その日、女の子になった私。

奈津輝としか

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【第10部〜最終章〜】

第6話 右相と左相の思惑とタイムワープ

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「姫様!姫様!」
公主ゴンヂュ公主ゴンヂュ!」
 紅髪の右相と、宮女から侍衛までが必死になって探しているのは、突然姿を消したアナトの消息であった。
「何処にも居られません!」
「馬鹿な、後宮からは1歩も外には出られん!絶対に何処かに居るはずだ。草の根を分けても探し出せ!」
 ドゥアン右相は焦っていた。このまま見つからなければ責任問題となる。いや、既にかなりヤバい状況であった。
「マズい、マズいぞ。このままでは、私の首だけでは済まなくなる。師傅シーフー(師匠)にまで罪が及んでしまう…くそっ…」

 これまた例の如く師傅シーフー(師匠)の発音だが、どの華流ファリュウドラマ(中国ドラマ)の女優さんの発音も、何度聞き直しても「シーフー」では無く「シーファー」と言っている様にしか聞こえない。だけど発音は「シーファー」では無いのだ。何と中国語の難しい事か…。
 中国語を勉強する時は、必ず発音やヒヤリングから学び、カタカナで覚えては絶対にダメだと言われているのは、こう言う理由なのだろう。
 そもそも50音しか無い日本語で、1300音以上もある中国語を書き表す事自体が無謀だ。中国語では無くとも、有名な話しで例えるなら、黄金のマスクで有名なツタンカーメン王が良い例だ。
 ツタンカーメンなどと言って通じるのは日本人だけであって、ツタンカーメン王など存在しない。正確には、トゥト・アンク・アモ(メ)ン王だ。
 日本に黄金のマスクが展示され、当時の記者が「この黄金のマスクの王様は誰ですか?」と聞いて、トゥト・アンクがツタンに、アモンがカーメンに聞こえ、何度も繰り返して聞くので、エジプト人が面倒臭くなり、「もうそれで良いよ」的な感じで頷いたので、記者は新聞にツタンカーメンの黄金のマスクと書いてしまった。これが世に広まって現在に至るのだ。
 もっとも、アモンはアメンラー(太陽神)から取っている為、アモンの発音はアメンと言ったと推測されるので、アメンがカーメンに聞こえたのなら、そう聞こえたのも無理も無かったかも知れない。
 日本にキリスト教を最初に布教したとされるフランシスコ・ザビエルだって、ポルトガル語に近い発音で書くなら、ザビエルでは無くてシャビエルの方が近い。
 それ故にへそ曲がりな筆者は学生時代、世界史の模試でシャビエルと書き、万が一にも×にされない為に※で、「ポルトガル語の発音はザビエルでは無くシャビエルの方が近い為、その様に記す」と書いて◯にされた事がある。
 要は、理解しているかどうかが重要で、コイツは分かっていてそう書いたんだな?と思って◯にしてくれたのだろう。粋な採点者もいたものだ。普通であれば採点者には解答集があり、それ以外の答えが書かれていれば、問答無用に×にされるものだからだ。
 話しが脱線したが、この作品も発音にこだわりがあって書いている。「上」も、「シャン」では無くて、「シィァン」と敢えて表記している。「皇」も「ファン」では無く、「ホワン」と書いているのは、より近い発音表記に近付ける為の作者なりのこだわりである。

「オホホホ。お困りの様ね、ドゥアン右相?」
県主シィェンヂュ…」
 なるほど、おとしいれられたのかと一瞬で悟った。
「ホホホ…どうしたのかしら?怖い顔して…ごほっ…」
 紅髪が目の前に広がったかに見えると、県主シィェンヂュは首を締められた。
「姫様に何かあれば、生きていられると思うなよ?」
「ぶ、無礼な…わ、私を…ごっ…がぁっ…」
 ドゥアン右相は怒りに任せて、県主シィェンヂュの首を絞めながら片手で持ち上げた。県主シィェンヂュは苦しくて両手でその手を掴んでもがき、涙と鼻水とヨダレを垂れ流した。掴んでいた手に力が入らなくなり、身体がビクンビクンと痙攣けいれんすると、床に尿を垂れ流して水溜りを作った。
「止めんか!」
 杖で背を殴られてドゥアン右相は吹き飛び、県主シィェンヂュは解放された。
 右相を殴った老人は、直ぐに県主シィェンヂュに回復魔法をかけた。
師傅シーフー(師匠)!?」
 右相が背中を押さえて立ち上がり、右相に師傅シーフー(師匠)と呼ばれた者は、左相であった。
「どう言うつもりじゃ?あと少し遅ければ、殺しておったぞ!県主シィェンヂュを殺めれば、お主は死罪ぞ!いや、この未遂の状況でも…死はまぬがれまいて…」
 しかし左相も、弟子である右相が嵌められた事を悟っていた。県主シィェンヂュの身分の者の黒幕となると限られて来る。皇后ホワンホゥか側室である妃嬪の誰か、もしくは郡主ジュンヂュが考えられ、恐らくは後者であろうと推測した。
「仕方がない…」
 左相は県主シィェンヂュに呪文を唱えた。
「何をされたのですか?」
「この数時間の記憶を失くしたのじゃ」
師傅シーフー(師匠) の手をわずらわせてしまい、申し訳ございません」
 白髭を左手でさすりながら、弟子である右相をさとす様に言った。
「お主は賢いのじゃが、怒りに任せて激情に走るのが玉にきずじゃな。それに…意図せずも、後継者争いに巻き込まれてしまったからには、儂らも本気を出さねば身が危うくなるのぅ」
 公主ゴンヂュには右相が付いている。それ故に、左相は右相の師匠である為に右相側だと思われているから、公平を期して傍観していたのだが、結局は巻き込まれてしまった。それも右相の計算の内であろうと思いつつも、その事については弟子を責めなかった。
 公主ゴンヂュが戻った今、皇位継承権の第一は公主ゴンヂュとなった。そのまま見つからなければ、郡主ジュンヂュが後継者として選ばれていたので、当然面白く無い。
 郡主ジュンヂュ一派から早速、公主ゴンヂュは嫌がらせを受けていた。嫌がらせは警告の様なものだ。警告で済めば良い。だが次第にエスカレートして行き、生命が狙われるのは明白であった。
「右相!公主ゴンヂュの足取りが掴めました」
「何処だ、何処におられる!?」
「それが…」
 報告者の煮え切らない態度に、いらついた。
「早く答えんか!」
 部下は平伏して、公主ゴンヂュの足取りを報告した。
時空間転移タイムワープだと?」
 帝国軍を最強足らしめたのは、この兵器による所が大きい。攻め込んだ星が思いのほか手強かった場合、この兵器を使って戦力が整わない過去に行き、制圧してしまうと言う恐るべき兵器だ。
時空間転移タイムワープか…厄介じゃな。どの時代に送られたか調べるのに手間取る上に、その間も送られた時代によっては、公主ゴンヂュは苦労しておるじゃろう」
 時空間転移タイムワープなどと言う卑劣な罠を仕掛ける事が出来た者は、郡主ジュンヂュしかいない。何故なら、時空間転移タイムワープの兵器を管理しているのは、父親である広平王グゥァンピンワンだからだ。郡主ジュンヂュであれば、容易く入手可能だったはずだ。
 公主ゴンヂュ時空間転移タイムワープによって過去に行った室内に、右相と左相は入室した。
「必ず手掛かりはあるはずじゃ」
 左相は配下に命じて、室内を捜索させた。
 

 
 
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