322 / 375
【第9部〜巨人の王国編〜】
第24話 怪しいくもゆき
しおりを挟む
「うあっ」
「遅い!」
バートリは麻里奈の剣を、鋭く伸ばした爪で弾き、その背中を手刀で打った。麻里奈はバランスを崩して床に倒れた。
影歩法と言うのも良く分からない。バートリの体術に翻弄され、ろくに剣を合わせる事も出来ない。
「ホホホ、妾のは見よう見真似で、倣った訳ではないぇ。まずは妾を、1度でも良いから床に転がしてみよ」
バートリと麻里奈が修行をしている頃、中南海の最期指導部メンバー達は夜通し会議を開いていた。
「白面は、まだ見つからんのか?」
楊は、苦虫を噛み潰した様な顔をして聞いた。
「先日、魔族が結界内に入ったとの報告を受けている。白面が魔族を引き入れたのであれば、白面の正体はアナトで間違い無いだろう?死んで無かったのだ」
「何度も言わすな!この目で塵も残さず消えたのを見たのだ。生きているはずがない!」
「まぁ、まぁ。この際どちらでも良いでしょう?全員殺せば済む話だ」
楊主席は、ジロリと睨んで言った。
「奴らを軽く見るなよ?」
「ははははは。こいつは驚いた。楊さん、いやダゴン王の言葉とは思えませんな」
「そうとも、魔族など我らから見ればヒヨッコも同然。軽く捻り潰してくれるわ」
劉は鼻息が荒く、早く戦いたくて仕方なさそうだった。
「楊さんの言葉が理解出来なかったのか?魔族にはルシフェルとバァルがいるんだぞ」
高は劉を嗜めた。
「あぁ、我らと同族のか?」
「だが2人だけで何が出来る?後は雑魚だろ?」
「その雑魚は私に頂戴。楽しませてもらうわ、あははは」
それぞれが好き勝手に言い、勝手に行動しようとしていた。高は、1人ずつ的に掛けられれば、一溜りも無いなと危機感を募らせた。
結局この日の会議も、ろくに話が纏まる事がなく散会した。
「ふぅ。我々は自我が強過ぎて、自惚れが強く、他種族を見下している。きっと近いうちに足元を掬われるに違いない」
(麻里奈…僕はアナトの死には関わってはいないが、それでもキミは僕を仇だと狙うのだろうか?キミに殺されるなら本望だ)
高が邸宅に戻ると、奇妙な気配を感じた。およそ常人では感じ取る事が出来なかったであろう。
「嘘だろう?麻里奈!麻里奈、いるのか?」
麻里奈が使っていた寝室に入ったが、そこには誰もおらず落胆した。
(!?)
部屋に入った時から違和感を感じていた。何とも言えない奇妙な感じだ。
「おい、誰かいるか!?」
呼ばれて入って来たのは、かつて麻里奈の侍女として世話係だったメイドだった。
「はい、お呼びでしょうか?ご主人様」
「この部屋には入るなと言っていたな?ボクに無断で入って掃除をしているのか?」
メイドは平伏すると、額を床に擦り付けて否定した。
「滅相も御座いません。お言い付け通り、この部屋には手を付けず、麻里奈様がお屋敷を去られてからは、入室も致しておりません」
「それなら、他の者が入ったのか?」
「それは御座いません」
「なぜだ?」
「この部屋には近づくなとキツく命じておりますので…」
「そうか、なら良い。すまなかったな。下がって良い」
メイドが退室すると、机やテーブルの上を指でなぞった。
「埃どころか塵1つ無い。麻里奈…ここにいるのか?だとすると、闇魔法の影の部屋に違いない」
高はそう推測したが、闇魔法が使えない彼にはどうしようもなかった。
「麻里奈…」
私の名前を呟く彼の姿を影の世界から見ていて、居た堪れなくなった私が出て行こうとすると、ロードが肩を掴んで首を横に振って制止した。
「出て行かないから、2人っきりにさせて」
ロードは気を使って退室した。私は影の世界から高さんを見ていた。
「こんなにすぐ近くに居るのに、遠いね…」
(私からは貴方が見えているのに、貴方からは私が見えない。切なすぎる)
心が張り裂けそうで、涙を流して泣き終わり冷静になって来ると、こちら側から一方的に見ているのは、傍目から見ると、私のしている事はストーカーなのでは?と思い、赤面してベッドに横になって布団を被った。
「そんなつもりは無くても、やってる事はストーカーだわ…」
恋愛って難しい、改めてそう感じた。
「陛下、陛下!」
いつの間にかに寝落ちしていて、ドアをノックされて目が覚めた。
「はーい!寝てたから待って。どうしたの?」
ベッドから起き上がり、乱れた衣服を整えてドアに向かった。
「陛下、大変です!」
「どうしたのよ!?」
フィーロの報告を聞いた私は、血相を変えて広間へと走った。
「一体何があったの?」
息を切らせた私の目に飛び込んだのは、変わり果てたハルバートの姿だった。
「皇上には刺激が強過ぎる。何故お呼びしたのだフィーロ」
「フィーロを責めないで!何があったの?」
ハルバートは巨躯に似合わず俊敏で、寡黙な武人だった。そのタフさから、常に前衛のタンク的な役割を担っていた。そのハルバートの手足、胴までもが捻られて殺害されていた。
「このハルバートをこんなにするとは、相手は余程の怪力に違いない」
「ちょっと待って!皆んなどうかしているんじゃないの?」
ハルバートの死を悲しむどころか、冷静に分析し出す神経が信じられなかった。
「陛下、我々は魔族です。感傷に浸る前にするべき事があります」
「するべき事?」
「復讐ですよ。皆んな口には出さないですが、悲しんでます。ですが、泣いてどうなりますか?それで生き返るのですか?我々に出来る事は、ハルバートの無念を晴らす事だけです。ハルバートの霊前に、下手人から引き摺り出した心臓を捧げ、霊を弔います」
アーシャに強めの口調で反論され、私はグーの根も出なかった。ロードは、言い過ぎだとアーシャを睨んだ。アーシャは小さく溜息を吐いて、退室しようとした。
「待って、行かないで!アーシャが正しい。ハルバートの仇を必ず討つわよ!」
ハルバートは10人しかいない魔王の1人だ。それがこうも容易く倒されるとは、敵は当然ながら最高指導部メンバーの中にいると考えられた。
「遅い!」
バートリは麻里奈の剣を、鋭く伸ばした爪で弾き、その背中を手刀で打った。麻里奈はバランスを崩して床に倒れた。
影歩法と言うのも良く分からない。バートリの体術に翻弄され、ろくに剣を合わせる事も出来ない。
「ホホホ、妾のは見よう見真似で、倣った訳ではないぇ。まずは妾を、1度でも良いから床に転がしてみよ」
バートリと麻里奈が修行をしている頃、中南海の最期指導部メンバー達は夜通し会議を開いていた。
「白面は、まだ見つからんのか?」
楊は、苦虫を噛み潰した様な顔をして聞いた。
「先日、魔族が結界内に入ったとの報告を受けている。白面が魔族を引き入れたのであれば、白面の正体はアナトで間違い無いだろう?死んで無かったのだ」
「何度も言わすな!この目で塵も残さず消えたのを見たのだ。生きているはずがない!」
「まぁ、まぁ。この際どちらでも良いでしょう?全員殺せば済む話だ」
楊主席は、ジロリと睨んで言った。
「奴らを軽く見るなよ?」
「ははははは。こいつは驚いた。楊さん、いやダゴン王の言葉とは思えませんな」
「そうとも、魔族など我らから見ればヒヨッコも同然。軽く捻り潰してくれるわ」
劉は鼻息が荒く、早く戦いたくて仕方なさそうだった。
「楊さんの言葉が理解出来なかったのか?魔族にはルシフェルとバァルがいるんだぞ」
高は劉を嗜めた。
「あぁ、我らと同族のか?」
「だが2人だけで何が出来る?後は雑魚だろ?」
「その雑魚は私に頂戴。楽しませてもらうわ、あははは」
それぞれが好き勝手に言い、勝手に行動しようとしていた。高は、1人ずつ的に掛けられれば、一溜りも無いなと危機感を募らせた。
結局この日の会議も、ろくに話が纏まる事がなく散会した。
「ふぅ。我々は自我が強過ぎて、自惚れが強く、他種族を見下している。きっと近いうちに足元を掬われるに違いない」
(麻里奈…僕はアナトの死には関わってはいないが、それでもキミは僕を仇だと狙うのだろうか?キミに殺されるなら本望だ)
高が邸宅に戻ると、奇妙な気配を感じた。およそ常人では感じ取る事が出来なかったであろう。
「嘘だろう?麻里奈!麻里奈、いるのか?」
麻里奈が使っていた寝室に入ったが、そこには誰もおらず落胆した。
(!?)
部屋に入った時から違和感を感じていた。何とも言えない奇妙な感じだ。
「おい、誰かいるか!?」
呼ばれて入って来たのは、かつて麻里奈の侍女として世話係だったメイドだった。
「はい、お呼びでしょうか?ご主人様」
「この部屋には入るなと言っていたな?ボクに無断で入って掃除をしているのか?」
メイドは平伏すると、額を床に擦り付けて否定した。
「滅相も御座いません。お言い付け通り、この部屋には手を付けず、麻里奈様がお屋敷を去られてからは、入室も致しておりません」
「それなら、他の者が入ったのか?」
「それは御座いません」
「なぜだ?」
「この部屋には近づくなとキツく命じておりますので…」
「そうか、なら良い。すまなかったな。下がって良い」
メイドが退室すると、机やテーブルの上を指でなぞった。
「埃どころか塵1つ無い。麻里奈…ここにいるのか?だとすると、闇魔法の影の部屋に違いない」
高はそう推測したが、闇魔法が使えない彼にはどうしようもなかった。
「麻里奈…」
私の名前を呟く彼の姿を影の世界から見ていて、居た堪れなくなった私が出て行こうとすると、ロードが肩を掴んで首を横に振って制止した。
「出て行かないから、2人っきりにさせて」
ロードは気を使って退室した。私は影の世界から高さんを見ていた。
「こんなにすぐ近くに居るのに、遠いね…」
(私からは貴方が見えているのに、貴方からは私が見えない。切なすぎる)
心が張り裂けそうで、涙を流して泣き終わり冷静になって来ると、こちら側から一方的に見ているのは、傍目から見ると、私のしている事はストーカーなのでは?と思い、赤面してベッドに横になって布団を被った。
「そんなつもりは無くても、やってる事はストーカーだわ…」
恋愛って難しい、改めてそう感じた。
「陛下、陛下!」
いつの間にかに寝落ちしていて、ドアをノックされて目が覚めた。
「はーい!寝てたから待って。どうしたの?」
ベッドから起き上がり、乱れた衣服を整えてドアに向かった。
「陛下、大変です!」
「どうしたのよ!?」
フィーロの報告を聞いた私は、血相を変えて広間へと走った。
「一体何があったの?」
息を切らせた私の目に飛び込んだのは、変わり果てたハルバートの姿だった。
「皇上には刺激が強過ぎる。何故お呼びしたのだフィーロ」
「フィーロを責めないで!何があったの?」
ハルバートは巨躯に似合わず俊敏で、寡黙な武人だった。そのタフさから、常に前衛のタンク的な役割を担っていた。そのハルバートの手足、胴までもが捻られて殺害されていた。
「このハルバートをこんなにするとは、相手は余程の怪力に違いない」
「ちょっと待って!皆んなどうかしているんじゃないの?」
ハルバートの死を悲しむどころか、冷静に分析し出す神経が信じられなかった。
「陛下、我々は魔族です。感傷に浸る前にするべき事があります」
「するべき事?」
「復讐ですよ。皆んな口には出さないですが、悲しんでます。ですが、泣いてどうなりますか?それで生き返るのですか?我々に出来る事は、ハルバートの無念を晴らす事だけです。ハルバートの霊前に、下手人から引き摺り出した心臓を捧げ、霊を弔います」
アーシャに強めの口調で反論され、私はグーの根も出なかった。ロードは、言い過ぎだとアーシャを睨んだ。アーシャは小さく溜息を吐いて、退室しようとした。
「待って、行かないで!アーシャが正しい。ハルバートの仇を必ず討つわよ!」
ハルバートは10人しかいない魔王の1人だ。それがこうも容易く倒されるとは、敵は当然ながら最高指導部メンバーの中にいると考えられた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる