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終章「真昼の星を結ぶ」
47.いつくしみ深き
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美術教師として教壇に立つようになってから、判明したことがある。
船渡川や野田の歌っていた鼻歌は童謡の「星の世界」ではなくて、「いつくしみ深き」という讃美歌らしい。
「星の世界」は、「いつくしみ深き」の替え歌なのだと、船渡川を含むハイレベルコースの生徒たちが笑いながら教えてくれた。
各学校の卒業式では「大地讃頌」が選曲され、全国の「大地くん」がいじられるものだとばかり思っていたのだが、藤ヶ峰女学園のようなキリスト教系の学校では「いつくしみ深き」が歌われることが多いそうだ。
「千葉先生、結婚するんですか⁉」
「相手の写真見せて!」
「先生、仕事と家事の両立できなさそう」
「あのなー、こういう時は思ってなくてもまず『おめでとうございます』って言うもんなの。それに俺は意外と家事できるし」
小学生に毛の生えたような少年少女たちが「おめでとうございまーす」と声を揃えた。
「ほら、混むんだから、早く食堂に行きな」
美術室から中等部の生徒たちを追い払い、鍵をかけようと思ったらまだ男子生徒が一人残っていた。
「皆に言いたい。姉ちゃんと大地兄ちゃんの恋のキューピットは僕なんだって」
ぶかぶかの夏服をきた澄空の声は二次性徴のためにかさついていた。
「その話、絶対にするなよ。噂に尾ひれがついて『千葉先生は教え子に手を出した』なんて勘違いされたら最悪クビだ。あと、学校では大地兄ちゃんじゃなくて先生」
新婚で路頭に迷うことだけは避けたい。
「でも、本当に高校生に手ぇ出したんじゃん」
「ちげーよ」
教師らしからぬ言葉遣いだが、本当に違う。
野田海頼と再会したのは、彼女が引っ越した日から数年後の冬の祝日だった。
船渡川や野田の歌っていた鼻歌は童謡の「星の世界」ではなくて、「いつくしみ深き」という讃美歌らしい。
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「あのなー、こういう時は思ってなくてもまず『おめでとうございます』って言うもんなの。それに俺は意外と家事できるし」
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「皆に言いたい。姉ちゃんと大地兄ちゃんの恋のキューピットは僕なんだって」
ぶかぶかの夏服をきた澄空の声は二次性徴のためにかさついていた。
「その話、絶対にするなよ。噂に尾ひれがついて『千葉先生は教え子に手を出した』なんて勘違いされたら最悪クビだ。あと、学校では大地兄ちゃんじゃなくて先生」
新婚で路頭に迷うことだけは避けたい。
「でも、本当に高校生に手ぇ出したんじゃん」
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