事実は小説より奇なり

DAO

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君の胸に彼岸花を添えて

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 幽霊なんて信じていなかった。人は死んだらそのまま消えるのだと思っていた。
 だから、杏寿郎や他の被害者達に起こった事には幽霊では無い何かが原因のはずだ。薫はそれを調べる為に杏寿郎の依頼を受けた。

「スポーツカーはレンタルですか?」
「いや、俺がこの日の為に買ったんだ。前のは酷く破損してしまってね。」
「え!?わざわざ、これ買ったんですか!?
 コレ、高いスポーツカーだと思うんだけど。」
「そう?金額見てないから分からないや。じゃ、早速行こうか。」

 杏寿郎は新しい玩具を与えられたかの様に目をキラキラさせて車に乗り込んだ。薫は唖然としたまま杏寿郎に習った。
 トンネルの前まで着くと杏寿郎の顔が変わった。先ほどまでは子供の様にキラキラと目を輝かせていたのに、今では獲物を狩るハンターの様な目になっていた。

「俺は今、作家をやっていてね。こういう怖い話を書いてたりするんだ。
 けど……今回の案件は俺一人では解決出来ない。薫君、もしかしたら俺達二人は危険な目に遭うかもしれない。覚悟は出来てるかい?」
「………えぇ、出来てるわ。」

 停止していた車はゆっくりとトンネルの方へと走り出した。幽霊が出る条件の通り、トンネルの中で再び車を停車する。
 静まり返ったトンネル内は酷く不気味だった。

「静かね……。」
「おかしいなぁ、この間は直ぐに出てきたのに。」

 やっぱり、幽霊何て居なかったんだ。薫は心の中で少しだけ安堵した。
 
 コンコン。運転席の窓を叩く音がして二人は音の方へと顔を向けると白いワンピースを着た女が立って居た。顔は長い髪の毛に隠れてしまって見えない。
 女は再び、コンコンと窓をノックする。

「来た。」

 杏寿郎は小さくそう呟きハンドルをきつく握りしめる。

『開けてよ。総一郎さん。開けてよ。総一郎さん。開けて開けて開けて開けて開けて開けて開けて開けて。』

「っ!?」
「薫君、悲鳴をあげたらダメだよ。あっちはまだ中に居る僕らには気付いてない。」

 女は壊れた様に「開けて」と呟き続けた。みるみるうちに女の白いワンピースは赤黒い血で染まり始める。ノックをする手も傷が浮き出てきて痛々しい姿に変わっていく。
 薫は自分の見ているモノが信じられず手で口を塞ぐ。今、悲鳴を上げたら終わりだ。幽霊を見た事の無い薫でさえそれが分かった。

『どうして?どうして?どうして?どうして?あげでよ"……あげでぇぇええ!!!!』

 女は狂った様に暴れだし車をこれでもかと言う程に殴り始めた。一瞬、女と目が合った気がした…その時、薫の脳内に声が入り込んできた。

【愛してたのに。どうして?総一郎さん。どうして?どうして?】

 女の負の感情が一気に薫の中へと雪崩れ込んできた。悲しくて辛くて痛い。苦しい。なんで?どうして。唯、愛して欲しかっただけなのに―――。

「愛して……欲しかった……だけ…。」

 薫はその一言を呟き、意識を失った。薄れる意識の中で杏寿郎が薫を呼ぶ声がしたが薫はそれに答える事が出来なかった。
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