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4.「桜の花はきれい」
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「おい! 月渚ぁ~~~~~っ!」
私に気付くなり、一人の男の子が駆け寄ってきた。背負っているランドセルの中身がガチャガチャと音を立てる。
(この男の子は……)
人工の頭の中から、この男の子のデータを探す。
彼の名前は昴。
苗字は曙。
月渚と同じ学校に通う、月渚の同級生。小学一年生のときからの友だちだ。
小柄な私より、昴くんのほうが少し背が高い。肌はこんがり日に焼け、膝にはぺたぺたと絆創膏が貼られている。
「久しぶりだなー、月渚! やっと学校に行けるんだな!」
「はい。ご無沙汰しておりました。また今日からよろしくお願いします。昴くん」
私にとっては初対面の人間だ。ぺこりと丁寧にお辞儀した。
昴くんはきょとんとこちらを見つめている。
「うっ……」
「?」
昴くんが口にした「うっ……」とは、なんだろう?
私は首を傾げた。人間は疑問があったとき、頭を横に傾けるらしいから。
「うははははははははははっ! やっべー! 月渚、おまえなにキャラ!?」
昴くんはお腹を抱えて、ゲラゲラと笑っている。
「な、なにか、おかしかったでしょうか……?」
「まだやるのかよ! なんでそんな喋り方なんだよーっ。あはははははははっ!」
(喋り方……? あっ)
どうやら、敬語で話すのがおかしかったらしい。
(もっと小学生らしく話そうって決めていたのに!)
さっそく失敗してしまった……!
体内の温度がどんどん上がっていく。人工知能が「焦り」を感じている。
このままでは、私が小暮月渚ではないことがばれてしまうかもしれない。
「ひ、久しぶりに会うから、ちょ、ちょっとキンチョーしちゃって!」
あわてて言葉遣いを直す。
「……あー」
昴くんはすっと真面目な顔になり、笑うのを止めた。
「そうだよな。病み上がりだもんな」
(な、納得してくれたみたい?)
急上昇した体温がまた下がっていく。ほっとしたからだ。
私たちは並んで通学路を歩き出した。小さな公園の前を通る。
植えられている桜が満開だ。
「きれい」
木の下で思わず立ち止まり、そう口にした。
「桜の花はきれい」。
あらかじめ私の中にインプットされている情報の一つだ。
でも、実際にこの目で見るのは今日が初めて。風に舞う花びらがきらきらして、思っていたよりもずっと、「桜の花はきれい」だった。
「早く行こうぜ。新学期から遅刻したくないだろ」
昴くんはあまり興味が無さそうで、ずんずんと先を歩いて行ってしまう。
「月渚、遅いぞー!」
昴くんが手提げバッグを振り回しながら私を呼ぶ。
「ご、ごめんね」
小走りしようとすると、昴くんがずかずかとこっちに戻ってきた。
そして私の背後に回る。
「?」
(なにをされるんだろう)
そう思った次の瞬間、昴くんは私の背中からランドセルを剥ぎ取ってしまった。
「な、なんですかっ? 返してください!」
予測できなかった動きに驚いて、ついまた敬語になってしまった。
「べつに、おまえのランドセルなんか盗らないって! 学校まで持っていってやるよ」
昴くんはお腹の前で私のランドセルを抱えると、また歩き出していく。
私はぱちぱちと瞬きしながら、ランドセルを前に抱え、後ろで背負う昴くんを眺めた。
私はやっと、昴くんが優しくしてくれたのだということを理解した。
私に気付くなり、一人の男の子が駆け寄ってきた。背負っているランドセルの中身がガチャガチャと音を立てる。
(この男の子は……)
人工の頭の中から、この男の子のデータを探す。
彼の名前は昴。
苗字は曙。
月渚と同じ学校に通う、月渚の同級生。小学一年生のときからの友だちだ。
小柄な私より、昴くんのほうが少し背が高い。肌はこんがり日に焼け、膝にはぺたぺたと絆創膏が貼られている。
「久しぶりだなー、月渚! やっと学校に行けるんだな!」
「はい。ご無沙汰しておりました。また今日からよろしくお願いします。昴くん」
私にとっては初対面の人間だ。ぺこりと丁寧にお辞儀した。
昴くんはきょとんとこちらを見つめている。
「うっ……」
「?」
昴くんが口にした「うっ……」とは、なんだろう?
私は首を傾げた。人間は疑問があったとき、頭を横に傾けるらしいから。
「うははははははははははっ! やっべー! 月渚、おまえなにキャラ!?」
昴くんはお腹を抱えて、ゲラゲラと笑っている。
「な、なにか、おかしかったでしょうか……?」
「まだやるのかよ! なんでそんな喋り方なんだよーっ。あはははははははっ!」
(喋り方……? あっ)
どうやら、敬語で話すのがおかしかったらしい。
(もっと小学生らしく話そうって決めていたのに!)
さっそく失敗してしまった……!
体内の温度がどんどん上がっていく。人工知能が「焦り」を感じている。
このままでは、私が小暮月渚ではないことがばれてしまうかもしれない。
「ひ、久しぶりに会うから、ちょ、ちょっとキンチョーしちゃって!」
あわてて言葉遣いを直す。
「……あー」
昴くんはすっと真面目な顔になり、笑うのを止めた。
「そうだよな。病み上がりだもんな」
(な、納得してくれたみたい?)
急上昇した体温がまた下がっていく。ほっとしたからだ。
私たちは並んで通学路を歩き出した。小さな公園の前を通る。
植えられている桜が満開だ。
「きれい」
木の下で思わず立ち止まり、そう口にした。
「桜の花はきれい」。
あらかじめ私の中にインプットされている情報の一つだ。
でも、実際にこの目で見るのは今日が初めて。風に舞う花びらがきらきらして、思っていたよりもずっと、「桜の花はきれい」だった。
「早く行こうぜ。新学期から遅刻したくないだろ」
昴くんはあまり興味が無さそうで、ずんずんと先を歩いて行ってしまう。
「月渚、遅いぞー!」
昴くんが手提げバッグを振り回しながら私を呼ぶ。
「ご、ごめんね」
小走りしようとすると、昴くんがずかずかとこっちに戻ってきた。
そして私の背後に回る。
「?」
(なにをされるんだろう)
そう思った次の瞬間、昴くんは私の背中からランドセルを剥ぎ取ってしまった。
「な、なんですかっ? 返してください!」
予測できなかった動きに驚いて、ついまた敬語になってしまった。
「べつに、おまえのランドセルなんか盗らないって! 学校まで持っていってやるよ」
昴くんはお腹の前で私のランドセルを抱えると、また歩き出していく。
私はぱちぱちと瞬きしながら、ランドセルを前に抱え、後ろで背負う昴くんを眺めた。
私はやっと、昴くんが優しくしてくれたのだということを理解した。
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