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第10幕 お茶会の乙女
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天使の祝福。その言葉自体は、シエナも聞いたことがあった。しかし、まさか自分がその当事者であるなど、考えたこともなかった。
「それは本当なのですか? いえ、アヴェリア様を疑っているわけではないのですが、考えたこともなかったもので……」
「まだ確実とは言えませんが、デイモン男爵令嬢の力を打ち消していたところを見ると、可能性は高いかと」
「アリア様の力、ですか?」
「デイモン男爵令嬢は、悪魔に魅入られています。これは、神も肯定しました」
またもシエナは目を丸くする。
「そんな……それでは、アリア様の周囲の方々があのような言動をされていたのもーー」
自分の誕生日パーティーで、主役の座を取って代わろうとしたアリア。そして、彼女に同調していた令嬢たち。
今思えば、いくらアリアが話題の男爵家の娘だとしても、侯爵家の令嬢の誕生日パーティーでこぞって無礼をはたらくのは、不自然なことに思えた。
「おそらく、デイモン男爵令嬢の魅了の力にあてられたのでしょう」
ここまでの話を聞いて、シエナも納得する部分があったのか、神妙な面持ちだ。
「その話をされたということは、私に何かできることがあるのでしょうか?」
「流石は、シエナ様。ご理解が早いですわ」
アヴェリアが次に言わんとすることを察して、シエナは先に切り出す。
悪魔の力に対抗できるのは、天使の力。それは、誰もが知ることだった。
「デイモン男爵令嬢は、これからも多くの人を惑わし続けるでしょう。成長すれば、その力も大きくなっていきます。しかし、シエナ様が天使の祝福を受けているなら、あなたのそばにいる限り、魅了されなくなるはずです」
「なるほど、つまり私はーー」
決心した顔つきで、シエナが拳を握る。
「そうです、これから付きまとわれるであろう殿下たちのお側にーー」
「アヴェリア様のお側でお守りすればよろしいのですね!」
「え?」
「はい?」
暫しの沈黙。
コホン、とひとつ咳払いをしてから、アヴェリアは仕切り直す。
「シエナ様には、デイモン男爵令嬢の魔の手から、フォリオ殿下とパトリック殿下を守って頂きたいのです」
「あ……そういうことでしたか」
シュンとしてしまったシエナに、アヴェリアは付け加える。
「私の心配までしてくださって、ありがとうございます。ですが、私は神の瞳を授かっておりますので、簡単に魅了されることはありません」
「早とちりしてしまい、申し訳ありません。アヴェリア様の力をもってすれば、アリア様に負けるわけありませんものね」
話を聞いて納得したのか、シエナはうんうんと頷いている。
「具体的に、私は何をすればよろしいのですか?」
「シエナ様が近くにいれば、その祝福の恩恵を受けることができます。デイモン男爵令嬢が参加するパーティーなどに、できるだけ出席してください。私もサポートしますので」
アリアがフォリオのことを狙っていること、今後、パトリックにも魔の手が伸びる可能性があることなどを伝えた。
王太子候補である二人が魅了される事態になれば、国が揺らぎかねない。
事の重大性を理解したシエナは、アヴェリアのお願いを快く引き受けた。
「それは本当なのですか? いえ、アヴェリア様を疑っているわけではないのですが、考えたこともなかったもので……」
「まだ確実とは言えませんが、デイモン男爵令嬢の力を打ち消していたところを見ると、可能性は高いかと」
「アリア様の力、ですか?」
「デイモン男爵令嬢は、悪魔に魅入られています。これは、神も肯定しました」
またもシエナは目を丸くする。
「そんな……それでは、アリア様の周囲の方々があのような言動をされていたのもーー」
自分の誕生日パーティーで、主役の座を取って代わろうとしたアリア。そして、彼女に同調していた令嬢たち。
今思えば、いくらアリアが話題の男爵家の娘だとしても、侯爵家の令嬢の誕生日パーティーでこぞって無礼をはたらくのは、不自然なことに思えた。
「おそらく、デイモン男爵令嬢の魅了の力にあてられたのでしょう」
ここまでの話を聞いて、シエナも納得する部分があったのか、神妙な面持ちだ。
「その話をされたということは、私に何かできることがあるのでしょうか?」
「流石は、シエナ様。ご理解が早いですわ」
アヴェリアが次に言わんとすることを察して、シエナは先に切り出す。
悪魔の力に対抗できるのは、天使の力。それは、誰もが知ることだった。
「デイモン男爵令嬢は、これからも多くの人を惑わし続けるでしょう。成長すれば、その力も大きくなっていきます。しかし、シエナ様が天使の祝福を受けているなら、あなたのそばにいる限り、魅了されなくなるはずです」
「なるほど、つまり私はーー」
決心した顔つきで、シエナが拳を握る。
「そうです、これから付きまとわれるであろう殿下たちのお側にーー」
「アヴェリア様のお側でお守りすればよろしいのですね!」
「え?」
「はい?」
暫しの沈黙。
コホン、とひとつ咳払いをしてから、アヴェリアは仕切り直す。
「シエナ様には、デイモン男爵令嬢の魔の手から、フォリオ殿下とパトリック殿下を守って頂きたいのです」
「あ……そういうことでしたか」
シュンとしてしまったシエナに、アヴェリアは付け加える。
「私の心配までしてくださって、ありがとうございます。ですが、私は神の瞳を授かっておりますので、簡単に魅了されることはありません」
「早とちりしてしまい、申し訳ありません。アヴェリア様の力をもってすれば、アリア様に負けるわけありませんものね」
話を聞いて納得したのか、シエナはうんうんと頷いている。
「具体的に、私は何をすればよろしいのですか?」
「シエナ様が近くにいれば、その祝福の恩恵を受けることができます。デイモン男爵令嬢が参加するパーティーなどに、できるだけ出席してください。私もサポートしますので」
アリアがフォリオのことを狙っていること、今後、パトリックにも魔の手が伸びる可能性があることなどを伝えた。
王太子候補である二人が魅了される事態になれば、国が揺らぎかねない。
事の重大性を理解したシエナは、アヴェリアのお願いを快く引き受けた。
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