Perverse

伊吹美香

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episode 8

甘い未来へ

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なにって……。



柴垣くんの問いに私は困惑して足を止めた。



「ここ、会社の最寄り駅だから……手……」



戸惑いがちに私が繋いだ手に視線を送って離すことをアピールすると、柴垣くんはハッと気づいた表情をした。



が、全く手を離す素振りを見せない。



出勤途中の男女が手を繋いで足を止めているなんて、周りから見れば『何してるんだコイツ等は』という感じだろう。



チラチラと見られながらも、人通りは疎らになっていく。



「大事なことを忘れてた。また回り道したくねぇから、ちゃんと確認しとくな?」



そう言った柴垣くんは真剣そのもので、私は軽く身構えてしまう。



「……なぁに?」



不安げにそう聞くと、柴垣くんは私の方へと向き直る。



「さすがにもう言わねぇでもわかってると思うけど、俺達のことだから面倒くさく考え込むと厄介だなと思ってさ」



「うん」



彼はいったい何が言いたいのだろう。



「お前はもう俺の彼女で、俺はお前の彼氏だから。俺達は恋人同士ってことだからな?」



「……はい……」



よく気持ちは通じ合ったけど『付き合おう』とは言われてないから、と言って思い悩む人の話を耳にすることがある。



自分で言うのもなんだが、私はその部類に入るだろうと思う。



きっと柴垣くんはそれがわかってるから、私にちゃんと伝えてくれているんだ。
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