Perverse second

伊吹美香

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episode 3

リセット

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新人の伸び悩みが自分の指導不足だと、豊島は頻繁に言っていた時期がある。



指導する立場になってなおさら頭を抱えていたようで、課題が山積みだと嘆いていた。



「ま、俺達は自分の仕事を堅実にこなすしかできねぇからな」



「そうやね。この展示会でガッチリ顧客掴んで下に引き継いでやらないかん」



ガッツポーズをして力む豊島が少し心配だけれど、彼も実力のある人間だ。



きっと努力を無駄にすることはないだろう。



自分の数字のためだけでなく、下に引き継がせたいと言う豊島には頭が下がる。



ブースに着くと久々に見る顔ぶれに懐かしくテンションが上がったが、すぐさま招待客リストを渡され目を通す。



顧客数もさる事ながら、かなりの大手も招待しているようで、気合いの入り方が見て取れた。



俺達も大口や新規を確実に繋げていかなければならない。



そういうのは三崎の得意分野なんだよな。



チラリと三崎を見ると、気合の表れか、口元がへの字に曲がってしまっている。



ポンと三崎の頭に手を落とし、なるべく優しく笑いかけた。



「力まず俺達らしくやろーぜ」



その言葉に反応して、ようやく笑顔の三崎と目が合った。
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