モブに転生した原作者は世界を救いたいから恋愛している場合じゃない

霞花怜

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第Ⅰ章 ゲーム本編①

47.コーヒーは、がぶ飲みしてはいけない

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 気が付いたら、知らない部屋で寝ていた。
 体が鉛のように重くて起き上がれない。

(ここ、何処だろう。私、どうしてたんだっけ?)

 ベッドから起き上がる。両側の壁には本棚があり、難しそうな本がびっしり並んでいる。
 奥の机には、書きかけの何かが無造作に放置されている。
 部屋を出て、ここがユリウスの研究室だとわかった。

「目が覚めたか、おはよう」

 声を掛けてくれたのは、アーロだった。
 思わず身構えるノエルを見て、苦笑する。

「気持ちはわかるが、もうちょっと寛大な心を希望するぜ。俺はノエルの敵ってわけじゃ、ねぇからさ」

(味方って訳でも、ないよな、きっと)

 可愛くないことを考えながらも、素直に頷いておいた。

「善処します」

 いつもの椅子に腰かけると、アーロがコーヒーを淹れてくれた。

「寝起きのカフェインが沁みる」

 この世界にもカフェインが存在してくれたことに、深く感謝した。

(ユリウスルートでは、ユリウスとアーロと主人公がコーヒー飲んでるシーンを何回か書いたな。あれのお陰かも。過去の私、グッジョブ)

 死因がカフェイン中毒と思われるので控えたほうが良いのだろうが、嗜好とはそう変化しないものらしい。

「そういえば、ユリウス先生は?」

 研究室にも姿が見えない。

「シエナに呼ばれて出てるよ。学院内にはいるはずだ。結界の補強はまだ終わっていないからな」
「体調は大丈夫なんでしょうか?」

 かなり消耗していたから、少し寝たくらいじゃ戻らなそうに思う。

「大丈夫なんじゃないか。昨日は丸一日ノエルと一緒に寝ていたからな。今朝は元気そうに出て行ったぞ」
「はぁ、一緒に。は⁉ 一緒に?」

 驚くノエルに、アーロが呆れた顔をした。

「さっきノエルが出てきた部屋、ユリウスの部屋だぞ。というか、お前ら中庭で抱き合って寝てただろうが。今更、何を驚くんだ?」

 記憶が急激にフラッシュバックする。

(そうだ、あのまま寝ちゃったんだ)

「あの、誰がここまで運んでくださったんでしょうか?」
「俺だよ」

 だろうな、と思う。
 だからノエルは自分の部屋ではなく、ユリウスの部屋に連れてこられたのだろう。

「最初に見付けたのは治癒治療室の治癒術師で、困った顔して相談されたから、二人とも俺が運んだ。全然起きなかったぜ。疲れてたんだなぁ」

 そりゃ疲れたさ、と思う。
 この世界に来て、多分一番疲れた。

(素直にありがとうとも言い難いが、言わねばなるまい。一応、大人だから)

「ありがとうございました。ついでに自分の部屋に運んでいただきたかったです」
「学生の女子寮は遠いからなぁ」

 アーロが遠い目をする。

「ま、お前らは二人で一緒に寝ていたほうが回復も早いだろ。魔力を分け合えるくらい相性がいい相手は珍しいからな」

 アーロの言葉が、とても引っかかった。

「魔力って、誰とでも分け合えるものじゃないんですか?」
「普通は出来ないぜ、そんなの。同じ属性でも珍しいし、血縁でも難しい」

 驚いて絶句した。
 言われてみればそんな描写はシナリオの中に書いていない。
 原作者自分が知らないこの世界の常識なのかと思っていた。

(もしかして、魔石がどーのこーので最初にユリウスに魔力貰ってたからかな。あそこでユリウスに良いように作り替えられていたのでは⁉)

 さぁっと血の気が下がる。

「別にいいんじゃねぇか? 魔力切れ起こして死ぬリスクは減る。悪い話じゃねぇぞ」

 あっけらかんと笑うアーロの言葉は、確かにそうなのだが。

(事故って失血した時の輸血みたいなものか? 知らなかった。誰にでも出来るんじゃないんだ)

 どうやらユリウスルールだったらしい。

(でも、じゃぁ、魔力に感情が乗って相手に伝わるって、ユリウスはどこで知ったのかな。他にも魔力を分け合える人が、ユリウスにはいるんだろうか)

 何となくモヤっとする。

(いやいや、モヤる必要はない。別にいたっていいじゃないか)

 自分の嗜好に焦って、思わずコーヒーをがぶ飲みした。

「馬鹿、コーヒーはそういう飲み物じゃない。喉が渇いてんなら水を持ってきてやるから、待ってろ」

 アーロが慌ててノエルからカップを奪う。
 前世でも水のようにコーヒーを飲んでいた自分としては普通のことだが、言われてみれば良くないかもしれない。
 相変わらず世話焼きだなぁと思いながら、アーロから水を受け取った。
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