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33章 電話と浴衣とサンダルと
第131話 浴衣の模様の意味
しおりを挟む「花菜ちゃんたち、もう花火が始まるから。そろそろお終いにしていいよ」
「はい。千景ちゃんもう終わりにしよう!」
「そうだねー。シロップなくなってきたから終わりだね」
茜音先生が各模擬店の担当に声をかけて回ってくれた。
私と千景ちゃんでかき氷の担当をしていたんだけど、午後も夕方になっても暑かったから大好評。つまるところ私たちは大忙しだったわけで。
あのまま珠実園でのお手伝いに入ってくれた先生には、立ち仕事は避けてもらって、その分は千景ちゃんの応援に来た加藤くんが手伝ってくれた。
それも花火の開始時間の7時で終わりにする。
「はい、みんなお疲れさま。これお夕飯の代わりだからね」
テーブルを片付けていたときに、珠実園の調理場を預かる里見先生がお皿にラップをして、私たち四人分を持ってきてくれた。
「二人とも浴衣直しておいで」
「ありがとう」
その間に男性陣二人が片づけを終えてくれていた。
灯りを落としたところで打ち上げ花火が始まって、みんなの歓声があがる。
「先生……、ありがとうございました」
「ん? こちらこそ余計な心配をさせてしまった。ごめんな」
あの事故の話は加藤くんも知っていて、幸いにして大したことがないとみんなでホッとしたんだもの。
でも、その理由が私の足下のサンダルだなんて言えないよね。
「これ、すごく履きやすいです。大事にしますね」
「それならよかった。よく似合ってる。その浴衣、撫子の柄を選んだのは自分でか?」
「気づいてくれたんですか?」
「こう見えても国語の教師だぞ?」
「そうでしたね。桔梗か撫子にしようって決めていました。結花先生が桔梗を持っていたので、撫子にしたんです」
そう、浴衣にデザインされるお花にはいくつかの意味がある。桔梗には「永遠の愛」とか「従順」「清楚」という意味が込められている。
昼間の事故の連絡を受けた結花先生は、彩花ちゃんの出産の時以来という、お仕事中の陽人先生を万一のための備えにと、職場へ緊急連絡を入れて呼び出してくれていた。
私もお母さんから教わって心得ている。職場を通じて連絡をするときは本当の非常事態に限ると。
その最終手段とも言えるカードを私のために躊躇なく切ってくれた結花先生……。
駆けつけてくれた陽人先生は、私たちが珠実園に戻ってきて無事を確認したあとも、仕事に戻る気もしないと笑いながら結花先生を手伝ってくれた。
そんな私たちのお手本のようなご夫婦そのままの関係を浴衣にも選んでいるのは見事としか言えない。
珠実園の図書室で一緒に撫子の花言葉を調べたとき、私にはこっちだなと思ったんだ。そのお花には「純粋な愛」「貞節」、そして私が一番みせたい「笑顔」という意味が込められているのだから。
あんな小さな私に「泣かないで笑っていこう」と教えてくれた大切な人。
「大丈夫だ。花菜の言いたい想い……、願いはちゃんと届いてるから」
「うん……」
よかった。私からしたら思い切ったお値段だったけれど、それなら「悔いが残らないいい買い物」になるからね。
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