九尾狐は聖獣ですか?

すぅこ

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買い出しですよ

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  サト達は、思っていたより早く、次の街『ロッカス』に着いた。
歩くのが遅いだろうサトが、誕生日会が楽しみ過ぎて、休憩も取らず、ルンルンで頑張って歩いたのだ。
丸一日以上のはずが、1日足らずで着いたのだ。

サトは街に着いても、休む事無く買い出しに行こうと駄々をこねる。せっかく街に着いたのに、食事も摂ろうとせず、誕生日会の事ばかり考えているのだ。

疲れている筈なのに、言う事を聞かないサトに、シオは無理矢理口に食べ物を押し込んだ。ムゥ~っとするサトに、「少し休憩したら一緒に出掛けようね」と言うと、やっと納得した。

正直、サトはフラフラだった。でも、シオを祝ってあげたかった。冷たい言葉を言いつつも、とても優しいシオに、兄を重ねているのかもしれない。
自分の誕生日会でもある事なんて、すっぱ抜けていた。

とりあえず、今日は準備、明日は誕生日会と決定した。

まずは、早めにケーキの準備。材料が手に入りやすいのであればと思ったが、甘味料は貴重で手に入らず、クリームというもの自体無かった。仕方無く、カイトにお菓子屋でそれらしいモノを予約してもらった。
(もちろん、『誕生日おめでとうシオ』と描いてもらうよう頼んだ。)

シオとサトは明日の手料理の為の材料を買い出しに出かけた。
挽肉、玉ねぎ、卵に、パン粉、ミルク、ソースにケチャップ…。ハンバーグです。
付け合わせの野菜。
もう一品はポトフにしましょう!
後、こちらの世界、お米は採れないので、主食はパンです。パンを焼いてあげたいところですが無理なので、そこはプロのもので。
シャンパンみたいなお酒も用意。

ざっと食料は買いましたが、大事な物がありません。
『プレゼント』です。

実はさっき、商店街を物色中に、気になる物を発見したのだ。さり気なく値段もチェックし、お小遣い範囲内。

シオの手をパッと離し、「忘れ物!」と嘘をつき、その店に向かう。
いつも、すぐに捕まえるシオだったが、最近は逃げる事は無かったので安心していた。
ハッと追いかけようとした時には、賑わう人混みにサトを見失ってしまっていた。
不安がよぎる。早く見つけなければと。

シオの心配をよそに、無事にお目当ての物をゲットして浮かれていた。
大事にポシェットにしまい、何事もないようにシオと合流すればいいやと考えていた。

しかし店を出てすぐ、何者かに口を塞がれて薄暗い路地に引きずり込まれた。
男だ。そこそこ身なりが良い男が3人。1人がサトを羽交い締めして、1人が素早くサトの口に布を巻き声が出ないようにした。
手馴れている。
そして、リーダー格だろう1人がサトを物色し、満足そうに覗き込む。
「かなりの上玉だな。高く売れそうだ。」

あー、また私は売られそうになっているんだ。
狐の姿でなくても、この容姿は珍しいのだと、改めて実感した。強くて有名なシオ達といると、誰も手を出せないだけなのだ。知らず知らず、守られていたのだと。

涙が出た。馬鹿な自分に。

男がサトのスカートをめくり上げた。
『ひっ…ヤダよぉ、気持ち悪いよぉ。』
男は、サトの足を膝から太腿へと撫で上げる。
サトはあまりの気持ち悪さに怯え、力が入らず座り込む。
羽交い締めしている男も、唾を飲み込み、片方の手をサトの胸に滑り込ませようとした……

その瞬間。
ドン、ガラガラと路地の入り口にあった樽が吹っ飛び。
悪魔の形相のシオが立っていた。
姿を見ただけで、震え上がり、凍りつきそうなオーラを放っていた。

シオは状況を確認した。
スカートをめくり太腿に触れている男と、今まさに胸を揉もうとしてサトを羽交い締めにしている男。
……そして、涙を浮かべるサト。

さらに怒りの形相を増し、悪魔ではなく魔王が君臨していた。
一瞬で、逃げようとする男達は氷漬けにされた。

『シオ、シオ…ごめんなさい。』と涙が溢れる。
シオはサトの前まで行くと、安心したのか、ガクッと力が抜けたように膝をついた。そして、口の布をほどくと、ギュっと強く抱き寄せた。
「怖かったよぉ、ごめんなさい。」とサトもシオに抱きついた。

「遅くなってすまない。」渇いた声で謝る。
きっと、ずっと探して走り回ってくれたのだろう。
サトはブンブンと首を振った。

だって、私がいけないのだから。

よく考えたら、妖力使えば良かったのだ。
使い慣れてないものは、いざという時、気が動転していると役に立たないな……。

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