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episode 8
甘い未来へ
しおりを挟む「柴垣さんと私が付き合ってるって噂は、そもそも私から柴垣さんに、そう噂を流させてほしいってお願いして私が広めたんです」
事実と少し違うところがあるようだけれど、竹下さんは気にもしていないようだ。
「最近社内でストーカー行為を受けてたんです。犯人がどこの誰だかは知らないですけど」
わざと大きな声で周囲を睨みつけながら竹下さんは続ける。
「社内で成績もトップだし、顔もいいし、女子社員にも人気の柴垣さんと付き合ってるってことにしておけば、諦めると思ったんです。ストーカーなんてことするような人間は、たいてい完敗を認めることができれば目が覚めるって聞いたことがあったんで」
「それで竹下さんがわざと柴垣との噂を流したの?じゃあ本当は付き合ってなかったってこと?」
落ち着いた口調でそう聞いたのは、驚くことに津田さんだった。
彼もこの一連の流れは把握しているはずだ。
竹下さんが柴垣くんのことを本当に好きで画策していたことを知っていて、わざと皆の前で質問してくれているのだろう。
「付き合ってませんよ。本当は彼氏のフリをお願いしたんですけど、それはできないって断られました。だからせめて噂の否定をしないでほしいってことだけお願いして」
「なるほどね。だから急に二人が付き合ってるって噂が流れたんだね。全ては竹下さんのストーカー対策だったわけだ」
多少強引な設定だが、津田さんが納得するフリをすると、不思議と皆が自然に納得し始める。
さすがは津田さん。
これが『津田マジック』だ。
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