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episode 3
誰も知らない彼の秘密
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「よし。準備できた」
寝室の鏡で自分の姿を念入りにチェックして、私は口紅を抑えたティッシュをゴミ箱に捨てた。
ゴールデンウィークの中日となる5月5日土曜日。
今日は私と平嶋課長の記念すべき初デートだ。
火曜日に連絡はこまめに、週末デートは忘れずに、と念を押してから、平嶋課長は電話やメッセージを送ってくれるようになった。
もちろん急に成長するわけもなく、メッセージといえば一言日記だし、電話は本当になんの用事もない。
『電話かければ会話はなんとかなると言ってたくせに。なにも話すことがないじゃないか』
そう文句を言ってきた平嶋課長にはカチンときた。
『そこは声が聞きたかっただけだ、とか、機転を利かせられないもんですかねっ?平嶋課長の言葉は、お前とは話すことがないって言ってるのと同じですっ』
強めの口調でそう言う。
どうやら私は平嶋課長に対しては、対等に接することができるようだ。
それはやっぱり(仮)の関係だからだろうか。
『……久瀬の声が聞けてよかった。たとえそれが文句でも』
『一言余計っ!』
会社の電話でしか聞くことのなかった平嶋課長の電話独特の声が、今では私のスマホから聞こえる。
そのことが不思議で楽しくて嬉しくて。
まさか本当にデートするまでになるなんて思ってもみなくて。
胸元で切り返された、グリーンのポリエステルヒラヒラチュニックとベージュのパンツ姿に満足して、ハーフアップに編み込んだ巻き髪を揺らしながら玄関に向かった。
もうすぐここに、平嶋課長が車で迎えに来ることになっている。
完全なプライベートの一日は、いったいどんな日になるんだろう。
私は大きく深呼吸をして家を出た。
寝室の鏡で自分の姿を念入りにチェックして、私は口紅を抑えたティッシュをゴミ箱に捨てた。
ゴールデンウィークの中日となる5月5日土曜日。
今日は私と平嶋課長の記念すべき初デートだ。
火曜日に連絡はこまめに、週末デートは忘れずに、と念を押してから、平嶋課長は電話やメッセージを送ってくれるようになった。
もちろん急に成長するわけもなく、メッセージといえば一言日記だし、電話は本当になんの用事もない。
『電話かければ会話はなんとかなると言ってたくせに。なにも話すことがないじゃないか』
そう文句を言ってきた平嶋課長にはカチンときた。
『そこは声が聞きたかっただけだ、とか、機転を利かせられないもんですかねっ?平嶋課長の言葉は、お前とは話すことがないって言ってるのと同じですっ』
強めの口調でそう言う。
どうやら私は平嶋課長に対しては、対等に接することができるようだ。
それはやっぱり(仮)の関係だからだろうか。
『……久瀬の声が聞けてよかった。たとえそれが文句でも』
『一言余計っ!』
会社の電話でしか聞くことのなかった平嶋課長の電話独特の声が、今では私のスマホから聞こえる。
そのことが不思議で楽しくて嬉しくて。
まさか本当にデートするまでになるなんて思ってもみなくて。
胸元で切り返された、グリーンのポリエステルヒラヒラチュニックとベージュのパンツ姿に満足して、ハーフアップに編み込んだ巻き髪を揺らしながら玄関に向かった。
もうすぐここに、平嶋課長が車で迎えに来ることになっている。
完全なプライベートの一日は、いったいどんな日になるんだろう。
私は大きく深呼吸をして家を出た。
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