チルドレン

サマエル

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7話

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「やあ、こんにちは、アイリス。意外と遅かったな。そんなにおばちゃんの容態が悪化したのか?」

 シオン婆(ばあ)のところに行く早々、ジムは私を見つけると心配げに話しかけてきた。
「いや、大丈夫。確かに悪いけど、今日明日でどうにかなる程悪くはないよ」

 それにジムも頷いた(うなずいた)。
「そうか、それはよかった」
 そして、にっこり笑う。

「あの、よかったら、私も手伝おうか?」
「ああ、助かる。まだ残っていて、実のなるリンゴを取ってくれ。僕は左手側からやるから、アイリスは右手側からな」

「了解」
 シオン婆の農場(のうじょう)は大きな庭のような小規模の農場(のうじょう)だった。大体植えられているのは10株(かぶ)ほどだろうか?

 そんな決して大きくない農場(のうじょう)に、しかしちゃんと柵もあって、農場(のうじょう)らしいといえばらしいが、よくここでジムや子供達と一緒にやんちゃばかりしたっけな?

勝手に木の下にタイムカプセル埋めたり、柵の下を掘ってトンネルにしたり、本当に迷惑ばかりかけていたな。
あ、思い出すと恥ずかしい。さっさと終わらせよう。
 
私は一株のリンゴの木に立って、サイコキネシスで木からからりんごの小枝からりんごの実を取るのだが、これがかなり難しい。

 この世界のすべての動植物には魔力を持っており、他のものが魔術をかけると、大体それを相対化(そうたいか)するようなプロテクトをするのだ。これをレジスト運動という。

 もちろん、リンゴの木にも魔力はある。だが厄介(やっかい)なことに幹や枝、小枝、リンゴの実にはそれぞれ数値の違う魔力を持っており、枝を壊さずに、小枝からリンゴを切り分けるのは相当(そうとう)神経(しんけい)にいる………………………。

 パシ。
 その時、左手側で取っていたジムが一つのリンゴを自分の手元に持っていた。

 コホン。作業なのだ。だから、これは高い能力が持つ魔術師(まじゅつし)でも骨が折れ…………………
 パシ。

 また、ジムがリンゴを手元に持っていく。ジムはそれをカートに入れて他のリンゴに魔力を巡らす(めぐらす)。
 これは説明をしていたんだから、取れてないだけで、決して私の腕(うで)が低いとかそんなんじゃないんだからね!?



 結局。私が一株取ったのに、ジムは6株実を取って終わらせた。それだけジムがどれ程魔術の才能が天才的であるか読者諸君にお分かりいただけたであろう。
 ハァ~。地味(じみ)に傷つくな~。



 で、シオンばあちゃんが私たちの礼にとアップルパイとフィーティーを用意してくれた。フィーティーはこのフェドラ町でよく使われるお茶だ。

 そして、リビングでお茶ということになったのだが……………………。
「すごーい!ジム、見てみて!サッシだよ!あのサッシ、ガラスサッシだ!」
「ああ、すごいな」

 私が窓ガラスを指さして興奮(こうふん)気味に行ったが、しかし、ジムはあっさりとした口調でティフィーティーを飲む。それに私は不満げに唇を突き出す。ティフィーティーはヤールティーと違って香ばしい香りのするお茶だ。こういう完食時によく出されるお茶だ。

「サッシと言ったら一級品の家具よ!それを個人の住宅で持てるなんてすごい!これをみ
て何も思わないの!?」

「まあ教会にもあるし」
 それに私は膨れる(ふくれる)。

「ムー、夢がない言い方だなぁ」
「まあ、いいじゃないか。座ろう。話があるんだろう?」
「そうでした」
 私は萎縮(いしゅく)して席に座った。そして、言った。

「実はさ」
「うん」
「私、モンスター討伐隊(とうばつたい)員になったのは知ってるよね?」

「ああ」
「なんだけどさ、実は私の母の病状があんまり思わしくないの」
 ジムの眉(まゆ)が動いた。

「悪いのか?」
「ええ、後1年は持たないだろうって、ミラー先生が言ってた」

「そうか」
 ジムは視線を落とす。
「それでさ」
「うん」

「私近日中に僻地(へきち)に飛ばされる可能性があるの。まだ、採用(さいよう)された、だけで具体的な任務(にんむ)はまだ決まっていない」
「わかった」

「え?」
 肝心(かんじん)なところ話していないんだけど?
「いわゆるおばちゃんの面倒を僕がみてくれないか?というものなんだろう」
 私は口をパクパクさせた。何も話していないのに見透かされる(みすかされる)なんて!

「まあ、長い付き合いさ、言わんとしていることはなんとなくわかるさ」
 そう言ってウィンクするジム。
 ううう、間違ってないけど~。なんか悔しい~!

そう、一人で悶々(もんもん)していると出し抜けにジムが言った。
「なあ、おばちゃんのことなんだけど………」
「うん」
 私は頷いた(うなずいた)。

「領主(りょうしゅ)様はお見舞い(おみまい)に来ていたか?」
「ううん」

「そうか」
 そして、またジムが遠い目をする。それに私は何かあるな、と思った。

「何?ジム。何かあるなら話してよ!水臭い(みずくさい)じゃない!」
「いや、気にしすぎかもしれない」
 そう言ってジムは口をつぐんだ。

「何?」
 ジムの様子に私は不安になる。

「いや」
 ジムは手のひらで口を覆って、横を向いた。そして、そのまま言う。

「これは噂(うわさ)なんだが、聞くか?」
「う、うん」

 普段は誠実(せいじつ)なジム、だからこそ、そのシリアスな様子にどこか不安になる。ジムはまっすぐにこっちに振り向いて言った。

「僕の仕事知っているな?」
「うん。主に幻術(げんじゅつ)破りでしょう?」
 さっき、昼の時のような女の子に幻術(げんじゅつ)をかけてレイプする男性は後を絶たない(たたない)。一応帝国も対応はしているが、しかし、それでも、なかなか減る見込みはない。

 そして、ジムの仕事はそんな女の子のレイプされた、と言う直感(ちょっかん)を聞きつけ、幻術(げんじゅつ)にかけられていないか、見るのが仕事だ。幻術(げんじゅつ)と言っても、大体1日で効果が切れるものが多いから、女の子側から何か違和感(いわかん)を感じたら、普通自警団(じけいだん)に行くのが普通だ。
「それが何?」

「いや、幻術(げんじゅつ)も日々進歩しているんだ」
「うん」
「1日ではなく、1ヶ月間効果が持続(じぞく)する幻術(げんじゅつ)もある」
「うん」

「それで強制発情(きょうせいはつじょう)させてレイプしたら、今度はそのレイプした人を好きになるような幻術(げんじゅつ)も編み出せるようになっているんだ」
「え?」
 ぞっと背筋(せすじ)が凍る思いだった。レイプしたのに、当人を好きになる幻術(げんじゅつ)?信じられない。もし、それを悪用すれば、レイプしたのにその翌日にはレイプした人に好意を抱き、恋人同士になれるかもしれない。もし、そんなことを考えて行動を起こしている人がいたらそいつは人間じゃない。悪魔だ。いや、待て。と言うことは………

「もしかして、お母さんが!」
「ああ、その可能性もなくはない」
「いやいや、ないでしょう!だってお母さんがお父さんと知り合ったのは20年以上も前のことだし!」

「それがな、よくわからないんだ」
「え?」
 どう言うこと?

「新しい幻術(げんじゅつ)が発明された瞬間に、その新技術が広く知られ渡ることはない。主に使われてばれてから存在(そんざい)が知られるってだけで、僕が言った幻術(げんじゅつ)はもっと前から発明された可能性が高い」
「いやいやいや!」
 私は思いっきりジムの話を遮った(さえぎった)。それにジムも黙った。

「どうぞ」
「うん。言わせてもらうけどね。たとえ、そうだとしても、その技術は1ヶ月間だけでしょう?それを過ぎれば効果は切れるはずだよ!そうだったらお母さんはそんな!」
 そんな私の激情を、しかしジムは水のような滑らかさ(なめらかさ)で割って入った。

「これは少し前から知られられている技術だけどね、幻術(げんじゅつ)持続(じぞく)、と言う魔術があるのはわかってきたんだ」
「それは?」
 何か名前からして嫌そうな感じしかしない。

「これは名前通り幻術(げんじゅつ)を持続(じぞく)させる魔法だ。モンスター戦ではほとんど効果がない」
「と言うことはレイプ用の?」
 それにジムはうなずいた。

「もしくは破局(はきょく)になりそうなカップルに幻術(げんじゅつ)を使って持続(じぞく)させて結婚まで持ち込める魔術だ。結婚をすれば一生離婚(りこん)はできないからな」
「ひどい」
「アイリス?」
 頬(ほお)に熱いものを感じるままに私の心も熱いものを感じた。

「ひどいよ!そんな、そんなことをするなんて男の人って本当に最低!そこまでエッチしたいの!?レイプしたいの!?私、男の人もう信じられない!」
「アイリス!」
 ジムは私の前にかがんで私の手を握った。

「ごめん」
「…………………………」
「ごめん」
「…………………………………………………………………」

「ただ、僕は君のことも案じていたんだよ。ほら、君は討伐隊(とうばつたい)のメンバーに加わるだろ?そして、君は美しい。だから、僕自身、君に暗(あん)に注意をしたくて行ったわけなんだ」
 グスッ。頬に熱いものが流れる。顔がくしゃくしゃになった。

「アイリス、ごめん」
 ジムの両手に力が籠る(こもる)。私もその手を私の頬に持ってくる。

「ありがとう。ジム。あなたの心遣い(こころづかい)本当に嬉しいわ。でも、これから、私何を信じていけば…………とにかく新しく知り合う男性は本当に信用できない」
「アイリス」
 ジムは穏やか(おだやか)に言う。

「よく聞いて。今では帝国は本気でこの問題に対応している。少なくとも、モンスター討伐隊(とうばつたい)を含む、全帝国男魔術師(まじゅつし)に、どこでいつ幻術(げんじゅつ)を使ったのか、と言う記憶装置(そうち)を体に埋め込んでいる。女性にもそれを埋め込むつもりらしい。僕は自警団(じけいだん)員だけど、もう、それは埋め込んでいる。だから、元気出して。少なくとも帝国は本気でこの問題を対応しようとしているし天使たちもこの問題に関与(かんよ)するつもりらしいから、何があったら、近くの天使に相談して、幻術(げんじゅつ)レイプ被害届(ひがいとどけ)の職務放棄(しょくむほうき)は帝国軍規規定(くにぐんききてい)第85章の第15項によって、職務放棄(しょくむほうき)とみなされないから、自分のことを考えてアイリス」
 そのジムの言葉に、私はただ項垂れる(うなだれる)しかなかった。

「ごめん。でも、君にどうしても注意をしたくて行ってしまった。それが君を守ることになるかもしれないけど、傷つけてしまって本当にごめん」
 そういって、ジムは堪堪(たんたん)と頭を項垂れた(うなだれた)。
「ジム」
 またしても、私の目に涙が溢れた(あふれた)。

 ジムが悪いわけじゃない。と言うよりも、その心積もり(こころづもり)がとても嬉しい。でも、そうじゃない。そうじゃないの。男の人はスケベだと思っていた。それはもう10年前ごろからわかっていた。でも、ここまで卑怯(ひきょう)なことを考えているなんて想像(そうぞう)だにしなかった。

 本当に男の人たちがこんなことを考えているなんて………。
 でも、しかし、ジムの心遣(こころつかい)いには本当に私は感動していた。だから悪い意味でも良い意味でもショックで、だから私の目から涙が止まることをしなかった。



「ごめんな」
 あれからシオン婆の家でずっと泣きっぱなしだった私は、そうこうしているうちにすっかり夜になり、シオン婆のアップルパイと、夕飯のご馳走(ごちそう)までししてもらい、そして、ジムと一緒に集合住宅に帰ってきたわけだ。
「なあ」
 集合住宅の入り口に来たときに出し抜けにジムが言った。

「うん」
「おばちゃんの件だけど」
「うん」

 ジムならこう言うだろう。できるだけ休暇をとって面倒を見るよ、と。
「できるだけ休暇をとって面倒を見てみるよ」
 あまりの的中率(てきちゅうりつ)に私は笑いを堪え(こらえ)られなかった。
「アイリス、どうした?」

「いや、私の的中率(てきちゅうりつ)も案外(あんがい)悪くはないなと思って」
 そう言うとジムは不思議(ふしぎ)そうな顔をした。
「でも、ありがとう」
 私はにっこり笑って言う。ジムは慌てて(あわてて)顔を逸らす(そらす)。

「そうやってお母さんのこと。ううん、私たちのこといつも考えてくれてありがとう。いつも感謝しています」
 そう言うとジムはしどろもどろになった。
 うーん、恥ずかしがっちゃってー。もう、こう言うところが可愛い(かわいい)なー、ジムは。
 その私の笑顔の攻撃にジムは。

「う、うん。どういたしまして」
 言葉を絞り出す(しぼりだす)ようになんとかその言葉を言った。
「じゃあね。また」
「あ、ちょっと待った」
 バイバイして別れようとしたときにジムが言う。

「討伐隊(とうばつたい)の任務(にんむ)につくのはいつだ?」
 それに私は手を顎(あご)に当てる。
「うーん。昨日入団試験が受かったと言うのが来たから、多分1ヶ月後ぐらい」
「そうか、だろうな」
 それにウンウン、頷くジム。

「どうしたの?」
「休みにしても引き継ぎとかあるから、明日も仕事をするよ。溜まっている案件の処理、後輩の指導とか。まあ、でもみんなアイリスのことをわかっているし、僕が抜けても理解してくれると思う」

「そっか」
 私はニコニコ顔で頷いた(うなずいた)。
 本当にジムは。

「じゃあ、当分会えないね」
「うん。おばちゃんも長くはないんだし、できるだけそばにいてやりなよ」
「うん。ありがとう」
 私のことを第一に考えてくれる。本当に素敵(すてき)な人。

 私たちは正式なお付き合いはしていない。でも、節々(ふしぶし)にジムが私をどう思っているのかなんとなくわかっているし、私もジムのことが嫌いじゃない。と言うか好きだ。だから、思いを伝えよう。朴念仁(ぼくねんじん)のジムのことだから、言い出せたくても言い出せないだろうし、と言うか、そう言うところが好きなところだし、私は、別に自分から告白しても気にならない。と言うか、自分の気持ちを自分で言葉をするのが好きなのだ。

「ジム」
 集合住宅(しゅうごうじゅうたく)に入ろうとしたジムが振り向く。

「私たちって18だよね?」
「ああ、そうだな」
 ジムは、何が言いたいのか分からずに、とりあえず頷いた(うなずいた)。

「私はモンスターを倒したい。被害にあっている女性を救いたい。でも、私は結婚を諦めた(あきらめた)わけじゃないの。ほら、18だとそろそろ結婚してもおかしくないでしょ?」
「そうだな」

「私はジムと結婚したいな。この討伐隊(とうばつたい)も3年間の任期(にんき)で終わらせようと思っている。ほら、ジムも30の歳増(としま)っていやでしょう?だから、私はあなたのために21歳で結婚したいんだけど、いいかな?」
 それにジムはうなずいた。

「君の話しはとても嬉しいし、僕も君と結婚したい」
「なら!」

「でもさ。入団試験を通ったとはいえ君は新人だ。どんな仕事であれ新人は大体3年間の仕事を通じて少しは仕事ができるようになるぐらいなものだ」
「あ、はい」
 ジムの真面目な口調に私も真面目になる。

「だから、3年と言わず、10年働きなさい。その間、僕は待っているから」
 その言葉に私はビックリする。

「え、ええええええ!!!!!!!10年。そしたら私は28歳じゃん!いいのそんなババアと結婚しても!」
「僕はその間待っているよ。アイリス」
 ツカツカとジムは歩いてこっちに来て私の手を握った。

「うん」
「僕は伴侶(はんりょ)から好意をもらえるのが好きだ」
「うん」
「でもね。もし、伴侶(はんりょ)に夢や目標があれば応援(おうえん)したいと思っている」
「うん」

「そして、できれば、その夢や目標が人のためになるものだったらとっても嬉しい」
「うん」
「アイリス」
 ジムはググッと私に顔を近づけた。その顔は真剣そのものだった。

「君はなぜ、モンスター討伐隊(とうばつたい)に入ろうとした?」
「え?それは女性たちを守るため………」
「そうだ。そうだな。僕はその使命感はとても尊い(とうとい)ものだと思っているし、プロポーズしてきた女性がそんな崇高(すうこう)な使命で働いているのをとても誇らしい(ほこらしい)」
「うん」

「だから、改めて問うが、もし、3年間ぐらいで辞めると言うのであれば、討伐隊(とうばつたい)には辞表を出しなさい。おばちゃんも長くはないわけだし、すぐに結婚した方がよほどいい」
「で、でも」
「うん」

「でも、嫌じゃないの?ジムは28歳のおばちゃんと結婚して。普通は二十歳ぐらいで結婚しているのが当たり前なのに………」
 
このバイエルン神聖帝国ではモンスターの被害が後を絶たない(たたない)。それに男性だけではなく女性たちも魔術師(まじゅつし)の素質(そしつ)に気づき、女性も男性ほどは出世はできないが、3等兵として討伐隊(とうばつたい)に組み(くみ)することができる。

 しかし、それは建前と本音は別なところにあり、今でも多くの男性は女性には家庭に留まって、良き妻、良き母になってほしいと言う願いが多く持っている。
 それを見透かして(みすかして)、女性たちのほとんどが魔術師(まじゅつし)の素質(そしつ)を極めようとは思っておらず、普通に結婚することを夢見ている。

 バリバリ働いている女性たちもいるが、そう言う女性は男から煙たがられ(けむたがられ)、低収入で結婚も逃すことが多いから、まず普通の女性はそんなことはしない。

 生活のために女性には仕事をしてほしいが、家庭をしっかりこなし、夫を立てる女性を多くの男性は望んでいる。女性の仕事に理解のある男性はほとんどいないのだ。この社会では。
 だから、さっきのジムの言葉はかなり衝撃(しょうげき)的だった。
「ジム」
 私はジムの目をじっと見つめる。

「本気なの?」
 ジムは私の目を真っ向から見つめ返した。
「ああ、本気だとも」
 ジムの目は本気そのものだった。

私はするりとジムの手を解いた(ほどいた)。
「アイリス?」
「ごめん、ジム。ちょっと今混乱している。さっき聞いた話で男の人全体が信頼できないと言うか、でも、ジムは別だよ!あー、でも、やっぱり結婚については………。10年も待ってくれるか不安になる。これでジムが他の女の子になびいたら、私は…………」
 それで言葉に詰まる(つまる)。それにくすりとジムは笑った。

「わかった、わかった。まず、3年間働いておいで、返事はその時に聞こう。ほら、いつまでもこんなところにいたら体が冷えるね。春先だから、夜はまだ寒いし。中に入ろう」
「そうだね」
 それで私たちは、それぞれ自分たちの部屋に入っていった。

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