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第10幕 お茶会の乙女
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デイモン男爵家での、お茶会当日。
客間に通されたアヴェリアは、他の令嬢たちが揃っているのを確認したあと、ゆっくりと椅子に腰を下ろした。
予知通り、アヴェリア以外の令嬢たちは、多少色合いは異なるものの、同じ型のドレスに身を包んでいた。
フリルがふんだんに使われた令嬢たちのドレスとは対照的に、アヴェリアが着ているのは、生地にこそ見事な金の刺繍が施されているが、他に装飾のないシンプルなものだった。
一人だけ違うドレスに身を包んだアヴェリアを見て、令嬢たちはざわつく。
「皆さん、どうぞ今日は楽しんでいってくださいね!」
主催者であるアリアは、満面の笑みである。
「あの……アヴェリア様は、アリア様から頂いたドレスを着てこなかったのですか?」
同席していた令嬢の一人が、おずおずと尋ねる。
「あら、皆さんお揃いのドレスは、デイモン男爵令嬢から贈られたものだったのですか? 残念ながら、私は頂いておりません」
「きっと、私が思いもよらないような素敵なお姿を拝見できるだろうと思って、あえて贈りませんでしたの」
でも、とアリアは蔑むような視線をアヴェリアに向ける。
今日のアヴェリアの出立ちは、決して派手なものではない。落ち着いている、というのは言い換えれば地味ともとれる。
「やっぱり、ドレスをお贈りした方がよかったでしょうか? 今流行りのもので、なかなか手に入らないんですよ」
自分は、デイモン男爵家が管理するブティックに顔がきくから、手に入れられるけれど、とアリアはにやりと笑った。
流行遅れと馬鹿にしたいのだろう。周りの令嬢たちも、初めは戸惑っていたが、時間が経つにつれてアリアに感化されていったのか、クスクスと笑い始める。
「アヴェリア様がお願いするというのなら、特別にもう一着用意しないこともないですが……」
「お気遣いありがとうございます。ですが、必要ありませんわ」
強がっていると思われているのだろう。だが、そうしていられるのも今のうちだ。
「娘がお茶会を開いていると聞いてね。楽しんでくれているかな?」
しばらくしたところで、様子を見に来たのはアリアの父、デイモン男爵だった。その商才で男爵の地位を賜った、やり手である。
娘には甘いが、男爵の力はアヴェリアも認めていた。
「お父様!」
「こらこら、人前ではしたないよ?」
抱きついてくる娘に注意しながらも、その顔は緩み切っていた。
「おや、みんな我が社のドレスを着てくれているんだね。ありがとう」
デイモン男爵家がプロデュースした揃いのドレスに身を包んでいる令嬢たちを見て、男爵は嬉しそうに目を細める。
ぴたり、とアヴェリアの前で視線をとめると、男爵は驚いたように目を見開いた。
「アヴェリア嬢、そちらのドレスは……」
「お父様……ブラウローゼ公爵家の方なら、私が勧めなくても素敵なドレスを着てくると思っていたのです」
父親が、アヴェリアだけ違う服装を、しかもこんなに質素なドレスを着てきたことに戸惑っているのだと思ったアリアが援護する。
しかし、戸惑うどころか、男爵は目を輝かせていた。
客間に通されたアヴェリアは、他の令嬢たちが揃っているのを確認したあと、ゆっくりと椅子に腰を下ろした。
予知通り、アヴェリア以外の令嬢たちは、多少色合いは異なるものの、同じ型のドレスに身を包んでいた。
フリルがふんだんに使われた令嬢たちのドレスとは対照的に、アヴェリアが着ているのは、生地にこそ見事な金の刺繍が施されているが、他に装飾のないシンプルなものだった。
一人だけ違うドレスに身を包んだアヴェリアを見て、令嬢たちはざわつく。
「皆さん、どうぞ今日は楽しんでいってくださいね!」
主催者であるアリアは、満面の笑みである。
「あの……アヴェリア様は、アリア様から頂いたドレスを着てこなかったのですか?」
同席していた令嬢の一人が、おずおずと尋ねる。
「あら、皆さんお揃いのドレスは、デイモン男爵令嬢から贈られたものだったのですか? 残念ながら、私は頂いておりません」
「きっと、私が思いもよらないような素敵なお姿を拝見できるだろうと思って、あえて贈りませんでしたの」
でも、とアリアは蔑むような視線をアヴェリアに向ける。
今日のアヴェリアの出立ちは、決して派手なものではない。落ち着いている、というのは言い換えれば地味ともとれる。
「やっぱり、ドレスをお贈りした方がよかったでしょうか? 今流行りのもので、なかなか手に入らないんですよ」
自分は、デイモン男爵家が管理するブティックに顔がきくから、手に入れられるけれど、とアリアはにやりと笑った。
流行遅れと馬鹿にしたいのだろう。周りの令嬢たちも、初めは戸惑っていたが、時間が経つにつれてアリアに感化されていったのか、クスクスと笑い始める。
「アヴェリア様がお願いするというのなら、特別にもう一着用意しないこともないですが……」
「お気遣いありがとうございます。ですが、必要ありませんわ」
強がっていると思われているのだろう。だが、そうしていられるのも今のうちだ。
「娘がお茶会を開いていると聞いてね。楽しんでくれているかな?」
しばらくしたところで、様子を見に来たのはアリアの父、デイモン男爵だった。その商才で男爵の地位を賜った、やり手である。
娘には甘いが、男爵の力はアヴェリアも認めていた。
「お父様!」
「こらこら、人前ではしたないよ?」
抱きついてくる娘に注意しながらも、その顔は緩み切っていた。
「おや、みんな我が社のドレスを着てくれているんだね。ありがとう」
デイモン男爵家がプロデュースした揃いのドレスに身を包んでいる令嬢たちを見て、男爵は嬉しそうに目を細める。
ぴたり、とアヴェリアの前で視線をとめると、男爵は驚いたように目を見開いた。
「アヴェリア嬢、そちらのドレスは……」
「お父様……ブラウローゼ公爵家の方なら、私が勧めなくても素敵なドレスを着てくると思っていたのです」
父親が、アヴェリアだけ違う服装を、しかもこんなに質素なドレスを着てきたことに戸惑っているのだと思ったアリアが援護する。
しかし、戸惑うどころか、男爵は目を輝かせていた。
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