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【第10部〜最終章〜】
第16話 再会
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彭城を奪還すると、逃げ遅れた劉大公(劉邦の父)や漢王妃・呂雉(後の呂后)と妹の呂嬃を捕らえた。
滎陽城に、劉邦が逃げ込んだとの報告を受けた。それを私が当てて見せたので、私は楚軍中にあって神仙の如く崇められた。まぁ実際、女神(天道神君)だし。
項羽は今度こそ引導を渡してやると吠え、彭城から全軍を上げて出陣した。
「漢の偽りの降伏には乗らない様に警戒して。劉邦を逃す為に、紀信が身代わりとなるわ。彼は忠臣よ。殺すよりも仲間にしましょう」
私も馬車に乗り込んで、滎陽城へと向かった。不意に眠気に襲われて、范薇に膝枕をされたまま眠った。
ハッと我に返ると、シェルターの中にいた。
「ここは…」
虞美人の時代は、時空間転移だと左相(亜父)から聞いた。夢だと思っていたのだが、この時代も時空間転移で来た世界なのだろうか?眠ったタイミングで、2つの世界を行き来しているのだろうか?よく分からない。
『ステイタスオープン』
「ランクは…テンダラース(S10ランク)だ。だけど確か私は、SSSランクだと言われたはずだ」
私の本来のランクは、テンダラース(S10ランク)だ。だから合っているのだけど、ランクにズレが生じている。これも過去の世界にいると言う事だろうか?でも私は、こんなの体験した記憶が無い。
「翠さんが亡くなったって言ってたな?遺体はあるのかな?死者蘇生呪文で、生き返らせよう」
「ぐぅーっ」恥ずかしい事に、お腹の虫が鳴った。辺りに誰もいなくて、聞かれなかったのが幸いだ。
「そう言えば、ずっと何も食べて無い気がする」
食堂に向かうと、パッと見で5、60人はいた。私が食堂に入ると、皆が私に向かってお辞儀をした。こんな非常事態でも、まだ私を賓客として扱ってくれている。
「えっーと…」
ポケットの中を探ると、お財布があったので安心した。カレーライスの自動販売機に興味があって、ワクワクしながらボタンを押した。
ピー、ピッピッピー、と出来上がりを報せるアラームが鳴った。押し出される様にして、出て来たカレーライスはご飯にルーがちゃんとかかっていた。
「凄い!ネットで調べたら、確か世界で唯一のカレー自動販売機は、徳島県にあるんだよね?何でここにもあるの?」
味は、3種類のレトルトカレーから選べる。ここでは大人の事情で詳細は語れないので、気になった読者はネットで検索して見て下さい。動画もありますよ。
「うん、まぁ…いつものレトルトだね。でも、それが懐かしくてホロリときちゃうな、こんな被災地では」
被災地…、そう、被災地なのだ。今日はゆっくりと休んで、明日、地上の様子を見に行こうと考えた。
「瑞稀、瑞稀だろう?」
「?」
私の目の前に男の人が、カップ麺をテーブルに置いて座った。口調から察するに、屋敷の使用人やシェルターを管理している人では無さそうだ。それに何となく私は、この人に見覚えがある。
「俺だよ、山下巧だよ。覚えて無いかな?」
「えっ?巧!!」
私の元彼だ。その時に、ふと頭によぎった。ここは時空間転移で来た世界だ。時間軸は、どの程度なのか知りたくなった。
私と巧がラブラブ全盛期の頃なのか、男の私が付き合っていた麻生佳澄さんが、巧に奪われた後なのか?
1度目の人生では、私は麻生さんと結婚し、死んで転生すると今度は巧と結婚した。
しかし母アシェラによって2度目の人生を繰り返した時は、シングルマザー(実は母アシェラが化けていた)に誘惑され、麻生さんと別れる事になり、麻生さんは巧と結婚してしまうのだ。
この時の私は、男になったり女になったりしていた。そうして、男の時は麻生さんと、女の時は巧と付き合っていた。だから私は、彼氏と彼女を同時に失ったのだ。あの時の事を思い出すと、今でも胸が痛む。
「実は…今の私は、タイムトラベラーなの。だから時間軸がよく分からなくて、あの…その…麻生さんは…?」
巧は、申し訳なさそうな表情をして頭を下げた。
「裏切る様な真似をして…申し訳ありませんでした。佳澄は…70年前に安らかに息を引き取りました」
ズキンと胸に痛みを感じた。巧が、「佳澄」と麻生さんを呼んだ事。元カノの麻生さんが巧に奪われた事、元カレの巧に裏切られた事。それから、もう麻生さんが亡くなっていた時代である事に胸が痛くなった。
「よく…それで、声を掛けられたわね?」
辛辣な言葉が口を突いて出ていた。本当は、こんな事は言いたくない。何て嫌な女なんだろう、私は。そう思った。だって、私も母とは知らず、シングルマザーと肉体関係となった。理由は兎も角、先に麻生さんを裏切ったのは自分なのだ。
「…ごめんなさい。本当に謝らないといけないのは、私の方よね。麻生さんに…謝りたい…」
「…ここから出られたら、お墓参りに行きませんか?」
「ええ、喜んで。是非、連れて行って下さい」
それからは2人とも無言で食事をした。何にも味がしない気がした。何を食べていたっけ?カレーだったと思い出して笑った。
「何か可笑しい事でもありましたか?」
「ふふふ、久しぶりに元カレに会って、緊張しちゃって。何食べてるのか味も分からないほどに。カレーなのにね?」
そう言うと、巧も「俺も豚骨ラーメンを食べたのに、醤油味だったのか味噌味を食べたっけ?とか考えてたよ」と言って笑った。
ぎこちなく敬語で話していたのが、少しだけくだけた感じになって昔を偲んだ。
(今の巧は、私の知らない巧なんだ)
再会して、また巧と…。無い無い無い、と首を振って自分に否定した。
滎陽城に、劉邦が逃げ込んだとの報告を受けた。それを私が当てて見せたので、私は楚軍中にあって神仙の如く崇められた。まぁ実際、女神(天道神君)だし。
項羽は今度こそ引導を渡してやると吠え、彭城から全軍を上げて出陣した。
「漢の偽りの降伏には乗らない様に警戒して。劉邦を逃す為に、紀信が身代わりとなるわ。彼は忠臣よ。殺すよりも仲間にしましょう」
私も馬車に乗り込んで、滎陽城へと向かった。不意に眠気に襲われて、范薇に膝枕をされたまま眠った。
ハッと我に返ると、シェルターの中にいた。
「ここは…」
虞美人の時代は、時空間転移だと左相(亜父)から聞いた。夢だと思っていたのだが、この時代も時空間転移で来た世界なのだろうか?眠ったタイミングで、2つの世界を行き来しているのだろうか?よく分からない。
『ステイタスオープン』
「ランクは…テンダラース(S10ランク)だ。だけど確か私は、SSSランクだと言われたはずだ」
私の本来のランクは、テンダラース(S10ランク)だ。だから合っているのだけど、ランクにズレが生じている。これも過去の世界にいると言う事だろうか?でも私は、こんなの体験した記憶が無い。
「翠さんが亡くなったって言ってたな?遺体はあるのかな?死者蘇生呪文で、生き返らせよう」
「ぐぅーっ」恥ずかしい事に、お腹の虫が鳴った。辺りに誰もいなくて、聞かれなかったのが幸いだ。
「そう言えば、ずっと何も食べて無い気がする」
食堂に向かうと、パッと見で5、60人はいた。私が食堂に入ると、皆が私に向かってお辞儀をした。こんな非常事態でも、まだ私を賓客として扱ってくれている。
「えっーと…」
ポケットの中を探ると、お財布があったので安心した。カレーライスの自動販売機に興味があって、ワクワクしながらボタンを押した。
ピー、ピッピッピー、と出来上がりを報せるアラームが鳴った。押し出される様にして、出て来たカレーライスはご飯にルーがちゃんとかかっていた。
「凄い!ネットで調べたら、確か世界で唯一のカレー自動販売機は、徳島県にあるんだよね?何でここにもあるの?」
味は、3種類のレトルトカレーから選べる。ここでは大人の事情で詳細は語れないので、気になった読者はネットで検索して見て下さい。動画もありますよ。
「うん、まぁ…いつものレトルトだね。でも、それが懐かしくてホロリときちゃうな、こんな被災地では」
被災地…、そう、被災地なのだ。今日はゆっくりと休んで、明日、地上の様子を見に行こうと考えた。
「瑞稀、瑞稀だろう?」
「?」
私の目の前に男の人が、カップ麺をテーブルに置いて座った。口調から察するに、屋敷の使用人やシェルターを管理している人では無さそうだ。それに何となく私は、この人に見覚えがある。
「俺だよ、山下巧だよ。覚えて無いかな?」
「えっ?巧!!」
私の元彼だ。その時に、ふと頭によぎった。ここは時空間転移で来た世界だ。時間軸は、どの程度なのか知りたくなった。
私と巧がラブラブ全盛期の頃なのか、男の私が付き合っていた麻生佳澄さんが、巧に奪われた後なのか?
1度目の人生では、私は麻生さんと結婚し、死んで転生すると今度は巧と結婚した。
しかし母アシェラによって2度目の人生を繰り返した時は、シングルマザー(実は母アシェラが化けていた)に誘惑され、麻生さんと別れる事になり、麻生さんは巧と結婚してしまうのだ。
この時の私は、男になったり女になったりしていた。そうして、男の時は麻生さんと、女の時は巧と付き合っていた。だから私は、彼氏と彼女を同時に失ったのだ。あの時の事を思い出すと、今でも胸が痛む。
「実は…今の私は、タイムトラベラーなの。だから時間軸がよく分からなくて、あの…その…麻生さんは…?」
巧は、申し訳なさそうな表情をして頭を下げた。
「裏切る様な真似をして…申し訳ありませんでした。佳澄は…70年前に安らかに息を引き取りました」
ズキンと胸に痛みを感じた。巧が、「佳澄」と麻生さんを呼んだ事。元カノの麻生さんが巧に奪われた事、元カレの巧に裏切られた事。それから、もう麻生さんが亡くなっていた時代である事に胸が痛くなった。
「よく…それで、声を掛けられたわね?」
辛辣な言葉が口を突いて出ていた。本当は、こんな事は言いたくない。何て嫌な女なんだろう、私は。そう思った。だって、私も母とは知らず、シングルマザーと肉体関係となった。理由は兎も角、先に麻生さんを裏切ったのは自分なのだ。
「…ごめんなさい。本当に謝らないといけないのは、私の方よね。麻生さんに…謝りたい…」
「…ここから出られたら、お墓参りに行きませんか?」
「ええ、喜んで。是非、連れて行って下さい」
それからは2人とも無言で食事をした。何にも味がしない気がした。何を食べていたっけ?カレーだったと思い出して笑った。
「何か可笑しい事でもありましたか?」
「ふふふ、久しぶりに元カレに会って、緊張しちゃって。何食べてるのか味も分からないほどに。カレーなのにね?」
そう言うと、巧も「俺も豚骨ラーメンを食べたのに、醤油味だったのか味噌味を食べたっけ?とか考えてたよ」と言って笑った。
ぎこちなく敬語で話していたのが、少しだけくだけた感じになって昔を偲んだ。
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