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第9幕 狩人の乙女
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晩餐会が終わり、用意された個室に戻ったフォリオは、ベッドに横になって考え込んでいた。
(ハルサーシャ王子、いい人だったな……)
アヴェリアに好意をもっている相手がどんな人間か確かめについてきたが、想像以上にハルサーシャはできた子どもだった。
一見、軽そうな見た目とは裏腹に、相手の気持ちを重んじる人。それは、アヴェリアへの態度を見ていて明らかだった。
彼ならば、彼女のことを大切にしてくれるだろう。アヴェリアだって、彼のことは気にかけているようだった。お似合いの二人かもしれない。
本来ならば喜ぶべきことなのに、嬉しさよりも、悔しさの方が優ってしまう。
ーーコンコンコン。
考えに耽っていると、部屋の戸が叩かれた。側近のニアが確認すると、来客はパトリックだった。
部屋に招き入れると、パトリックはフォリオの悩みを見透かしたように話し出す。
「ハルは、いいやつだよ。それは保証する」
兄のように慕うパトリックの言葉に、フォリオはより表情を固くした。
でも、とパトリックは続ける。
「ハルは、預言者を心から崇拝している。それは、これから先も変わらないだろう。アヴェリア嬢のことを大切に思っていたとしても、預言者の代償までなんとかしようとは考えない」
それを聞いて、フォリオははっとする。
「ハルにとっては、預言者に代償があるのは当たり前のこと。何ら疑問は抱かない」
「……僕は、嫌です。アヴェリアがいなくなってしまうのは」
「私も同じ気持ちだ。いくらアヴェリア嬢が受け入れていても、父上のことを思い出すと、どうにか止めたいと考えてしまう」
「パトリック兄上……」
「私はこれからも、独自に代償から解放する方法を探す。お前はどうする?」
パトリックの強い眼差しに、フォリオも覚悟を決める。
「僕も、諦めたくありません。彼女のことが大切なのは、ハルサーシャ王子だけじゃないから」
正直なところ、まだアヴェリアのことは諦めきれていない。代償を何とかする術が見つかれば、今度こそ手順を踏んで想いを伝えるつもりだ。
もし、アヴェリアがハルサーシャや、他の誰かを選んだとしても。彼女の幸せが続くように、代償で若くして命を落とすことがないように。
パトリックと互いの意志を確認してからは、どこか頭の中がすっきりしていた。
帰国までの数日間、ルーデアス王国を案内してもらっている間も、以前のような焦りはなかった。
「フォリオ殿下、何だか調子がよさそうですわね」
そんな変化を感じ取ったのか、アヴェリアが声をかけてくる。
「君と一緒にいられるからじゃないかな」
今はまだ、恋心を向けられる相手ではないけれど。
アヴェリアと、その代償と、諦めずに向き合っていこうと、そう決めたから。
(ハルサーシャ王子、いい人だったな……)
アヴェリアに好意をもっている相手がどんな人間か確かめについてきたが、想像以上にハルサーシャはできた子どもだった。
一見、軽そうな見た目とは裏腹に、相手の気持ちを重んじる人。それは、アヴェリアへの態度を見ていて明らかだった。
彼ならば、彼女のことを大切にしてくれるだろう。アヴェリアだって、彼のことは気にかけているようだった。お似合いの二人かもしれない。
本来ならば喜ぶべきことなのに、嬉しさよりも、悔しさの方が優ってしまう。
ーーコンコンコン。
考えに耽っていると、部屋の戸が叩かれた。側近のニアが確認すると、来客はパトリックだった。
部屋に招き入れると、パトリックはフォリオの悩みを見透かしたように話し出す。
「ハルは、いいやつだよ。それは保証する」
兄のように慕うパトリックの言葉に、フォリオはより表情を固くした。
でも、とパトリックは続ける。
「ハルは、預言者を心から崇拝している。それは、これから先も変わらないだろう。アヴェリア嬢のことを大切に思っていたとしても、預言者の代償までなんとかしようとは考えない」
それを聞いて、フォリオははっとする。
「ハルにとっては、預言者に代償があるのは当たり前のこと。何ら疑問は抱かない」
「……僕は、嫌です。アヴェリアがいなくなってしまうのは」
「私も同じ気持ちだ。いくらアヴェリア嬢が受け入れていても、父上のことを思い出すと、どうにか止めたいと考えてしまう」
「パトリック兄上……」
「私はこれからも、独自に代償から解放する方法を探す。お前はどうする?」
パトリックの強い眼差しに、フォリオも覚悟を決める。
「僕も、諦めたくありません。彼女のことが大切なのは、ハルサーシャ王子だけじゃないから」
正直なところ、まだアヴェリアのことは諦めきれていない。代償を何とかする術が見つかれば、今度こそ手順を踏んで想いを伝えるつもりだ。
もし、アヴェリアがハルサーシャや、他の誰かを選んだとしても。彼女の幸せが続くように、代償で若くして命を落とすことがないように。
パトリックと互いの意志を確認してからは、どこか頭の中がすっきりしていた。
帰国までの数日間、ルーデアス王国を案内してもらっている間も、以前のような焦りはなかった。
「フォリオ殿下、何だか調子がよさそうですわね」
そんな変化を感じ取ったのか、アヴェリアが声をかけてくる。
「君と一緒にいられるからじゃないかな」
今はまだ、恋心を向けられる相手ではないけれど。
アヴェリアと、その代償と、諦めずに向き合っていこうと、そう決めたから。
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