その日、女の子になった私。

奈津輝としか

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【第8.5部〜アイドル編2】

第4話 大和に一服盛られる

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 大トリのGENERATIONSが終わると、スタジオに全アーティストが集まって来た。エンディングの撮影だ。私もsweet Starsのメンバーの元に戻った。
 「OKでーす!」とADの声が掛かると、足早に帰って行く人、ゆっくりと歩いて楽屋に戻る人など様々だ。私はGENERATIONSを目で追い、潤を見つけて笑顔でその背中を見ていると、背後から声を掛けられた。
「何?Mizukiちゃん、綾瀬の事が好きなの?」
「大和さん!ううん、違います。知り合いで好きな人がいて、ちょっと興味があっただけです」
 大和と潤は前回、私を取り合って殺し合いにまで発展した。潤の安全を確保出来るまでは、私の潤への恋心を知られる訳にはいかない。
「その知り合いに言っときなよ。イケ好かない、スカした奴だってね」
 本当、バチバチだよね、この2人は。
「あ、綾瀬さん!今度、お話したい事があって、都合の良い時で構いません」
 潤は私を値踏みする様な目で見て来た。なるほど、ちょっとクールで怖い感じだ。最初ってこんな感じだったっけ?
「別に、今なら都合が良いけど?」
「今は、こっちの都合が悪いんだよ!Mizukiちゃんは今から俺とデートなんだよ!」
「知るかよ!その女が俺に声掛けて来たんだ」
 2人は、掴み掛かり合いになりそうだった。
「止めて!喧嘩しないで。同じグループじゃないの。仲間でしょう?」
「コイツを仲間と思った事は無い!」
 2人同時に声がハモったので、私は思わず笑い出してしまった。
「チッ」
 潤は気分悪そうにして、その場を去ってしまった。
「綾瀬さーん、ごめんなさい。また今度、お願いします!」
 潤が振り返ったので手を振ると、首を横に振って去った。
「何だ?やっぱりアイツの事が好きなんじゃないか!」
 私は殴られるんじゃないかと思うくらい、大和は不機嫌さMAXの表情をして詰め寄られた。
「もしかして、仲が悪いんですか?」
 私は馬鹿を装って聞いてみた。
「仲が良い様には見えないだろう?」
 私は大和の右腕を掴んで、上目遣いで聞いた。
「お腹空いたな。何処に連れて行ってくれるんですか?」
「あ?ああ…ちょっと待ってね…」
 大和は少し機嫌が良くなった。
「裏の駐車場で待っててよ。直ぐに行くから」
「はい、待ってます」
 大和は今をときめくNo. 1アイドルで、3年連続で抱かれたい男性芸能人1位だ。恐らく、自分が抱けない女性なんて存在しないと思っているに違いない。
 だから私も他の女の子達と同じく、大和に誘われて浮かれてヤレる女だと思われている。だけどそうはいかない。上手く回避する必要がある。力づくで押し倒された場合は、手加減出来なくて殺しちゃうかも知れないなとか思っていると、大和がクラクションを鳴らして目の前に停まった。
 大和は紳士ぶって車から降りると、助手席のドアを開けてくれた。
「有難う御座います♪」
 車に詳しく無いので、車種は分からないけどベンツだった。
「はい、Mizukiちゃん」
 左手を差し出して来て、強引に恋人繋ぎをされた。
「やっとMizukiちゃんに触れたよ」
「H、どうせ皆んなにも言ってるんでしょう?」
「ははは、言うほど俺、軽く無いからね?」
 車の中で他愛の無い話をしていると、目的地に着いた。
「ここは…」
 知っている。芸能人御用達の個室がある料理屋だ。異性同伴の場合、ラブホ代わりに使用する目的で来店される事を店側は承知しているので、呼ばれるまでは絶対に個室には近寄って来ない。
 ここに連れ込まれたと言う事は、完全に私を抱くつもりだ。まさか私にお見通しだとは知らない大和は、私にその気配を察知されて警戒されない様に、テンション高めで話して来る。
 そしてアルコール度数の高いお酒をすすめて来たけど、「私、まだ16歳なのでお酒は…」と言うと、オレンジジュースを出してくれた。
 この個室ではバーの様に、自分でお酒やジュースなどの飲み物を注ぐ。だから薬を盛るチャンスが生まれるのだ。警戒心の薄い女の子なら簡単にヤラレちゃうだろう。
 料理も自動で送られて来るので、小窓を開けて器ごと料理を取り出す。だから、誰にも見られる心配は無いのだ。
 大和が予め注文していたのだろう、次々と料理が送られて来る。それを丁寧に私のテーブルに並べてくれた。
「Mizukiちゃんとの出会いに感謝して、乾杯!」
「乾杯!」
 私が大和のファンだったなら、これでメロメロだったんだろうな?と思う。
 最初にサラダとスープを頂くと、フォークでくるくる巻きにされた一口くらいのパスタが出て来た。高級なお店ほど出て来る量は少ないイメージだ。パスタの上にはキャビアが乗っていた。そう言えばキャビアは、前ループで初めて食べて感動した味だったな、とか思い出しながら口にした。
「美味しい!」
 思わず絶叫してしまった。
「美味しいかい?喜んでくれて嬉しいよ」
 私が楽しそうに食事をしているのを見て、大和も嬉しそうだった。メインのステーキは、力を入れて無いのにナイフがスーッと入って切れた。ソースがかかっている所と、胡椒がかかっている所と2ヶ所あり、先ずは胡椒側を食べようと切ったのだ。
 それを口に運ぶと、ブラックペッパーの程よい香りと辛味が舌に乗り、肉汁がジュワッと口の中一杯に広がったかと思ったら、溶けて無くなった。肉が溶けるって何よ?と思ったが、実際にそれ以外の表現は見つからなかった。高い良いお肉だって事は分かる。
 ソースの方は正直、何を混ぜて作られたものか分からなかったが、甘辛くてご飯がすすむ感じだ。
「Mizukiちゃん、ここの部分を見て」
「?」
「ここには敢えて、ソースも胡椒もかかって無いんだ。そこにこの店自慢の岩塩を少しかけてみて。絶品だよ。本当に美味い肉は、塩だけで十分だ」
 私も真似をして食べてみた。
「美味しい…」
 それ以上は声が出なかった。岩塩が肉の旨味を引き立たせていた。噛めば噛むほどに肉の旨味が口の中に広がる。
 メインを堪能すると、大和は立ち上がってドリンクを追加してくれた。
“睡眠薬の成分を検知しましたが、無効化しました”
 頭の中にアラームが響いた。苛立って思わず大和を睨み付けてしまった。折角楽しく食事をしていたのに全部ぶち壊しだよ、と思ったので、感情を抑え切れなくて表に出してしまった。
「喉が渇いちゃって、もう一杯欲しいです。今度はジンジャーエールが良いな」
「ジンジャーエール好きなの?」
「はい、好きです」
 大和が注ぎに行ってくれている間に、呪文を唱えた。
睡眠毒スリープポイズン
 大和が戻って来たので、乾杯を促した。
「大和さん、乾杯しよう!」
 一気飲みをすると、大和も続いてグラスの中を飲み干した。
「あれ?そんなに…飲んだ…かな?目が…」
 最後まで言う力も無く、眠気に襲われてテーブルにうつ伏せになると、直ぐに寝息を立てた。
「ふう~。危なかったわ」
 私はカウンターに行ってグラスに氷を入れ、紅茶を注いで飲んだ。一息ついて、個室から出ると、そのまま店も出て帰った。
「まぁ、怒らないよね?寝ちゃってるんだもんね。起こしても反応が無いから帰ったと言おう。まだメール交換もしてないし」
 私はタクシーを止めて乗り込んだ。
「センター南と北の間なので、案内します」
 タクシーに目的地を告げると、時計は23時31分を指していた。
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