その日、女の子になった私。

奈津輝としか

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【第9部〜巨人の王国編〜】

第53話 ヘカトンケイルの最期

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 帝釈天インドラがブリアレオース相手に生命の灯火ともしびを消した頃、梵天ブラフマー軍もギュエース相手に苦戦を強いられていた。
 梵天ブラフマーは巧みに配下を指揮し、これまではほぼ力は拮抗していた。そこへ帝釈天インドラ軍を壊滅させたブリアレオースが現れ、ギュエースに加えてブリアレオースを相手にすると、徐々に犠牲者が増え始めた。
 そこへ阿弥陀如来アミターバ軍の生き残りである、孔雀明妃マハーマユーリーが現れると様子が一変した。
 ブリアレオースは、また新しい蝿が現れたかと拳を振り翳したが、孔雀明妃マハーマユーリーを見て攻撃を止めた。
 そのあまりの美しさに魅了され、自分の女にしようと手を差し伸べると、横からギュエースが邪魔をして孔雀明妃マハーマユーリーを奪おうとした。
「お前、この女は俺が先に見つけたんだ!」
「だからと言って、兄貴の物じゃないだろう?」
 2人の争いのドサクサに紛れて、長兄のコットスが孔雀明妃マハーマユーリーを奪おうとした。
「何をやってる!」
 3人が争い始めたので、孔雀明妃マハーマユーリーは提案した。
「貴方達兄弟の中で、1番強い男に嫁ぐわ」
 その言葉を聞くなりブリアレオースはコットスを殴り、一撃で十もの頭を砕いた。
「ギュエース、先ずは兄貴コットスからるぞ!」
 三兄弟の中では長兄コットスが1番強く、ブリアレオースは末弟ギュエースが残っても勝てる算段を立てた。
 ギュエースは、次兄ブリアレオースに主に戦わせて共倒れを狙い、長兄コットスを倒した瞬間に、次兄ブリアレオースにトドメを刺そうと見積もった。
 2人の思惑は噛み合い、動きながら長兄コットスの前後左右に回り込んで殴りかかった。長兄コットスは背後を取られまいと、背を見せない様にしながら戦った。
 長兄コットスの背後が取れない為に、左右から同時に殴り掛かった。しかしヘカトンケイルは、50の頭に100本の腕がある。左右から同時に攻撃されても死角は無く、右に50、左に50の腕を振り回し続けて、コットスは迎え討った。
 2人がかりでさえ長兄コットスは手強く、その強さに舌を巻いた。互いに削り合い、頭を潰し肉を削り骨を砕いた。
 再生能力の限界を超えてダメージを与え様と、近づいて行く。弾け飛んだ腕や顔の一部が辺りに飛び散り、落下して梵天ブラフマー達はその度に逃げ惑い、被害を最小限に抑えていた。
 激しい肉の削り合いは、遂に長兄コットスの再生能力の限界を超えてダメージが回復し切れなくなって来た。
 次男ブリアレオース三男ギュエースは手を緩める事無く、攻撃は更に激しく苛烈さを増した。長兄コットスの腕は吹き飛び、頭を砕かれ顔が潰れ、削られて肉片となって周囲に撒き散らして行く。
ブシュウゥゥ…。
 最期は霧の様になって、一片の肉片も残さず消滅した。その瞬間、次男ブリアレオース三男ギュエースは、ほぼ同時にお互いへパンチを繰り出していた。
「ぐふっ」
 生き残るのは自分だとばかりに、最初から全力で2人は殴り合った。至近距離での打ち合いは、次男ブリアレオースの優位に見えた。
「待ってくれ兄貴。女は譲るから生命は助けてくれ!」
 三男ギュエースの命乞いも、興奮状態の次男ブリアレオースには届かなかった。
 攻撃の手は緩められる事は無く、三男ギュエースも再生能力の限界を超えて、塵となって掻き消えた。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
 勝ったとは言え、ブリアレオースは満身創痍であった。
「ふふふ、お疲れ様。すっごい筋肉ねぇ?カッコいいわぁ」
「そうか?」
「ええ、本当に。ねぇ、お腹が空かない?私、お餅が大好きなの。貴方の逞しい腕でお餅を突いてくれたら、粘りのある美味しいお餅になりそうだわ」
「ははは、そんなに餅が好きなのか?良いぜ、俺が餅を突いてやろう」
 ブリアレオースは身体のサイズを、孔雀明妃マハーマユーリーに合わせた大きさまで小さくなって見せた。
 それを見た孔雀明妃マハーマユーリーは、ほくそ笑んで頷いた。
 それから孔雀明妃マハーマユーリーは、餅米を炊いてうすに入れた。きねをブリアレオースに渡すと、2人で餅つきを始めた。
「はいっ!」
「よっ!」
「はいっ!」
「よっ!」
 ブリアレオースが、わざとらしく筋肉が見える様に餅を突き、孔雀明妃マハーマユーリーは喜んで褒めた。ブリアレオースは、孔雀明妃マハーマユーリーにデレデレだ。
「ふぅー。もう良いだろう?」
「そうね。私がお餅をねるわね」
 孔雀明妃マハーマユーリーは、一口大にお餅を千切り、丸くねた。
「ねぇ、そんなに身体が大きいと食べるのに大変よね?それに、あんなに大きかったのに、そんなに小さくなれるのね?」
「ははは、もっと小さくもなれるぞ」
「すごぉい!私、手のひらサイズの生き物が可愛くて大好きなの」
「ほお?そうか」
 得意になったブリアレオースは、子供くらいのサイズになって見せた。
「うーん、もう少し小さくなれないかしら?私の手のひらに乗って見せてよ」
「ははは、お安い御用だ」
 ブリアレオースは、身体を縮めて孔雀明妃マハーマユーリーの手のひらに乗って見せた。
「あは♡可愛いわぁ。でも、いくらなんでも豆粒の大きさにはなれないわよね?」
 ブリアレオースは、そんな事は容易い事だと大笑いして、見る間に豆粒ほどの大きさになって見せた。
 その刹那、孔雀明妃マハーマユーリーは目にも止まらぬ素速さでブリアレオースを餅にくるむと、口の中に放り込んで食べてしまった。
 孔雀明妃マハーマユーリーの体内は猛毒である。さしものブリアレオースも再生出来ず、そのまま消化された。
「あははは」
 孔雀明妃マハーマユーリーは、笑いながら泣いた。
「ようやく皆んなの仇を討ったわよ…」
 孔雀明妃マハーマユーリーは己の美貌をも武器とし、機転を利かせて武力では無く、智力によってヘカトンケイル三兄弟を倒した。
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