その日、女の子になった私。

奈津輝としか

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【第9部〜巨人の王国編〜】

第24話 怪しいくもゆき

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「うあっ」
「遅い!」
 バートリは麻里奈の剣を、鋭く伸ばした爪で弾き、その背中を手刀で打った。麻里奈はバランスを崩して床に倒れた。
 影歩法と言うのも良く分からない。バートリの体術に翻弄ほんろうされ、ろくに剣を合わせる事も出来ない。
「ホホホ、わらわのは見よう見真似で、ならった訳ではないぇ。まずはわらわを、1度でも良いから床に転がしてみよ」
 バートリと麻里奈が修行をしている頃、中南海の最期指導部メンバー達は夜通し会議を開いていた。

「白面は、まだ見つからんのか?」
 ヤンは、苦虫を噛み潰した様な顔をして聞いた。
「先日、魔族が結界内に入ったとの報告を受けている。白面が魔族を引き入れたのであれば、白面の正体はアナトで間違い無いだろう?死んで無かったのだ」
「何度も言わすな!この目で塵も残さず消えたのを見たのだ。生きているはずがない!」
「まぁ、まぁ。この際どちらでも良いでしょう?全員殺せば済む話だ」
 ヤン主席は、ジロリと睨んで言った。
「奴らを軽く見るなよ?」
「ははははは。こいつは驚いた。ヤンさん、いやダゴン王の言葉とは思えませんな」
「そうとも、魔族など我らから見ればヒヨッコも同然。軽く捻り潰してくれるわ」
 リウは鼻息が荒く、早く戦いたくて仕方なさそうだった。
ヤンさんの言葉が理解出来なかったのか?魔族にはルシフェルとバァルがいるんだぞ」
 ガオリウたしなめた。
「あぁ、我らと同族のか?」
「だが2人だけで何が出来る?後は雑魚だろ?」
「その雑魚は私に頂戴。楽しませてもらうわ、あははは」
 それぞれが好き勝手に言い、勝手に行動しようとしていた。ガオは、1人ずつ的に掛けられれば、一溜りも無いなと危機感を募らせた。
 結局この日の会議も、ろくに話が纏まる事がなく散会した。
「ふぅ。我々は自我が強過ぎて、自惚れが強く、他種族を見下している。きっと近いうちに足元を掬われるに違いない」
(麻里奈…僕はアナトの死には関わってはいないが、それでもキミは僕を仇だと狙うのだろうか?キミに殺されるなら本望だ)
 ガオが邸宅に戻ると、奇妙な気配を感じた。およそ常人では感じ取る事が出来なかったであろう。
「嘘だろう?麻里奈!麻里奈、いるのか?」
 麻里奈が使っていた寝室に入ったが、そこには誰もおらず落胆した。
(!?)
 部屋に入った時から違和感を感じていた。何とも言えない奇妙な感じだ。
「おい、誰かいるか!?」
 呼ばれて入って来たのは、かつて麻里奈の侍女として世話係だったメイドだった。
「はい、お呼びでしょうか?ご主人様」
「この部屋には入るなと言っていたな?ボクに無断で入って掃除をしているのか?」
 メイドは平伏すると、額を床に擦り付けて否定した。
「滅相も御座いません。お言い付け通り、この部屋には手を付けず、麻里奈様がお屋敷を去られてからは、入室も致しておりません」
「それなら、他の者が入ったのか?」
「それは御座いません」
「なぜだ?」
「この部屋には近づくなとキツく命じておりますので…」
「そうか、なら良い。すまなかったな。下がって良い」
 メイドが退室すると、机やテーブルの上を指でなぞった。
「埃どころか塵1つ無い。麻里奈…ここにいるのか?だとすると、闇魔法の影の部屋シャドウルームに違いない」
 ガオはそう推測したが、闇魔法が使えない彼にはどうしようもなかった。
「麻里奈…」
 私の名前を呟く彼の姿を影の世界から見ていて、居た堪れなくなった私が出て行こうとすると、ロードが肩を掴んで首を横に振って制止した。
「出て行かないから、2人っきりにさせて」
 ロードは気を使って退室した。私は影の世界からガオさんを見ていた。
「こんなにすぐ近くに居るのに、遠いね…」
(私からは貴方が見えているのに、貴方からは私が見えない。切なすぎる)
 心が張り裂けそうで、涙を流して泣き終わり冷静になって来ると、こちら側から一方的に見ているのは、傍目はためから見ると、私のしている事はストーカーなのでは?と思い、赤面してベッドに横になって布団を被った。
「そんなつもりは無くても、やってる事はストーカーだわ…」
 恋愛って難しい、改めてそう感じた。

陛下ビーシャア陛下ビーシャア!」
 いつの間にかに寝落ちしていて、ドアをノックされて目が覚めた。
「はーい!寝てたから待って。どうしたの?」
 ベッドから起き上がり、乱れた衣服を整えてドアに向かった。
陛下ビーシャア、大変です!」
「どうしたのよ!?」
 フィーロの報告を聞いた私は、血相を変えて広間へと走った。
「一体何があったの?」
 息を切らせた私の目に飛び込んだのは、変わり果てたハルバートの姿だった。
皇上ホワンシィァンには刺激が強過ぎる。何故お呼びしたのだフィーロ」
「フィーロを責めないで!何があったの?」
 ハルバートは巨躯に似合わず俊敏で、寡黙な武人だった。そのタフさから、常に前衛のタンク的な役割を担っていた。そのハルバートの手足、胴までもが捻られて殺害されていた。
「このハルバートをこんなにするとは、相手は余程の怪力に違いない」
「ちょっと待って!皆んなどうかしているんじゃないの?」
 ハルバートの死を悲しむどころか、冷静に分析し出す神経が信じられなかった。
陛下ビーシャア、我々は魔族です。感傷に浸る前にするべき事があります」
「するべき事?」
「復讐ですよ。皆んな口には出さないですが、悲しんでます。ですが、泣いてどうなりますか?それで生き返るのですか?我々に出来る事は、ハルバートの無念を晴らす事だけです。ハルバートの霊前に、下手人から引き摺り出した心臓を捧げ、霊を弔います」
 アーシャに強めの口調で反論され、私はグーの根も出なかった。ロードは、言い過ぎだとアーシャを睨んだ。アーシャは小さく溜息を吐いて、退室しようとした。
「待って、行かないで!アーシャが正しい。ハルバートの仇を必ず討つわよ!」
 ハルバートは10人しかいない魔王の1人だ。それがこうも容易く倒されるとは、敵は当然ながら最高指導部メンバーの中にいると考えられた。
 
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