まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!

小林汐希

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30章 救護班の大冒険

第112話 朝ごはんを食べる気がしない!

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「今日は歩きますから、しっかり朝食は食べてください」

 朝食を前に座った点呼を兼ねた朝礼の時にそんな言葉が聞こえる。

 昨夜あんな重要書類を書いて、今日は提出本番の日。

 本当は食事どころじゃない。そんな私の状況を察している千景ちゃんは、「こういうときこそ、いつもの花菜でいなくっちゃ!」と、背中をトントン叩いてくれた。

 各クラスに分かれて、注意などを受けた上でグループごとに出発していく。

 私たちの出発は予定どおりみんなが出たあとだから、ロビーの端にあるベンチに座っていた。

「橘さん、松本さん。僕たちも出かけましょうか」

 三人とも小さめのリュックサックを背負ってホテルを出た。



 全員に配布された路面電車の1日乗り降り自由の乗車券を使って、まずは出島に向かう。

 歴史の教科書でも必ず登場する名前だけど、埋め立てが進んでいるから教科書に描かれているような島のイメージはほとんど無い。一部わずかに残されている石垣や、信号機に取り付けられている標識、チェックポイントになっている歴史博物館を見学しなければ、ここがそんな由来のある場所だとは気づかないで通り過ぎてしまいそうだ。


 でもね、それはどこも同じなのかもしれない。


 私たちが暮らしている横浜だって、同じように港のあるベイエリアとか中華街というイメージを持っている人はたくさんいる。

 そんなエリアは限られたごく一部分で、中心街を少し離れれば普通の丘陵地に住宅街が立ち並ぶわけだし。パンフレットやガイドブックに載っているものが全てじゃないから。

 そうそう。それにこの長崎という街は港のすぐそばに丘も多い。それも横浜とよく似ていると思う。

 先生と千景ちゃんという、私にとっては一番安心していられるメンバーでの街歩きは、ときどき美味しそうなお菓子のお店を見つけたり、公園で休憩を挟みながら過ぎていった。

「もうすぐお昼ですね。何か美味しいところ探してありますか?」

「それはある程度の目星は付けておきましたが、今のところ非常連絡は来ていませんし、例の件でお昼の前に寄りたいところがあるのですけれどいいでしょうか?」

「は、はい」

「あ、あれですね。いよいよだぁ」

「千景ちゃん、興奮しすぎ! 役所に書類出すだけだよ」

「花菜にとっては、二度と出すことのない書類でしょ?」

「そ、それはそうだけど……」

 私たち二人の会話を聞いても、先生は表情を変えずに桜町という駅で路面電車を降りた。もちろん私たちも続く。

 この駅のあたりに指定されたチェックポイントはない。

 ビルが建ち並んだ官庁街という方が場所を表すには適切かもしれない。当然のように、他のグループの生徒たちが興味本位で降りる駅ではなかった。
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