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【第1章】初めて、恋を始めます
25話 学校で卒業式・お店で披露宴!?
しおりを挟むお父さんから、私たちへのバトンタッチが決まってから、あっという間の4ヶ月。
あの日、お父さんは私の結婚を高校卒業まで待たなくても良いと言ってくれていた。
でも「みんなで決めた約束だから」と、私たちはその日まで待つことにした。その代わりに新しいお店の準備を始めようと。
その準備の中で、私の家とお兄ちゃんのお家の謎がようやく解けた。
お兄ちゃんのご両親と、私の両親の四人は高校時代の先輩後輩の関係だったそう。
お兄ちゃんのお父さん、今度からは「お義父さん」が実家を継いで、今のお家に立て替えた残りの敷地に、私のお父さんが自宅兼お店を建てたと言うわけ。
だから、両家の間に境がなかったり、私とお兄ちゃんがお隣さん以上の関係になっても何も言ってこなかったのは、そんな理由があった。
今度からは野崎家ではなく、両方の建物とも岩雄家に戻るわけだから、事情を知っていた商店街の不動産屋さんたちも登記変更とかを手伝ってくれた。
だからお兄ちゃんが仕事を変えてお店を継ぐと決めたときにも、自宅の敷地だから維持費などは心配するなと言われたとか。
そんなお家の関係だから、後輩の娘にあたる私がこの年で自分の息子と結婚することに異議は出なかったみたいだとこっそり教えてくれた。
「お店を改装しましょうか」
一通りの家を片付け終わったお母さんの発案があったのは大掃除が終わってからだった。
私が生まれた頃に作ったお店だから、どうしてもくたびれてしまっている部分もあった。ここで世代交代となるなら、お店も一度綺麗にしようと。
「メニュー変えないんだから、新しすぎてもダメだよ?」
必要な部分だけの入れ換えと、掃除をしたところにペンキやニスを塗ったり、内装を新しくするのには、受験が終わったクラスメイトやクラブのメンバーも手伝ってくれた。
「自分たちで作ったんだから、気軽に来てね」
そんなみんなも、スイーツのメニューも考えてくれたり力になってくれた。だから、お礼の意味も込めて、入り口まわりもより明るく入りやすい雰囲気に変えた。
お兄ちゃんは先月お仕事を辞めて、新しいお店の店長さんになった。本当は私になるか、ギリギリまで迷ったけれど。
「桜は今までどおり看板娘の方がいいんじゃない?」
そんな佐紀をはじめとするまわりの声で決まった。
はっきり言えば失礼だけど、受験をしていた方が気持ちは楽だったかもしれない。でも、一つずつ乗り越えて行くことが、お兄ちゃんと二人だったから、楽しんで行けるようになっていた。
こうして全ての準備を終えて、卒業式を迎えた。
そう、数時間後には、私は野崎桜ではなくなってしまう。
ちょっぴり寂しかったけど、私のことを一番解ってくれている人の元に嫁ぐんだもの。怖くはなかった。むしろ、早くその胸に正々堂々と飛び込みたかった。
「桜、おめでとう」
「よく、頑張ったわね」
卒業式の写真もそこそこに、私は待っていてくれたお兄ちゃん、いや、今日から旦那様になる秀一さんと二人で市役所に届けを出し、岩雄桜と名前を変えた。
「なんにも変わらないですけどね」
「本当だよなぁ」
商店街を歩いて、来週の開店準備をするために戻ると様子がおかしい。
「戻ってきた!」
「えっ??」
「さあ、入った入った!」
誰もいないはずだった店内は明かりがついてごった返している。呆気にとられている私たちは、佐紀に押し込まれて中に入った。
店内は満席状態。ここを手伝ってくれたみんな、私たちの両親が勢揃いで待っていた。
「新郎新婦が到着よ」
「えー、だって私まだ制服だよ?」
「でも、もう二人は夫婦なんでしょ?」
それはそうだけど……。卒業式から……。あっ……?!
そっか、すっかり忘れてた。制服で卒業生の印の花までつけたまま婚姻届を出しちゃったんだ……。私ったら……。
今思えばよく受理してもらえた気がする。
でも、今朝は私たち二人で鍵を閉めてきたのに。
「うちらの親ならできるな」
秀一さんが苦笑しながら私に囁く。
きっと、私たちが学校に出たあとに運び込んだに違いない。お父さんも料理を作れるほどに回復はしていたから、リハビリだと実家での新居が出来るまで、お手伝いに来てくれることになっている。
きっと、みんなで口裏を合わせてサプライズにしてくれたんだ。
とても一人前とは言えない私たち。
本当にいろんな人に心配や迷惑をかけて助けてもらった。まだお金もないから、結婚式も新婚旅行もしばらくお預け。
そこに手作りパーティーだなんて、自然に込み上げてくる。
「桜、今日はみんなの気持ちをいただこう」
「うん……。でも、今日はみんなも卒業式だよ。みんなもお祝いだよ」
みんなで卒業と私たちの入籍をお祝いにして、私たちの忘れられない記念日になったよ。
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