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【第5部〜旧世界の魔神編〜】
第3章 異変①
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私の立てた策を実践する為に、魔王フレイアの居城へと向かった。ショウ・ルゥイさんに城の守りを任せると、魔王ロードも自ら同伴する事になった。まぁ、この2人は義姉妹の契りを交わした仲だ。私の説得が失敗した場合、ロードが何とかしてくれるに違いない。
「見えて来ました!」
ロードの侍従の1人が、間も無くフレイアの居城だと教えてくれた。
「ねぇ?魔王フレイアって、どんな感じなの?怖い?」
「凄い美人で、大人のお姉さんって感じかな?格好が、花魁を思わせる着物美人よ」
「日本人なの?悪魔に人って言うのも変だけど」
「ううん、違うよ。金髪だし、どちらかと言うと、外人さんが着物を着ている感じかな」
地龍が引く龍車で城門を潜り抜けた。
「妙ですね?人の気配が無い。誰もいないなんて事がありますかね?」
侍従達が怪訝な表情で、周囲を見回しながら進んだ。町の住人は誰1人おらず、フレイアの城内まで来た。何だか嫌な予感がする。
「油断するなよ?」
ロードは剣を抜いて身構えながら中に入った。異様な空気が流れ、緊張感が走った。麻生さんは、私の袖を強く握り締めた。怖いのだろう。しかし、城内にも誰かいる気配は無かった。
「何なのだ、これは?」
「不気味だな」
「確かに、誰もいないなんて事、ある?」
奥に入ると、黒焦げになった部屋があり、戦闘の形跡を匂わせた。
「フレイアは、ここで何者かと戦ったのだ」
「すると、負けて住人ごと何処かに連れ去られたのかな?」
「情報が少な過ぎて分からないな」
私達は、フレイアの居城を後にして、魔王クラスタの居城を目指した。だが、クラスタの居城でも誰1人おらず、住人もクラスタも消えていた。ふと目線に何かが入った。
「あれは?」
幼い侍女らしき女の子が、気を失って箱の中にいた。私は意識を回復する魔法で、目覚めさせた。
「一体何があったのだ?」
「キャアァァァ!イヤァー!助けてぇ!!」
女の子は何かに怯えて、気が狂った様に絶叫し、頭を抱えて逃げ惑った。麻生さんが、女の子を抱きしめて宥めると、落ち着いて話し始めた。
「化け物が突然現れて、皆んなを飲み込んだの。クラスタ様も戦ったけど、全く歯が立たず…私を庇って逃してくれたの。クラスタ様も…あいつに喰われた。あいつに…」
思い出して、ガタガタと震え出した。
「クラスタが…クラスタが喰われた…だと?」
ロードは放心状態だった。恐らく、ここの住人もそいつに喰われたのだろう。ならばフレイアも同じく、そいつに?考えがまとまらない。魔王を喰える奴など居るのか?それに、私はこんな未来は知らない。夢で見てはいない。やはり、夢は夢で、同じルートを辿るとは限らないのか?
「ねぇ?フレイアと、ここも襲われたなら次は何処に行くと思う?」
私は自分で口に出して、ハッとした。恐らく敵はロードの居城に向かうはずだ。
「ロード!!」
「分かっている!」
もう既にロードは走り出した。
「皆んな急いで!城の皆んなが危ない!」
城門を出るまでは、空を飛ぶ事が出来ない。ロードは城門を出ると同時に光速移動呪文を唱えて、姿が見えなくなった。私も麻生さんと山下を置いて、先に行く事にした。正直、2人はフレイアやクラスタよりも弱い。魔王2人を喰ったと言う化け物の相手は無理だろう。龍車で後から来てもらった方が安心だと考えた。
ロードの居城に着くと、あちこちから悲鳴が上がっていた。居る、ここに。一体どんな化け物なのだ?城の中に入ると、ショウ・ルゥイさんが戦闘中で、右腕を失い、左手で剣を握っていた。
「ロード様!アナト様!」
敵の姿を初めて捉えた。それは無色透明の姿をしていた。姿を人形や丸になったりと、変化していた。
「まさか、スライム…!?」
信じられない。だが、スライムの中には、体内に取り込んで消化した相手の力やスキルを吸収し、強さが増していくタイプがいると聞いた。魔王2人を喰ったこのスライムの強さは、尋常では無いだろう。
そのスライムは女性の姿を形取ると、ショウ・ルゥイさんに襲い掛かった。火炎や冷気の呪文を唱えて攻撃しているが、ほとんど効果が無い様に思えた。剣での攻撃はスライムには通じない。ショウ・ルゥイさんは、盾代わりに剣を使っていたが、それも強酸によってボロボロになっていた。スライムは身体を変形させて、ショウ・ルゥイさんの右足を掴むと、溶けて切断された。透明な身体に、切断された右足が消化されて行くのが見える。
「こいつ!」
ロードが剣帝の剣技で斬りかかったが、全くダメージを受けていない。超神速の斬撃を繰り出していたが、細切れにする事も出来なかった。
「信じられない強さだ」
鬱陶しいとばかりに、無造作に手を跳ね上げると、ロードは防御で受けた左腕を失って吹き飛ばされた。その左腕を吸収すると、落ちていた剣を拾って構えた。
「何のつもりだ!?」
ロードは斬りかかると、スライムも全く同じ動きを見せた。私の模倣とは違う。このスライムは、消化した相手のスキルを手に入れるのだ。剣では互角だったが、スライムは隙を突いてロードの下半身に巻き付くと、溶かして身体を切断した。
「無念…」
目の前でロードは取り込まれ、消化されて行く。私はただ黙って見ていた訳では無い。魔法で攻撃していたが、ほとんど効果がない。恐らくフレイアを取り込んで、魔法の抵抗値が上がっているのだろう。
ロードをほとんど消化したスライムは、今度は私に襲い掛かって来た。自動回復がかかっている私の回復量を上回ったダメージを受ける。
「嘘でしょう?私はテンダラースなのよ?唯一神にも勝った最強の神よ。それなのに…」
それなのに、たかがスライム如きに全く歯が立たずに惨敗する事になるとは。片手、片足を失ったショウ・ルゥイさんがスライムの攻撃から庇った。
「逃げて…」
ショウ・ルゥイさんもスライムによって取り込まれ、消化されて行く。私は泣きながらその場を全力で去った。逃げる事しか出来ない、自分の無力さが悔しくて泣いた。
こちらに向かって龍車を走らせていた、麻生さん達の前に出て止まらせた。
「どうしたの?」
「皆んな…皆んな死んだ…皆んな食べられた。私は自分だけ助かる為に逃げて来た…うわぁぁぁん」
ここは危険だと察して、来た道を引き返した。城民を残らず食べたのなら、もうこの城には来ないだろうと、クラスタの居城に戻った。
私は泣きじゃくりながら、自分の無力さを嘆き、私を逃す為にショウ・ルゥイさんがスライムに消化された事を話した。
「信じられないね。スライムって言ったらRPGの序盤で出てくる雑魚モンスターよね?」
「ゲームのせいで、そんなイメージが定着しているけど、物理攻撃は完全に無効な上に、体内は強酸と言うか、全てを消化する体液で出来ている難敵だよ。その上に、喰った相手の能力を得るタイプの種がいる。あいつがそうだ。最悪な事に魔王が3人も喰われた。今のあいつがどれほど強いのか分からない。魔法もほとんど効かない化け物だ」
皆んな暗い顔をして、打つ手無しに頭を悩ませた。今夜の所はゆっくり身体を休める事にして、明日また対策を練る事にした。
「見えて来ました!」
ロードの侍従の1人が、間も無くフレイアの居城だと教えてくれた。
「ねぇ?魔王フレイアって、どんな感じなの?怖い?」
「凄い美人で、大人のお姉さんって感じかな?格好が、花魁を思わせる着物美人よ」
「日本人なの?悪魔に人って言うのも変だけど」
「ううん、違うよ。金髪だし、どちらかと言うと、外人さんが着物を着ている感じかな」
地龍が引く龍車で城門を潜り抜けた。
「妙ですね?人の気配が無い。誰もいないなんて事がありますかね?」
侍従達が怪訝な表情で、周囲を見回しながら進んだ。町の住人は誰1人おらず、フレイアの城内まで来た。何だか嫌な予感がする。
「油断するなよ?」
ロードは剣を抜いて身構えながら中に入った。異様な空気が流れ、緊張感が走った。麻生さんは、私の袖を強く握り締めた。怖いのだろう。しかし、城内にも誰かいる気配は無かった。
「何なのだ、これは?」
「不気味だな」
「確かに、誰もいないなんて事、ある?」
奥に入ると、黒焦げになった部屋があり、戦闘の形跡を匂わせた。
「フレイアは、ここで何者かと戦ったのだ」
「すると、負けて住人ごと何処かに連れ去られたのかな?」
「情報が少な過ぎて分からないな」
私達は、フレイアの居城を後にして、魔王クラスタの居城を目指した。だが、クラスタの居城でも誰1人おらず、住人もクラスタも消えていた。ふと目線に何かが入った。
「あれは?」
幼い侍女らしき女の子が、気を失って箱の中にいた。私は意識を回復する魔法で、目覚めさせた。
「一体何があったのだ?」
「キャアァァァ!イヤァー!助けてぇ!!」
女の子は何かに怯えて、気が狂った様に絶叫し、頭を抱えて逃げ惑った。麻生さんが、女の子を抱きしめて宥めると、落ち着いて話し始めた。
「化け物が突然現れて、皆んなを飲み込んだの。クラスタ様も戦ったけど、全く歯が立たず…私を庇って逃してくれたの。クラスタ様も…あいつに喰われた。あいつに…」
思い出して、ガタガタと震え出した。
「クラスタが…クラスタが喰われた…だと?」
ロードは放心状態だった。恐らく、ここの住人もそいつに喰われたのだろう。ならばフレイアも同じく、そいつに?考えがまとまらない。魔王を喰える奴など居るのか?それに、私はこんな未来は知らない。夢で見てはいない。やはり、夢は夢で、同じルートを辿るとは限らないのか?
「ねぇ?フレイアと、ここも襲われたなら次は何処に行くと思う?」
私は自分で口に出して、ハッとした。恐らく敵はロードの居城に向かうはずだ。
「ロード!!」
「分かっている!」
もう既にロードは走り出した。
「皆んな急いで!城の皆んなが危ない!」
城門を出るまでは、空を飛ぶ事が出来ない。ロードは城門を出ると同時に光速移動呪文を唱えて、姿が見えなくなった。私も麻生さんと山下を置いて、先に行く事にした。正直、2人はフレイアやクラスタよりも弱い。魔王2人を喰ったと言う化け物の相手は無理だろう。龍車で後から来てもらった方が安心だと考えた。
ロードの居城に着くと、あちこちから悲鳴が上がっていた。居る、ここに。一体どんな化け物なのだ?城の中に入ると、ショウ・ルゥイさんが戦闘中で、右腕を失い、左手で剣を握っていた。
「ロード様!アナト様!」
敵の姿を初めて捉えた。それは無色透明の姿をしていた。姿を人形や丸になったりと、変化していた。
「まさか、スライム…!?」
信じられない。だが、スライムの中には、体内に取り込んで消化した相手の力やスキルを吸収し、強さが増していくタイプがいると聞いた。魔王2人を喰ったこのスライムの強さは、尋常では無いだろう。
そのスライムは女性の姿を形取ると、ショウ・ルゥイさんに襲い掛かった。火炎や冷気の呪文を唱えて攻撃しているが、ほとんど効果が無い様に思えた。剣での攻撃はスライムには通じない。ショウ・ルゥイさんは、盾代わりに剣を使っていたが、それも強酸によってボロボロになっていた。スライムは身体を変形させて、ショウ・ルゥイさんの右足を掴むと、溶けて切断された。透明な身体に、切断された右足が消化されて行くのが見える。
「こいつ!」
ロードが剣帝の剣技で斬りかかったが、全くダメージを受けていない。超神速の斬撃を繰り出していたが、細切れにする事も出来なかった。
「信じられない強さだ」
鬱陶しいとばかりに、無造作に手を跳ね上げると、ロードは防御で受けた左腕を失って吹き飛ばされた。その左腕を吸収すると、落ちていた剣を拾って構えた。
「何のつもりだ!?」
ロードは斬りかかると、スライムも全く同じ動きを見せた。私の模倣とは違う。このスライムは、消化した相手のスキルを手に入れるのだ。剣では互角だったが、スライムは隙を突いてロードの下半身に巻き付くと、溶かして身体を切断した。
「無念…」
目の前でロードは取り込まれ、消化されて行く。私はただ黙って見ていた訳では無い。魔法で攻撃していたが、ほとんど効果がない。恐らくフレイアを取り込んで、魔法の抵抗値が上がっているのだろう。
ロードをほとんど消化したスライムは、今度は私に襲い掛かって来た。自動回復がかかっている私の回復量を上回ったダメージを受ける。
「嘘でしょう?私はテンダラースなのよ?唯一神にも勝った最強の神よ。それなのに…」
それなのに、たかがスライム如きに全く歯が立たずに惨敗する事になるとは。片手、片足を失ったショウ・ルゥイさんがスライムの攻撃から庇った。
「逃げて…」
ショウ・ルゥイさんもスライムによって取り込まれ、消化されて行く。私は泣きながらその場を全力で去った。逃げる事しか出来ない、自分の無力さが悔しくて泣いた。
こちらに向かって龍車を走らせていた、麻生さん達の前に出て止まらせた。
「どうしたの?」
「皆んな…皆んな死んだ…皆んな食べられた。私は自分だけ助かる為に逃げて来た…うわぁぁぁん」
ここは危険だと察して、来た道を引き返した。城民を残らず食べたのなら、もうこの城には来ないだろうと、クラスタの居城に戻った。
私は泣きじゃくりながら、自分の無力さを嘆き、私を逃す為にショウ・ルゥイさんがスライムに消化された事を話した。
「信じられないね。スライムって言ったらRPGの序盤で出てくる雑魚モンスターよね?」
「ゲームのせいで、そんなイメージが定着しているけど、物理攻撃は完全に無効な上に、体内は強酸と言うか、全てを消化する体液で出来ている難敵だよ。その上に、喰った相手の能力を得るタイプの種がいる。あいつがそうだ。最悪な事に魔王が3人も喰われた。今のあいつがどれほど強いのか分からない。魔法もほとんど効かない化け物だ」
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