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第7幕 元預言者の息子と預言者の乙女
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しばらく預言者を救う方法を考えていたパトリックが出した結論は、
「失った王位継承権を取り戻す」
ということだった。
「それは、どういう?」
「正式な王太子はフォリオだ。私は期限つきの王になる。跡継ぎは必要ないから、当然結婚もしない」
一時的でも、国王になれば禁じられた書庫への出入りが可能だ。
正式な跡継ぎであるフォリオには、早い段階で生涯の伴侶を見つけることが求められる。アヴェリアもそれに全力を尽くすだろう。
だが、跡継ぎのいらない仮の王ならば、運命の相手を探す必要もない。
「私が先に国王となり、預言者の秘密を探る。その後で、フォリオに王位を譲ればいい」
代償を何とかする方法を見つけてから、フォリオが運命の相手と結ばれるようにする。それなら、アヴェリアが命を落とすこともない。
その提案に、フォリオは悩むそぶりを見せた。
◇◇◇◇
「とまぁ、こんなことを考えているようだよ」
夢の中で神の予知を聞かされたアヴェリアは、頭が痛くなった。
このままにしておけば、そんな方向に話が進むらしい。
「身勝手な理由で王位継承順位をめちゃくちゃにした結果、国は混乱し、誰も良き王とはなれない」
予知されなくとも、そんなことはアヴェリアも百も承知だった。
「まったく、そんな理由で王太子がコロコロ変わって良いわけがありませんわ。先に、国王陛下に進言いたします」
アヴェリアとは違い、いくら王族といえど、まだ幼い子どもの考えることだ。よくそんな方法を考えたものだとも思う。だが、そんな理由で仮の王など認められるはずがない。
それに、王太子が誰になろうと、アヴェリアの使命は変わらないのだ。パトリックが王になるなら、パトリックにその気がなくても、彼の運命の相手を探すのみ。
王位継承も、預言者の運命も、そう簡単に変えられるような、子どものお遊びではないのだ。
そもそも、本当に預言者を代償から救う方法があると思っているのだろうか。
禁じられた書庫には、確かに預言者に関する文献が収められている。しかし、それを見たからといって、預言者を救う方法が見つかるとは限らない。
「でも、君の目から見て、どうだい? フォリオとパトリック、どちらが王に相応しいと思う?」
ぴたり、とアヴェリアは動きを止める。
そして、しばらく考えた後にこう答えた。
「王位を簡単に捨てようとするのは見過ごせませんが、仮にパトリック様が王位継承権を取り戻し、長く国を治める覚悟ができたのなら、分かりませんわね」
今の問いは、王太子がフォリオではないかもしれないことを暗に示していた。
また面倒なことに、とアヴェリアは重いため息をつく。
「どちらが真の王太子か、教えてはくれないのでしょう?」
「9割決まっているけど、まだ不確定要素が多いからね」
神は断言するのを避けた。
「あとは王太子の運命の相手を絞るだけだと思っていましたのに……面倒なことをしてくれますわ」
「随分と想定された未来を掻き乱してくれるよね。面白いよ、君たちは」
「こっちは真剣に悩んでいるのですが」
予知を聞いたアヴェリアたちの行動により、未来が変わることはある。
しかし、王太子まで不確定要素になってしまうとは。ますます頭は痛くなるばかりだった。
「失った王位継承権を取り戻す」
ということだった。
「それは、どういう?」
「正式な王太子はフォリオだ。私は期限つきの王になる。跡継ぎは必要ないから、当然結婚もしない」
一時的でも、国王になれば禁じられた書庫への出入りが可能だ。
正式な跡継ぎであるフォリオには、早い段階で生涯の伴侶を見つけることが求められる。アヴェリアもそれに全力を尽くすだろう。
だが、跡継ぎのいらない仮の王ならば、運命の相手を探す必要もない。
「私が先に国王となり、預言者の秘密を探る。その後で、フォリオに王位を譲ればいい」
代償を何とかする方法を見つけてから、フォリオが運命の相手と結ばれるようにする。それなら、アヴェリアが命を落とすこともない。
その提案に、フォリオは悩むそぶりを見せた。
◇◇◇◇
「とまぁ、こんなことを考えているようだよ」
夢の中で神の予知を聞かされたアヴェリアは、頭が痛くなった。
このままにしておけば、そんな方向に話が進むらしい。
「身勝手な理由で王位継承順位をめちゃくちゃにした結果、国は混乱し、誰も良き王とはなれない」
予知されなくとも、そんなことはアヴェリアも百も承知だった。
「まったく、そんな理由で王太子がコロコロ変わって良いわけがありませんわ。先に、国王陛下に進言いたします」
アヴェリアとは違い、いくら王族といえど、まだ幼い子どもの考えることだ。よくそんな方法を考えたものだとも思う。だが、そんな理由で仮の王など認められるはずがない。
それに、王太子が誰になろうと、アヴェリアの使命は変わらないのだ。パトリックが王になるなら、パトリックにその気がなくても、彼の運命の相手を探すのみ。
王位継承も、預言者の運命も、そう簡単に変えられるような、子どものお遊びではないのだ。
そもそも、本当に預言者を代償から救う方法があると思っているのだろうか。
禁じられた書庫には、確かに預言者に関する文献が収められている。しかし、それを見たからといって、預言者を救う方法が見つかるとは限らない。
「でも、君の目から見て、どうだい? フォリオとパトリック、どちらが王に相応しいと思う?」
ぴたり、とアヴェリアは動きを止める。
そして、しばらく考えた後にこう答えた。
「王位を簡単に捨てようとするのは見過ごせませんが、仮にパトリック様が王位継承権を取り戻し、長く国を治める覚悟ができたのなら、分かりませんわね」
今の問いは、王太子がフォリオではないかもしれないことを暗に示していた。
また面倒なことに、とアヴェリアは重いため息をつく。
「どちらが真の王太子か、教えてはくれないのでしょう?」
「9割決まっているけど、まだ不確定要素が多いからね」
神は断言するのを避けた。
「あとは王太子の運命の相手を絞るだけだと思っていましたのに……面倒なことをしてくれますわ」
「随分と想定された未来を掻き乱してくれるよね。面白いよ、君たちは」
「こっちは真剣に悩んでいるのですが」
予知を聞いたアヴェリアたちの行動により、未来が変わることはある。
しかし、王太子まで不確定要素になってしまうとは。ますます頭は痛くなるばかりだった。
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