まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!

小林汐希

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30章 救護班の大冒険

第113話 二人で出すと決めていたから

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 地図を見ながら、目的地はすぐに分かった。

「閉まってます。日曜日ってどこから入るんですか?」

 そう、市役所の正面玄関のドアは日曜日だから閉じられているし、警備員さんも立っているくらい。

「こっちですよ」

 どこで調べてあったのか、先生は建物の右側に回って地下に降りる階段をすぐに見つけだしてくれた。

「ここですね。この下に守衛室があります。出してきますけど、二人ともどうしますか?」

 リュックサックから取り出した書類の封筒。

 そう、封筒の中に昨日署名をしたあの紙が入っている。


「一人で行かないでください。私も行きます」

 もちろん一緒に出すって決めていたんだもん。

 先生が気にしてくれた唯一の懸念は、明日の自由行動は私服で構わないのだけど、今日の班行動は制服を着なければならないということ。

 最初は先生が持って行く荷物の中に私服を入れると言ってくれたけれど、これから行うことに比べれば本当に些細なことだと思った。

 それだけのために着替える必要はないと答えた私に「強くなったな」と笑ってくれたっけ。

「こんにちは」

「こんにちは。道に迷られましたか? 正面の警備員はどっか行ったのかな?」

 そうだよね、地元の学校ではない制服姿の私たちがいれば、そう思われても仕方ない。 

「いえ、こちらを出しに来ました」

「あぁ、書類提出ですね。こちらへどうぞ」

 入籍や出生の届けなどは記念日などに出すことも多いから、休日や夜間ということも多いんだろうな。

 人のよさそうな守衛さんは、私たち二人がそれを提出に来た本人だと分かると、その場で封筒の中身を広げて丁寧に確認してくれた。

 先生が運転免許証を出して、私も保険証と学生証を本人確認の書類として揃えた。

「おや、今日が18歳のお誕生日ですか。そうですね、ちゃんと印も捺してありますし、ご本人確認もOK。書類も全て揃っています。本日づけでお預かりしますから、ご入籍は本日となります。横浜のご住所に手続き終了のご連絡が行きますから。おめでとうございます」

「あの……、受理証明ってお願いできますか? あの賞状みたいなタイプのものですけど……」

 私はふと思い出して聞いてみる。それは数日前に知った、デザイン式の婚姻届受理証明書のこと。

「あぁ、あれですね。かしこまりました。そちらも申請させていただきます。同じく後日郵送となりますがよろしいですか?」

 追加で手数料分を払って、守衛さんは私たちを見送ってくれた。

「あー、ドキドキしましたぁ!」

「よく気づきましたね。あの受理証明は忘れていました」

「だって、この時を逃したらもう貰えないものですよ? 初めての記念品です」

 不思議そうな顔の千景ちゃんに、スマートフォンで画像を見せてあげる。

「えー、こんなのあるんだ。これは記念だねぇ……。ねぇ花菜……」

「うん?」

「結婚おめでと。なんか、すごく大切なところに立ち会わせて貰った気がする。そっか、もう花奈じゃないんだ!?」

「そうでなくても、私は今日が誕生日だし……。学校での名字は変えないよ」

「クラスで一番早い誕生日ですから。18歳になったのも一番最初です。今日から法律的にも成人なのですよ。お酒は二十歳までお預けですが」

 確か4月上旬生まれのクラスメイトは他にいなかった。

 いつも春休み期間で誰からも祝ってもらえないと思っていたのが、ここで一気に挽回したような気分になる。

 せっかく来たのだからと、先生が調べてくれていた中華料理屋さんでちゃんぽんをご馳走してくれた。

 パリパリ麺の皿うどんと迷ったのだけど、それは今日の夕食のメニューに出ると教えてくれた。

「じゃあ、夕飯でガッカリする人もいるだろうね」

「お店によって味も違うので、それはそれでいいのかもしれません。さぁ、後半は坂がありますから気をつけてくださいね」

 そう。その坂のおかげで、忘れられない修学旅行になるなんて、お昼を食べているその時の私たちが知るはずもなかった。
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