まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!

小林汐希

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25章 特別な夜の大変身

第94話 結花先生の実力は規格外

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 珠実園で生活している子たちのクリスマスパーティーは昨日の夜に行ってしまったから、今日の本館は静かなもの。その代わりに児童センターは結花先生が朝から大活躍だった。

 同僚でもあり、お友だちでもあるという千佳先生と二人で、未就園児向けのクリスマスパーティーを開く。

 園長の健さんがサンタクロースに扮してプレゼントを渡していたり、手作りのお菓子を広げてくれていたし、私も帰ってすぐに「紙芝居のお姉さん」に変身してお手伝い。

 それも午後3時でお開きになって、先生と私の三人で会場だった図書室と遊戯室の片づけをしていた。

「花菜ちゃん、もう大丈夫よ」

「図書室は私の受け持ちですし、もうすぐ終わります」

「結花ぁ、本当にいい子だねぇ。なんかもったいないなぁ」

 そう、千佳先生はあまり私との接点は普段ないけれど、結花先生が私のことをいっぱいお話ししてくれているのだそう。

「花菜ちゃんを市立図書館から異動の依頼をしたときには、最初拒否されたのよ。私が面倒を見るって条件で、くれぐれも大切にって念押しされて、ようやくOKもらえたんだから」

「そうだったんですか?」

 私が図書館から珠実園に移ると決まったとき、職場の先輩方はこれまで頑張ってくれたからと、文房具や小物をプレゼントしてくれたくらいだ。

「うん、花菜ちゃんのことみんな心配していてね。館長さんが高校を出たら正式な職員に採用しようって言っていたくらいなのよ。それを私が引き抜いちゃったから。だから、花菜ちゃんは万一のことがあっても就職先に困ることもないってことでね。これ、茜音先生に言ったら怒られちゃうかなぁ」

 いたずらっ子のように目を大きくする結花先生。裏を返せば市立図書館の館長さんが計画していたものを覆すことができるほど、この結花先生の実力があるということに驚く。

 その証拠に、当時市立図書館に来ていた子たちが、何人もこの珠実園の遊戯室に移ってきたのも知っている。図書館で私の異動先を教わったって。

 もちろん誰が来ても大歓迎。子どもたちはこれまでと同じく私が見て、お母さんたちの子育て相談はプロの結花先生が受け持ってくれる。以前より来館者も増えたし、なにより私と結花先生のタッグには驚いたとみんな言ってくれる。「こんな体制が組めているなんてありえない!」だって。

「花菜ちゃんは本当に絵本作家さんなんだね。このイラストとかすごく上手。これは結花では出来なかったからなぁ」

 あの市立図書館でやっていたことを、この珠実園でも続けることにした。よくある折り紙や切り紙での飾り付けと一緒に、私は大きな模造紙にサンタクロースや雪だるま、クリスマスツリーにやってきた雪の妖精、そして子どもたちなどを描いて壁に飾ってみた。

 絵のモデルは、遊びに来てくれる子たちを毎月順番に描かせて貰っていた。それがお母さんたちに好評で、誕生日のイラストを描いてほしいというリクエストにも仕事の合間や写真と色紙をお預かりして夜に自分の部屋で描いて渡したりもしている。それは私をここに連れてきてくれた結花先生へのお礼という言い訳。

 まさか、女子高生絵本作家の大原なのはが身寄りなしになって、保護施設で生活しているなんて公表できないもんね。

「それ、もし公表したら大騒ぎでしょ!?」

「義援金集まっちゃうんじゃない?」

「そんなの頂いても使い道がありません。いつかは公表されるかもしれないですけど、今はこのままでいいです」

 そう。今の私はとても頼りになる人たちに囲まれている。これ以上のことを望む必要がない。

「花菜ちゃんは、ちゃんと卒業後にもそんな道も選択肢としてあるんだから、焦る必要なんてないのよ」

 結花先生はいつもどおり、私のことをそっと包んでくれた。
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