123 / 196
episode 4
辛抱
しおりを挟む
やけに視線を感じて、俺はそろそろと三崎を見下ろした。
その途端、三崎のとんでもなく破壊的な視線に言葉を失ってしまった。
なんて目で俺を見てるんだよ、コイツは。
見つめ合った三崎は淡く頬が染まっていて、まるで泣いてしまうんじゃないかと思うほど、瞳を潤ませていた。
俺がこんなに自分を抑えているっていうのに、俺の理性を吹き飛ばしてしまうほどの三崎の表情だ。
そんな三崎の視線に耐えきれなくなった俺は、視線を逸らして小さく溜め息をついた。
「……やめろよ」
俺の声が聞こえなかったのだろうか。
「え?」
三崎は聞き返して、俺に耳を寄せる為に伸びをした。
「ちょっ……」
あまりにも近くなった三崎との顔の距離に、思わず身を引いて顔の距離を限界まで作った。
「近ぇよ。マジで勘弁して……」
少しでも横を向くと、唇が触れそうな距離だったから。
三崎の唇の柔らかさと温もりを思い出し、卑しい自分の心が嫌になる。
「……ごめん……」
三崎が何かを呟いたけれど、ちょうど最寄り駅に到着し開いたドアの音に紛れて聞こえなかった。
「行くぞ」
俺は逸れるからという大義名分のもと、三崎の腕を取って人ごみを掻き分けて電車を降りた。
このままずっと握って歩いていたい。
そう願いそうになったが、それは三崎の望まない願いだろうと思うと、なんだか情けなくなった。
その途端、三崎のとんでもなく破壊的な視線に言葉を失ってしまった。
なんて目で俺を見てるんだよ、コイツは。
見つめ合った三崎は淡く頬が染まっていて、まるで泣いてしまうんじゃないかと思うほど、瞳を潤ませていた。
俺がこんなに自分を抑えているっていうのに、俺の理性を吹き飛ばしてしまうほどの三崎の表情だ。
そんな三崎の視線に耐えきれなくなった俺は、視線を逸らして小さく溜め息をついた。
「……やめろよ」
俺の声が聞こえなかったのだろうか。
「え?」
三崎は聞き返して、俺に耳を寄せる為に伸びをした。
「ちょっ……」
あまりにも近くなった三崎との顔の距離に、思わず身を引いて顔の距離を限界まで作った。
「近ぇよ。マジで勘弁して……」
少しでも横を向くと、唇が触れそうな距離だったから。
三崎の唇の柔らかさと温もりを思い出し、卑しい自分の心が嫌になる。
「……ごめん……」
三崎が何かを呟いたけれど、ちょうど最寄り駅に到着し開いたドアの音に紛れて聞こえなかった。
「行くぞ」
俺は逸れるからという大義名分のもと、三崎の腕を取って人ごみを掻き分けて電車を降りた。
このままずっと握って歩いていたい。
そう願いそうになったが、それは三崎の望まない願いだろうと思うと、なんだか情けなくなった。
0
あなたにおすすめの小説
俺様御曹司に飼われました
馬村 はくあ
恋愛
新入社員の心海が、与えられた社宅に行くと先住民が!?
「俺に飼われてみる?」
自分の家だと言い張る先住民に出された条件は、カノジョになること。
しぶしぶ受け入れてみるけど、俺様だけど優しいそんな彼にいつしか惹かれていって……
恋は襟を正してから-鬼上司の不器用な愛-
プリオネ
恋愛
せっかくホワイト企業に転職したのに、配属先は「漆黒」と噂される第一営業所だった芦尾梨子。待ち受けていたのは、大勢の前で怒鳴りつけてくるような鬼上司、獄谷衿。だが梨子には、前職で培ったパワハラ耐性と、ある"処世術"があった。2つの武器を手に、梨子は彼の厳しい指導にもたくましく食らいついていった。
ある日、梨子は獄谷に叱責された直後に彼自身のミスに気付く。助け舟を出すも、まさかのダブルミスで恥の上塗りをさせてしまう。責任を感じる梨子だったが、獄谷は意外な反応を見せた。そしてそれを境に、彼の態度が柔らかくなり始める。その不器用すぎるアプローチに、梨子も次第に惹かれていくのであった──。
恋心を隠してるけど全部滲み出ちゃってる系鬼上司と、全部気付いてるけど部下として接する新入社員が織りなす、じれじれオフィスラブ。
夢見るシンデレラ~溺愛の時間は突然に~
美和優希
恋愛
社長秘書を勤めながら、中瀬琴子は密かに社長に想いを寄せていた。
叶わないだろうと思いながらもあきらめきれずにいた琴子だったが、ある日、社長から告白される。
日頃は紳士的だけど、二人のときは少し意地悪で溺甘な社長にドキドキさせられて──!?
初回公開日*2017.09.13(他サイト)
アルファポリスでの公開日*2020.03.10
*表紙イラストは、イラストAC(もちまる様)のイラスト素材を使わせていただいてます。
Fly high 〜勘違いから始まる恋〜
吉野 那生
恋愛
平凡なOLとやさぐれ御曹司のオフィスラブ。
ゲレンデで助けてくれた人は取引先の社長 神崎・R・聡一郎だった。
奇跡的に再会を果たした直後、職を失い…彼の秘書となる本城 美月。
なんの資格も取り柄もない美月にとって、そこは居心地の良い場所ではなかったけれど…。
シンデレラは王子様と離婚することになりました。
及川 桜
恋愛
シンデレラは王子様と結婚して幸せになり・・・
なりませんでした!!
【現代版 シンデレラストーリー】
貧乏OLは、ひょんなことから会社の社長と出会い結婚することになりました。
はたから見れば、王子様に見初められたシンデレラストーリー。
しかしながら、その実態は?
離婚前提の結婚生活。
果たして、シンデレラは無事に王子様と離婚できるのでしょうか。
冷酷総長は、彼女を手中に収めて溺愛の檻から逃さない
彩空百々花
恋愛
誰もが恐れ、羨み、その瞳に映ることだけを渇望するほどに高貴で気高い、今世紀最強の見目麗しき完璧な神様。
酔いしれるほどに麗しく美しい女たちの愛に溺れ続けていた神様は、ある日突然。
「今日からこの女がおれの最愛のひと、ね」
そんなことを、言い出した。
距離感ゼロ〜副社長と私の恋の攻防戦〜
葉月 まい
恋愛
「どうするつもりだ?」
そう言ってグッと肩を抱いてくる
「人肌が心地良くてよく眠れた」
いやいや、私は抱き枕ですか!?
近い、とにかく近いんですって!
グイグイ迫ってくる副社長と
仕事一筋の秘書の
恋の攻防戦、スタート!
✼••┈•• ♡ 登場人物 ♡••┈••✼
里見 芹奈(27歳) …神蔵不動産 社長秘書
神蔵 翔(32歳) …神蔵不動産 副社長
社長秘書の芹奈は、パーティーで社長をかばい
ドレスにワインをかけられる。
それに気づいた副社長の翔は
芹奈の肩を抱き寄せてホテルの部屋へ。
海外から帰国したばかりの翔は
何をするにもとにかく近い!
仕事一筋の芹奈は
そんな翔に戸惑うばかりで……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる