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23章 仲直りの一夜

82話 引越し準備を手伝います!

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 次の日から、さっそく先生のお引っ越しの準備を始めることにしたの。

 昨日大泣きして迷惑をかけたけれど、あれは私を迎えてくれるための準備を誤解していただけだったとお互いに理解した以上、私も全力で先生の期待に応えたいと決めたんだ。


 先生のお部屋に初めて泊まった花火大会の翌朝、私は先生の腕の中で目を覚ました。

 やっぱり昨日のことは夢ではなかった。

 手足の痛みが引くまで数日かかるとは聞いていたけれど、なんとか立ち上がれるくらいまでには痛み止めのお薬が効いている。

 朝ごはんを作って先生が目を覚ますのを待っていた。


「結花、大丈夫か?」

「おはようございます。朝ごはん作っておきました」

「そんな、無理しなくても良かったのに」

「私が作りたかったんです。新婚さんみたいじゃありませんか?」

「おまえなぁ? でもよかった……本当に……」

 先生が笑って頭を撫でてくれる。


 食事をしながら、昨日は聞けなかった今後のスケジュールを教えてもらった。


 先生は9月の下旬に日本を発ってしまうこと。

 そのときも私は日本に残って、11月の高認試験を受けること。

 その後のことはまた話そうと。

 もし私が進学したいと考えるようになっていたら、それはその時に考えようと言ってくれた。

 平日の先生にはお仕事があるから、その分、私が代理人で役所に行って書類を届けたりした。

 そのときはユーフォリアのランチのお仕事は休ませてもらった。そんなときでも事情を知っている菜都実さんは、「夜だけでもおいで」といつも言ってくれる。

 そう、先生のお仕事帰りを待つことを続けさせてくれたの。


 業者さんからの段ボールが届いてからは、平日の夜とか、仕事のない日曜日は持っていくものとそうでないものを分けて荷造りをした。

 あちらでも必要な教科書や参考書、授業ノートなどはもちろん持っていくし、開封済みの日用品で残ってしまうものは、私のお家で引き取ることにした。

 そんな日曜日、いつものように持ってきたお弁当を食べながらのお昼ごはんの時間。

 先生はお仕事をしている予備校での話をしてくれた。

「結花は……、若林を覚えているか?」

「えっ? あの2年2組で一緒だった若林さんですか?」

「そうだ。夏休みが始まってから学生講師として入ってきたんだ。あまり結花にはいい思い出がないと思うけどな……」

 先生も、こんなことがなければ私に言うつもりはなかったそう。

「あいつを俺の後任に指名した。最初あいつはどうしてそうなったのか理解していなかった。でも、俺は若林しか指名するつもりはなかった」

「そうなんですか……」



 若林千秋さん、あの年の2年2組の中では女子のリーダー格だったと思う。

 そして、私のことをあまり良くは思われていなかったことも覚えている。それどころか、私が学級委員をやることで、先生との距離を縮めたと勝手に誤解しては、いろいろと嫌がらせも受けた。

 どの時代にもいるんだよね。小学校の時も同じようなことがあったし。

 そういう子は、体が大きくてお化粧とかもして周りより大人だと誇示したいタイプだと分かっていたから、なるべく関わらないようにしていたっけ。

 でも、あの修学旅行での雨の中に飛び出してしまった事件も、そのグループの言いがかりが原因だったから……。

 私が高校を退学したことで、彼女にとって邪魔はいなくなったはずだった。

 でも、この情報を聞いておいてよかった。まさかあんな形で再び顔を見ることになるとは思ってもいなかったんだもの。
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