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第2章 龍戦争編

第7話 石像になった私

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「うっ…うぅん…」
 目を覚ますと衣服は摩擦で焼け焦げ、地上にぶつかった衝撃で服はボロボロになっていて、ほとんど全裸だった。
 周囲を見渡すと、クレーターみたいな穴が出来ていて、衝撃の強さを物語っていた。恐らく私は即死したはずだ。不死の能力スキルで生き返ったのだろう。
自動洗浄オートクリーン
衣装替チェンジ
 生活魔法を唱えて、身体を綺麗にしてから服を新調した。
飛翔レイヴン
 空中に飛び上がって、クレーターから抜け出た。
 私が墜落した場所は、森林地帯だ。深い森の中にいた。このまま飛んで森から出る事も出来るが、恐らく空ではまだ戦闘が続いているに違いない。巻き込まれない様に、このまま逃げよう。それにしても、黒龍王は何故、私を奪いに来たのだろうか?
 神魔と同盟締結が目的か、私自身が目的だろう。
自動書込地図オートマッピング
 先程までいたであろう場所から、かなり遠くまで飛ばされて墜落しているみたいだ。
 低空飛行を続けて飛んでいると、何かが陽に反射して光った様に見えた。
「キャッ!」
 透明の糸で編まれたネットに身体ごと突っ込むと、粘り気のある糸が絡み付いて動けなくなった。
「ま、まさか、まさか…」
 私はこの世で1番蜘蛛が苦手だ。嫌な予感がして青ざめた。
「ギャアァァ!」
 とんでもなく巨大なそれが目に入った。恐怖で失禁し、ガタガタと震えが止まらなくなった。凄まじい勢いで向かって来た。
光之堅牢ライトニングプリズン
 全ての攻撃を無効化する代わりに、こちらからも攻撃が出来なくなる呪文だ。堅牢に守られているのもお構いなく、足で器用に回転させながら、吐き出した糸でぐるぐる巻きにして行く。
「うぅ…うっ…助けて、助けて、助けて…誰か助けて…」
 滅多に人に頼らない私が目を瞑り、助けを求めて祈りを捧げた。身体が浮く感覚があり、何処かへ連れて行かれている。直ぐに食べない餌は、ストックされるに違いない。だから、彼らの巣に連れて行かれているのだろうと推測した。
 巣ごと爆裂呪文で自爆してやろうか?とか考えていた。固定される感じがすると、動きが止まった。糸でぐるぐるにされているし、巣穴と思われる為に真っ暗で何も見えないが、光之堅牢ライトニングプリズンからは強烈な光を放っていた。だから余計に恐怖が増す。失禁し過ぎて、これ以上は漏れない程に怯えていた。
自動洗浄オートクリーン
衣装替チェンジ
 堅牢の中で着替えて、取り乱した心を落ち着かせ様と、何度も深呼吸をした。
 不意に、堅牢をコツコツと突つく音が聞こえた。グラグラと揺らされて何度も突かれると、巨大な蜘蛛が毒針を刺そうと躍起になっていた。
「助けて神様って、私が神様だった…」
 何て冗談を言っている場合では無い。こんな事なら龍の方が余程マシだったと、嗚咽して泣き始めた。
「もう一生、この中から出ない」
石化封印シィーフゥアフェンイン
 瑞稀は身体状態異常無効スキル持ちだが、自分自身を封印する事は出来るのだ。光之堅牢ライトニングプリズンの中で、石像となった。
 神魔や龍人達も血眼になって瑞稀を探した。しかし、誰にも見つける事が出来ないまま、月日だけが過ぎて行った。

「おい、コレ見ろよ!」
「おぉ、よく出来た石像だな。本物の人間と間違えて巣に持ち帰ったのか?」
「ははは、それ程よく出来た石像なら、価値があるかも知れん。コレも持って帰ろう」
「あぁ、早く出よう。鬼蜘蛛女アルケニーの巣に長居するものじゃない」
 男達は盗掘屋だった。墓や遺跡、時にはこうして蜘蛛の巣や、龍の巣に入って金になりそうな物を持ち帰る。鬼蜘蛛女アルケニーの卵は大変美味で、入手の危険さから希少価値も高く、高値で取引される。
「くくく、今回は思った以上に卵の数が手に入った。これで当分は遊んで暮らせるな」
「違いねぇ。だが俺は故郷くにに残して来た家族に仕送りしねぇとな」
 盗掘屋達は、人でなければ龍人でも無い。身体の色は緑色で、小鬼ゴブリンに似ているが、違う種族だ。
「ふー、儲かった、儲かった。しかし、コレ、全然売れなかったな」
「あぁ、よく出来てるんだが、裸だったら買う奴もいたかもな?」
「どうするコレ?」
「そんな重くて売れない物、要らねぇだろう?捨てて行こう」
 石像になった私は、町の外れに打ち捨てられ雨晒しにされた。
「ねぇ、パパこれ欲しい」
「何だ?そんなの気に入ったのか?仕方ないな」
 偶然通りかかった農夫の父娘に持ち帰られ、家の入口の飾りにされた。
「あぁん。パパ、気持ち良い…イっちゃう。もうイっちゃうよぉ…」
 毎晩の様に、この父娘はHを繰り返していた。この様な田舎では娯楽は無い為、Hをして楽しむくらいしか無い。妻に先立たれたのか逃げられたのか分からないが、この男の妻はおらず、まだ12歳くらいに見える実の娘を妻の代わりに抱いていた。
 しかし、娘の方も嫌がっている様子は無く、むしろ父親を1人の男として愛しているのが分かる。行為中にも、「大きくなったら、パパのお嫁さんになる」と言っているから、そう言う事だろう。
 石像になった私は、動く事が出来ないが、目は見えるし耳は聴こえる。覗き見するつもりは無かったが、目線の先がベッドなのだから仕方ない。
「ルティナ。私ね。パパの本当の子供じゃ無いんだ」
 ルティナとは、この娘が石像の私に付けた名前だ。この娘は、両親が戦争で無くなって1人泣いている所を農夫に拾われたらしい。
 実の父娘の様に暮らしていたが10歳の時、寂しそうにしている父に寄り添っていたら押し倒されて以来、そう言う仲になったと言った。それからは毎晩、父と情を交わしている。まだ月のモノ(生理)は来ない為、膣内なか出しされているが、いつか父の子供を産みたいと語った。

「誰かいるか?」
 この家のドアを激しく叩く者がいて、農夫が出ると、石像の私を見せてくれと頼んでいた。
解除魔法ディスペルマジック
 石像の私に掛けられた封印が解けた。ふと見ると、魔王アーシャと魔王ルシエラだった。
陛下ビーシャア、よくぞご無事で」
「うぅんっ…」
 私は背伸びをして、大きく深呼吸をした。
「パパと仲良くね?」
 私はこの家の娘の耳元でささやくと、耳まで顔を真っ赤にした。私は意地悪く笑って、家賃だと言って沢山のお金を渡した。
「ルシエラ、私がいなくなってからの事を知りたい。教えて」
 私は用意された龍車に乗り込んで、この家をあとにした。

 
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