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11.休暇の過ごし方
しおりを挟む「えっ?お休み??」
「そう。結衣ちゃんが一乃瀬家と兼任になってから、柚子ちゃんにきちんとしたお休みがないなぁって気になっていて……。ご当主様に相談したら勤務調整の許可を頂いたんだ」
立花さんからの突然の申し出に驚いて、思わず大きな声が出た。
お姉ちゃんが2週間に1回くらいしかお屋敷帰ってこなくなって1か月、寂しい気持ちでどんよりするかと思った日々は想像より面白い日々だった。その理由は、お屋敷のみんなが気を遣ってくれているのに加えて、彼がいるからだろう。
「それで、望月も同じ日にお休みを取ってもらって、街にでも行ってきたらどうかなって。望月にもこの領地の事を少しずつ覚えて貰いたいんだけど、なかなか僕と街に行く機会も少ないし……」
望月ーーその名前が出ると自然に楽しい気持ちになる。修行から帰ってきたら、この屋敷の一員になっていた光くんは今や私の中でなくてはならい存在だ。花瓶を割っても、つまみ食いしても育や修斗みたいにお小言を言わずに優しくしてくれる良い人だ。
「わかった!この柚子に光くんの街案内を頼みたいと言う事ね!」
「あ、街案内というか。そんな堅苦しくなく、連れて歩いて貰えばいいというか……」
連れて歩く?つまり、荷物持ちにしていいって事?それはーー好条件だ。
修行先から帰宅してお姉ちゃんが兼任になるまでの間、何度かお休みはあった。けど、街に出かけると言えば修斗くんが着いて行ってやるとか言って着いてきて、行きたいお店には行けなかったし、育と出かけようものなら花の苗だ、新種の種だと連れ回される。光くんなら、どんなお店があるかも場所すらも分かっていない、私の行きたい所に行ける!!
「わかった!柚子に任せて!」
「あの、柚子ちゃん?」
立花さんが何か言ってたけど、私の頭の中はもう街へのお出かけでいっぱいだ。
夕食の準備……は、まだまだ慣れないけれどお姉ちゃんの残したレシピや、朝食の用意だけお手伝いに来てくれる前の料理長さんのおかげでなんとかなっている。
「お待たせ~。俺の手伝うことある~?」
「シチュー煮込むから火をつけて欲しいですっ!」
サラダの盛り付けをしていると、本日のお手伝い係である深雪さんがやってきた。手際よく火をつける仕草に、なんでも器用にこなす人だなぁと感じる。
「ん~?どうかした~?」
「なんでもなーい」
またサラダの盛り付けに戻ると、深雪さんはそのままシチューの調理をしてくれるようだった。火はあまり得意じゃないーー私のそれはこのお屋敷では暗黙のルールだ。だから、サラッとそれを理解して行動に移せるスマートさは素敵だなと思う。
「柚子ちゃん今度望月とデートなんだって~?」
「えぅ?ん?あ、ほ?え、でぇと???」
思わず変な声が出てしまった。街案内だと思っていたけど……。それもそうなのか、男女で街に行くのはデートなのか。え?デート?したことないよ?え、どうしたらいいの?お姉ちゃんに……相談?いや、そんなことをしたら光くんと2人でのお出かけは出来なくなる。え?デートの定義って何?
頭の中はいろんな疑問で埋め尽くされて、その日の夕食の支度はいつの間にか、深雪さんの手で終わっていたのだった。
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