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40章 卒業式のち披露宴!?
163話 最後のホームルーム
しおりを挟む体育館から教室に戻って、一度預けていた卒業証書を今度は担任の先生から納めておく台紙と一緒に受け取る。
「松本花菜さん」
「はい」
「本当によく頑張りました。いろいろと……ありましたね……」
先生が言葉に詰まってしまう。先生、一緒にいろいろありましたよね……。
「はぃ……」
それが飛び火して、教壇で渡してくれる先生の姿が滲んだ。
「やだぁ、花菜が泣いてる」
「松本、最後だぞ!?」
みんなからの声がかかるけれど、だって仕方ないもん。
「だってぇ……、先生が泣かせるんですぅ……」
「いいじゃん。このクラスのヒロインらしくてさ」
本当に予想もしていなかった、思い出だらけの高校生活になったよ。
それまでは終末的運命キャラという私の位置づけが、いつの間にか絶対的ヒロインというものに変わったって……。
体育祭の直後、「アスリート集団の優勝を阻止したのは文学少女!」だなんて新聞委員にドキュメンタリー風のタイトルも付けられてインタビューも受けちゃったけれど、そんな私だって最後ぐらい普通の純情な女の子に戻っていたっていいじゃない?
先生は、涙を拭いながら席に戻った私が椅子に座るまで次の名前を呼ばなかった。
全員に卒業証書を配り終えて、最後のホームルームが始まる。
「最初に言わせてください。5組の皆さん。本当に2年間ありがとうございました」
先生が深々と頭を下げる。
「他の先生方は分かりませんが、お渡しした卒業証書は他のクラスとは違います。5組の分は僕が全員の名前を一人ずつ書かせてもらいました。裏には鉛筆書きではありますが、一人ひとりにメッセージを入れました。それは僕を支えてくれた皆さんへのせめてもの気持ちです」
みんなが卒業証書を裏返してみて歓声が上がる。各自への名前入りでコメントが書かれている。きっと私の分は書くのに悩んだだろうね。
しばらく、先生はそのざわつきが落ち着くのを静かに待っていてくれた。
「僕は、本当にこの5組の皆さんを生涯忘れることはできないでしょう。一昨年の4月に新米で担任を任されたとき、皆さんの前で本当に緊張していたことを覚えています。他の先生方からは、5組は楽ですよと言って貰えましたが、決して平坦ではなかったのは皆さんが一番分かってくれています。この5組のメンバーと一緒だったから乗り越えられた。これは間違いありません」
教室に鼻をすする音が聞こえる。
そうだよ。大学を卒業して初めて受け持ったのがこのクラスだったもんね。
「次の進路を定めた者、まだ考え中で道半ばの者、いろいろです。でも、決して無駄なことはありません。この2年間、皆さんは間違いなく成長しました。そして僕のことも皆さんは育ててくれました。本当にありがとうございます。僕はまだ新米ですから当分の間はこの学校にいます。勉強も人生も悩んだり迷ったりしたときは、これまでと同じようにいつでも相談に乗ります。卒業生だなんてケチ臭い事は言いません。
そして嬉しいことがあったら、報告もしてくださいね。僕もこれからいろんな生徒を受け持つことになると思いますが、皆さんは忘れることがない第1号です。ここにいるクラスメイト、そしてこの学年は、皆さんの一生の宝ものになるはずです。これからもその縁を大切にしてください……。
……最後に……。ご卒業おめでとうございます。
……はい。これで僕の授業は全て終わりです」
誰から始まったのか分からない。全員の拍手がしばらく鳴りやまなかった。
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