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【第9部〜巨人の王国編〜】
第20話 大魔王ルシファー
争うつもりが無かった吸血鬼達と戦う羽目になり、真祖の第5位階と第6位階を殺してしまった。第3位階のバートリから復讐される恐れがあるので、夜陰には出られなくなってしまった。
項羽はバートリを圧倒していたが、あれは昼間だったからだ。吸血鬼は、闇夜こそ力を得る。夜に襲われれば、項羽も勝てないかも知れない。
「義妹妹、元気か?」
そんな時に現れたのがルシフェル、明けの明星と呼ばれた大魔王ルシファーだ。今は再び大天使長の座に戻り、実妹のミカエルと共に天界にいるはずであった。
「大哥(兄さん)!」
ルシフェルと義兄妹の様に育ったのは、私ではなく瑞稀の方だ。しかし、早いうちから私の事をアナトと同じと認めてくれ、私の事も義妹と呼んでくれていた。
ルシフェルは実妹のミカエルと愛し合っており、兄妹で交際している。アナトとも付き合っていた事がある為、私にも優しく接してくれる。
魔王達に緊張の色が見えた。それは当然だろう。アナトが魔界を再統一して女帝となる前は、ルシファーが皇帝として君臨していたからだ。
「ルシファー陛下に拝謁!」
「良い!俺はもう魔界の皇帝では無いし、ルシファーではなくルシフェルだ」
私は一緒に戦ってくれるつもりで、来てくれたのかと聞いた。
「違うな。お前達がバートリと戦ったと聞いたので来たのだ」
「どうして?」
「バートリとは知り合いでな。争いを仲裁しに来たのだ」
ただし、2人だけで行く必要がある。魔王達は、ルシフェルが一緒なら安心だと承知した。
「厳密には2人では無い」
そう言って私の肩に目配せすると、小蠅が止まっていた。
「まさかベルゼブブ?」
「そうだ。俺がバートリといる時に、お前を守る者が必要だ」
ルシフェルが飛んだので、私も慌てて後をついて飛んだが、早過ぎて追い付けずにいると、速度を落として手を差し伸べたので、手を繋いで飛んだ。
こんな所を嫉妬深いミカエルに見られたら、ブチ切れられるに違いない。こう言う人を天然のタラシと言うのだろう。胸が高鳴り、ドキドキした。高さん、ごめんなさいと、心の中で謝った。
再びバートリの居城に来ると、直ぐに現れた。
「ルシファー?そんな、来て下さるなら此方から参りましたのに…」
ルシフェルは、恭しくバートリの左手を取ると、手の甲に軽くキスをした。バートリは白い顔を赤らめて、ルシフェルに腕を絡めて話しながら何処かに行ってしまった。
「はぁ?何なのアレ?全然態度が違うじゃないの。乙女じゃん…」
「バートリは、ルシファー陛下に恋焦がれているのですよ」
「まぁ、それは見れば分かるけど…」
知り合いだったのか?まぁ、魔界を統べていたのだ。真祖も闇の世界に住む者だから面識があっても不思議では無い。
「2人だけで話し合いかぁ。どのくらい待てば良いのかな?」
ベルゼブブは、小蝿から元の姿に戻って現れた。
「そうですね2時間、いえ、バートリは簡単には離してくれないでしょうから、朝までかかるかも知れませんね。まぁ、ゆっくり寛がせて貰いましょう」
ベルゼブブは含み笑いを浮かべた。
「待って、まさか、それって…」
「ええ、ルシファー陛下はバートリを抱いているのですよ」
何だって!?
「えっと…」
「貴女の為だと分かるでしょう?バートリは執念深い。1度恨まれたら、執拗に生命を狙われる事になります。バートリはルシファー陛下の言う事は何でも聞きますが、今回は真祖2人を殺してしまったので、交渉のスタートラインに立つ為にも、ご機嫌を取る必要があったのです」
バートリも女だ。大哥(義兄さん)の様なイケメンに抱かれて、悦び喘いでいるに違いない。高さんがいるのに、チクリと胸が痛んだ。これは嫉妬の感情だ。
「ミカエルが知ったら、殺されるわよ?」
「だから黙っていて下さいね」
怒り狂ったミカエルには絶対に勝てないだろう。それはバートリも同じだ。もしこの浮気現場に乗り込んで来たら、大哥を除いて皆殺しにされる。
私は、早く終わって!と心の中で祈った。
「少し城内を歩きましょうか?」
「良いの?勝手に…」
立ち上がった私の動きに反応して、吸血鬼達が殺気立つ。
「気にしない、気にしない。我々は、バートリが愛するルシファー陛下の付添人ですよ。害する真似なんてしたら、彼らがバートリに殺されるでしょう?」
蝿の王と呼ばれるベルゼブブは、元はバァル神と言う慈愛の神で、唯一神ヤハウェの長男。つまり、豊穣の女神アナトの実の兄だ。妹の美しさに惚れて、3人の兄弟で殺し合いを始めて妹を奪い、犯して妻にした。
その後、アナトは逃げる様にして天界から地上に降りて人間の暮らしを始めた。やがて人間達がヤハウェの怒りを買い、絶滅宣言を受ける。
ルシフェルやバァルは、アナトが天界に戻るまで待って欲しいと奏上したが聞き入れられなかった為、謀叛を起こした。
しかし多勢に無勢で神々の軍勢に敗れ、ルシフェルの輝く12枚の羽のほとんどが破れて失い、魔界へと堕とされた。
バァルは、その力を恐れた父ヤハウェによって身体を引き裂かれ、上半身はベルゼブブに、下半身はバェルとなり、魔界に堕とされた。魔界とは、天界の犯罪者の流刑地であり、牢獄でもあった。
「忌々しい蝿め…」
1人の吸血鬼が、ベルゼブブにわざと聞こえる様に言った。私は争いにならないかとヒヤヒヤした。
「くっ、くくく…」
「何がおかしい?」
ゾクッ。殺気ではなく、冷気を纏っていた。これは高濃度で純度の高い魔力だ。
私は冷や汗が出た。ベルゼブブもバートリより強い。それも遥か格上だ。魔力だけで、そう感じた。
睨み付けられると、吸血鬼は腰を抜かして命乞いをした。ベルゼブブはそれを横目で見ながら、無言で私の方に向き直った。
「では、行きましょうか?」
「えっ?えぇ…」
半身でこの強さだ。元のバァルに戻ったら、どれほど強いのだろうか?ベルゼブブに手を握られて、城内を月明かりの下で歩いていると、まるでデートみたいだと感じた。
項羽はバートリを圧倒していたが、あれは昼間だったからだ。吸血鬼は、闇夜こそ力を得る。夜に襲われれば、項羽も勝てないかも知れない。
「義妹妹、元気か?」
そんな時に現れたのがルシフェル、明けの明星と呼ばれた大魔王ルシファーだ。今は再び大天使長の座に戻り、実妹のミカエルと共に天界にいるはずであった。
「大哥(兄さん)!」
ルシフェルと義兄妹の様に育ったのは、私ではなく瑞稀の方だ。しかし、早いうちから私の事をアナトと同じと認めてくれ、私の事も義妹と呼んでくれていた。
ルシフェルは実妹のミカエルと愛し合っており、兄妹で交際している。アナトとも付き合っていた事がある為、私にも優しく接してくれる。
魔王達に緊張の色が見えた。それは当然だろう。アナトが魔界を再統一して女帝となる前は、ルシファーが皇帝として君臨していたからだ。
「ルシファー陛下に拝謁!」
「良い!俺はもう魔界の皇帝では無いし、ルシファーではなくルシフェルだ」
私は一緒に戦ってくれるつもりで、来てくれたのかと聞いた。
「違うな。お前達がバートリと戦ったと聞いたので来たのだ」
「どうして?」
「バートリとは知り合いでな。争いを仲裁しに来たのだ」
ただし、2人だけで行く必要がある。魔王達は、ルシフェルが一緒なら安心だと承知した。
「厳密には2人では無い」
そう言って私の肩に目配せすると、小蠅が止まっていた。
「まさかベルゼブブ?」
「そうだ。俺がバートリといる時に、お前を守る者が必要だ」
ルシフェルが飛んだので、私も慌てて後をついて飛んだが、早過ぎて追い付けずにいると、速度を落として手を差し伸べたので、手を繋いで飛んだ。
こんな所を嫉妬深いミカエルに見られたら、ブチ切れられるに違いない。こう言う人を天然のタラシと言うのだろう。胸が高鳴り、ドキドキした。高さん、ごめんなさいと、心の中で謝った。
再びバートリの居城に来ると、直ぐに現れた。
「ルシファー?そんな、来て下さるなら此方から参りましたのに…」
ルシフェルは、恭しくバートリの左手を取ると、手の甲に軽くキスをした。バートリは白い顔を赤らめて、ルシフェルに腕を絡めて話しながら何処かに行ってしまった。
「はぁ?何なのアレ?全然態度が違うじゃないの。乙女じゃん…」
「バートリは、ルシファー陛下に恋焦がれているのですよ」
「まぁ、それは見れば分かるけど…」
知り合いだったのか?まぁ、魔界を統べていたのだ。真祖も闇の世界に住む者だから面識があっても不思議では無い。
「2人だけで話し合いかぁ。どのくらい待てば良いのかな?」
ベルゼブブは、小蝿から元の姿に戻って現れた。
「そうですね2時間、いえ、バートリは簡単には離してくれないでしょうから、朝までかかるかも知れませんね。まぁ、ゆっくり寛がせて貰いましょう」
ベルゼブブは含み笑いを浮かべた。
「待って、まさか、それって…」
「ええ、ルシファー陛下はバートリを抱いているのですよ」
何だって!?
「えっと…」
「貴女の為だと分かるでしょう?バートリは執念深い。1度恨まれたら、執拗に生命を狙われる事になります。バートリはルシファー陛下の言う事は何でも聞きますが、今回は真祖2人を殺してしまったので、交渉のスタートラインに立つ為にも、ご機嫌を取る必要があったのです」
バートリも女だ。大哥(義兄さん)の様なイケメンに抱かれて、悦び喘いでいるに違いない。高さんがいるのに、チクリと胸が痛んだ。これは嫉妬の感情だ。
「ミカエルが知ったら、殺されるわよ?」
「だから黙っていて下さいね」
怒り狂ったミカエルには絶対に勝てないだろう。それはバートリも同じだ。もしこの浮気現場に乗り込んで来たら、大哥を除いて皆殺しにされる。
私は、早く終わって!と心の中で祈った。
「少し城内を歩きましょうか?」
「良いの?勝手に…」
立ち上がった私の動きに反応して、吸血鬼達が殺気立つ。
「気にしない、気にしない。我々は、バートリが愛するルシファー陛下の付添人ですよ。害する真似なんてしたら、彼らがバートリに殺されるでしょう?」
蝿の王と呼ばれるベルゼブブは、元はバァル神と言う慈愛の神で、唯一神ヤハウェの長男。つまり、豊穣の女神アナトの実の兄だ。妹の美しさに惚れて、3人の兄弟で殺し合いを始めて妹を奪い、犯して妻にした。
その後、アナトは逃げる様にして天界から地上に降りて人間の暮らしを始めた。やがて人間達がヤハウェの怒りを買い、絶滅宣言を受ける。
ルシフェルやバァルは、アナトが天界に戻るまで待って欲しいと奏上したが聞き入れられなかった為、謀叛を起こした。
しかし多勢に無勢で神々の軍勢に敗れ、ルシフェルの輝く12枚の羽のほとんどが破れて失い、魔界へと堕とされた。
バァルは、その力を恐れた父ヤハウェによって身体を引き裂かれ、上半身はベルゼブブに、下半身はバェルとなり、魔界に堕とされた。魔界とは、天界の犯罪者の流刑地であり、牢獄でもあった。
「忌々しい蝿め…」
1人の吸血鬼が、ベルゼブブにわざと聞こえる様に言った。私は争いにならないかとヒヤヒヤした。
「くっ、くくく…」
「何がおかしい?」
ゾクッ。殺気ではなく、冷気を纏っていた。これは高濃度で純度の高い魔力だ。
私は冷や汗が出た。ベルゼブブもバートリより強い。それも遥か格上だ。魔力だけで、そう感じた。
睨み付けられると、吸血鬼は腰を抜かして命乞いをした。ベルゼブブはそれを横目で見ながら、無言で私の方に向き直った。
「では、行きましょうか?」
「えっ?えぇ…」
半身でこの強さだ。元のバァルに戻ったら、どれほど強いのだろうか?ベルゼブブに手を握られて、城内を月明かりの下で歩いていると、まるでデートみたいだと感じた。
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