その日、女の子になった私。

奈津輝としか

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【第5部〜旧世界の魔神編〜】

第3章 終わりは突然に

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 この土曜日は、朝から花井さん母娘おやこと遊園地に出掛けた。美亜ちゃんを真ん中にして、3人で手を繋いで歩いてる姿は、知らない人が見たら、仲良し親子にしか絶対に見えないだろう。
 美亜ちゃんは終始ニコニコで、楽しそうにしていた。子供の笑顔に癒される。人を喜ばせる事が、こんなにも幸せな気持ちになれるんだと初めて知った。我が子が出来たら、きっとこんな気持ちになるのだろう。
「最後に観覧車に乗って帰ろうか」
「うん」
 美亜ちゃんは私の隣に座り、私は花井さんと向かい合った。余りにも可愛くて、マジマジと見つめてしまう。本当に女子大生くらいにしか見えない若さだ。目はクリッとして、唇もぷっくりとしたアヒル口だ。色白で足首も締まっている。華流ファリュウドラマの影響で、生足が大好きな中国人の影響を受けて私も、ついつい足首に目が行ってしまう。足首からすらっとした太腿まで目を這わせると、「青山さんのH!」と花井さんに気付かれて言われた。
「どうせ私はHですよ。知ってるでしょう?」
「うふふふ、知ってる、知ってる」
 2人で笑ってると、美亜ちゃんもきょとんとした表情から、つられて笑い出した。ゴンドラの中は、穏やかで温かい空気で充満された空間だった。幸せを感じられる時間だ。ずっとこのまま時が止まっていれば良いのに、そう思った。
 遊園地からの帰り道、花井さんのアパートに送る為に一緒に手を繋いでいた。送ると言いながらも、幸せを感じながら花井さんと、今すぐにでもHがしたい衝動に駆られていた。花井さんも、その気である事が伝わって来る。言葉にしなくても、それが伝わるくらい肌を重ねて来たのだ。私が彼女を抱いた回数は、前夫を超えている。
「前の人(旦那)とは、何回くらいHしたの?」
 男は彼女のHした回数を気にする生き物だ。
「うーん、数えてないから分からないけど、多分200回くらいかな?ママ活で100人近くと寝たから、Hは合わせて300回くらいしたのかな?」
「じゃあ、私が1人で300回超えるよ」
「えっ?へへへ、何それ?」
「私が緑の1番になりたいんだ」
「うふふふ、独占欲が強過ぎ♡でも愛されて、緑ちゃんは幸せよ」
 有言実行。その日から私は彼女の1番になる為に抱き続けた。そして本当に300回を超えた。だが、抱く度にこの美しい身体を100人近い男が抱いたのか?私以外にこの身体を抱いて、裸を知っている男がいるのか?そう思うと嫉妬に狂って苦しんだ。この緑の身体は私だけの物だ。そう思いながら激しく抱いた。
 遊園地からの帰り、間も無く花井さんのアパートに着く、その時だった。前から麻生さんと山下が歩いて来たのだ。
「えっ?何で!?」
 麻生さんは私を一瞥いちべつすると、背を向けて「山下くん、行こう」と言って去った。山下は、「え、えっ?えっ?」本当に良いの?見たいな表情をして、私と麻生さんを見比べながら麻生さんの後を付いて行った。

「青山さん、早く追いかけて!」
「えっ?いや、でも…」
パチーンと頬を花井さんにたれた。
「馬鹿っ!目を覚ましなさい!今追いかけないと、彼女を失うわよ!」
私は花井さんに背中を押されて、麻生さんを追いかけた。
「青山さん…うっ、う、うっ、う、う…」
「お母さん、青山のお兄ちゃんと喧嘩しちゃったの?」
「違うの…違うのよ…、これは青山のお兄ちゃんの為なの…うっ、う、う…」
花井さんは美亜ちゃんを抱きしめ、肩を震わせて泣いた。

 私は全力で走って、ようやく麻生さんの背を見つけた。
「はぁ、はぁ、はぁ…待って、麻生さん!」
「先輩…何やってたんですか!?麻生さんはずっと泣いてましたよ!」
「山下…すまない。2人にさせてくれないか?」
「行かなくても良いよ、山下くん。何も話す事なんて無いから…」
私は山下に目で訴えてお願いした。
「すみません、麻生さん。また明後日。明後日、必ず出勤して下さいね?」
山下は駆け足で去って行ってくれた。
「麻生さん…今更、言い訳はしません。でも、麻生さんとこんな形で終わりにしたくありません。どうかもう一度だけ、償う機会チャンスを下さい。お願いします」
 土下座をして頭を地面に擦り付けて、祈る様に謝った。そのまま10分もその状態でいたのだろうか?体感でそのくらいで、実際は5分も経って無かったかも知れない。すすり泣く麻生さんの声が聞こえた。
「麻生さん…」
起き上がって、麻生さんの肩を抱こうとした。
「触らないで!」
裏切られていた事を知ったのだ。怒りと悲しみで、頭の中は混乱している事だろう。私に憎しみさえ抱いているかも知れない。
「青山くん…最初に言ったよね?浮気したら絶対に別れるって…」
「麻生さん…嫌だ…別れたく無い…」
もうこの時は、既に私も号泣していた。
「私だって別れたく無かったよ…」
2人とも立ち尽くして、そのまま1時間くらい泣いていた。麻生さんは泣き止むと、「ちょっと場所を変えない?」と言って近くの公園に場所を変えて話した。
「ねぇ、あの女性ひとの事、教えてくれない?どうしてそうなったのか、聞きたいの」
 私は包み隠さずに話した。彼女の前夫の事、最初は憐れみで資金援助をしてあげるだけだった事などを話した。
「青山くんらしくて、優しいね…でも…Hしちゃったのよね?」
「すみません…」
「どうして!どうしてよ!私がいるのに、どうしてよ!Hしてなきゃ美談で終わったわ。Hしている時、私の顔が浮かばなかった?私に対して後ろめたい気持ちはあった?」
「勿論です…すみませんでした…」
「謝ることしか出来ないの!?もう無理…もう無理だよ…青山くん…さようなら…」
「麻生さん!嫌だ。何処にも行かないで…失いたく無い…麻生さんを失いたく無い…」
「卑怯だよ!私だって青山くんと別れたく無いし、失いたくなかったよ!でも…どうしても許せない…許せないの。ごめんなさい」
麻生さんは、私の手を振り払うと、振り返らずに去って行ってしまった。
「麻生さん…終わった…うわあぁぁぁ!!」
 それからどうやって自宅アパートに帰ったのか分からない。翌日曜日は引き籠り、何もする気が起こらず寝たきりだった。月曜日も仕事をする気にならず、休んだ。夕方、花井さんのアパートを訪ねると、引っ越ししていて、もぬけの殻だった。
「は、ははは…あははは…。滑稽だ。全て…全て失ったよ…」
 私は花井さんが住んでいたアパートのドアの前で、しゃがみ込んで号泣した。
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