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33章 電話と浴衣とサンダルと
第130話 これのために大騒ぎになったの?
しおりを挟む「靴ですか?」
お店の名前が書かれた袋と、少し型くずれしてしまったけれど、中身の箱でそうだと分かる。
「開けてごらん。本当は花火の直前にサプライズで渡すつもりだったんだけど、このザマだからしゃーないもんな」
「……これ……」
言われたとおりに箱を開けたけれど、言葉が出てこなくなって……。だって……、
「そんな……、このために……?」
「あの時サイズがなかったもんな。今日浴衣を着るんだろ? 橘が二人で買いに行ったことを、うっかり口を滑らせてな」
「どうして……。もぉ、そんなんで交通事故に遭ったなんて、私ってどれだけ罪作りなんですかぁ!? 理由にならないですよぉ……!!」
ようやく止まっていた涙がまたこぼれてきちゃう。
「靴選びに苦労する花菜が久しぶりに欲しがった物だったからね。なんとか間に合ってよかった」
私の足首の事があって、靴はローヒールが基本だとしても踵が固定できないミュールは履かない。
下駄は履き慣れないのと、「歯」の部分をひっかけたりしたらもっと危ない。夏物はサンダルもヒールが低いものは子ども用ばかり……。なかなか気に入ったものがなかったの。
そんなときに先週靴屋さんで見かけたものは久しぶりに自分でも欲しいと思うデザインだった。
低めのしっかりしたヒールで、甲のところのレースのリボンが取り外し可能だったから、いろんな使い方も出来る。
踵や踝もちゃんとストラップで固定できて、まだ不安が残る私の足にも危なくない。全体はライトグレーのギンガムチェックだけど、差し色に使ってある黒いストラップの色味がすごくガーリーで一目で気に入った。
お店で履かせてもらって、これなら私の足でも大丈夫と思ったのだけど、残念なことに同じ色味で私のサイズが在庫切れだったの。
再入荷は分からないと言うことで諦めていたんだもの。
確かに、そのとき啓太さんは商品名と型番をお店の人に聞いていたっけ。
それを探し出して、買いに行ってくれて事故に遭ったなんて。もぉ……、いくら内緒にしていたと言っても……。それって私のせいだよ……。
「花菜ちゃん、帰ったら着替えてね。みんな帰ってくるの待ってるって」
結花先生が自分のスマホで連絡を取ってくれていた。今の時間で帰ればお祭のスタートには間に合うからと。
「はい。先生……、今夜これ履かせてもらってもいいですか?」
「もちろん、そのために間に合わせたかったんだ。俺はこんなザマじゃ手伝ってやることもできないけど……」
お祭のお手伝いなんて大丈夫。こうして一緒に帰れるんだもの。
「ありがとう……ございます……。気持ちだけで……十分だよ……」
「来年は二人に模擬店ひとつ任せちゃってもいいかもしれないね」
結花先生もさっきとは雰囲気が全然違って、いつもどおりに戻っている。
「まぁ、この時期だから、教員研修もほとんど終わってるしな。それもありだろう」
俯いて涙の染みこんだ箱をしっかり抱え込んだ私の頭を、その人は優しく撫でてくれた。
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