかも、わからない。
 ただ、深い場所に意識が引き摺られて、落とされていく。

「だから、そんな顔……」

 柊の髪を撫でる手が、シーツに落ちる。
 うまく力が入らない。

「逢さん……、ごめんなさい。大好きです。もう、眠って」

 唇に触れた温もりに安堵して、逢は素直に目を閉じた。
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