27 / 42
26.年相応と王道と単純
しおりを挟む
剛磨はからかうと面白い。でもやり過ぎると後が面倒そうだし、ここらへんで止めておこう。
「じゃあ改めて。ゴウマ、おはよう」
「………はよ」
そっぽを向いたままだったが、今日のところはこれで勘弁してやるか…なんてね。にしても、耳が赤くなってるよ~。
何にしても挨拶を返しただけでも進歩したと思わないとね。
「で、鍛練。付き合えよ」
「嫌だよ」
「なんで?」
「僕は今忙しい。ゴウマこそ、急に鍛練に付き合え、なんて…どうして?」
鍛練なんて一人で筋トレでもなんでもしてたら良いのに、どうして僕を相手にしたいのか。
第一、僕は朝食の準備中だもの。やらないよ。
「さっき言っただろ、体鈍りそうだから」
「なら、どうして僕?」
「お前、オレのことを簡単にあしらっただろ。余計な動きは一切しないで、最低限の力で。そういう奴は強いってのが、オレの経験則だからな!」
自慢気に話す剛磨を横目に鍋が焦げないようにかき混ぜつつ、灰汁を掬いとっていく。
腕っぷしは強そうだもんなぁ…。きっと今までも結構絡まれたりしたんだろうな。そしてその度に蹴散らしていたんだろう。
「だからオレの相手をしてくれ」
「今は忙しいと僕は言っただろう。やらない」
「ちょっとくらい付き合えよ。減らないだろ」
「時間が減る」
「あー言えば、こー言う!」
「どっちが!」
相手をしないように冷たく突き放す言い方をしても全く堪えてないようで、剛磨は諦める気配がない。
これじゃあ子供の喧嘩だ、もういい加減にして欲しい。
「チッ。…………じゃあ、いつならできる?」
「え~~……」
「なんだよ」
「諦めてよ」
「やなこった。お前が折れるまでしつこく付きまとってやる」
「うわ、迷惑」
ニヤリと口角を上げて、何となく剛磨は楽しそうだな。こういうやり取りやったこと無いのかな? あ~、やる相手がいなかったのか。
「な~、いつなら良いんだよ?」
「そのうち、気が向いたらね」
「相手してくれんのか!?」
「してあげても良いよ?」
「おっし! 約束破んなよ!」
「はいはい」
お~笑った。白い歯を見せてニカッと笑うこの笑顔は年相応って感じだな~。
そういう顔をもう少し見せれば、皆とも打ち解けられるだろうに……。勿体無いな。
「なぁ、ところでさ。さっきから気になってたんだけどよ」
「ん?」
「両肩に乗ってんの、なに? 昨日はいなかったよな?」
「この子達の事は皆が起きたら話すよ」
「ふーん…」
急にフレンドリーになって逆に気味が悪いよ。
あれ…なんか興味持ってる? 肩に視線を感じる。
ん~これはもしや……。
『テト、ゼファー。もしゴウマが触りたいって言ったら、触らせても良い?』
『え~、アタシは嫌なのよ』
『ボクはちょっとだけなら良いよ』
『分かった』
一応、念の為に確認をとっておかないとね。
いきなり触らせて反撃されたら危ないしさ。
「ゴウマ、もしかして…触りたい?」
「はぁっ!? い…いぃ、いや、別にっ……そんなことは…」
とか言いながらも視線はバッチリ感じてるよ、肩に。正確には肩に乗ってる2体に。
素直じゃないなぁ、本当にひねくれた性格してるよ。
「猫のほうだったら触っても良いって。でも優しくね」
「そ、そこまで言うなら触ってやっても…」
強面男子のツンデレは要りませーん。
不良は小動物に優しいって漫画みたいな設定だよね~。ほら、捨て猫に餌をあげたり、雨降った日には傘を置いたりするタイプ。
なんてことを考えてる間に、剛磨は恐る恐るといった感じで手を伸ばしてゼファーの背中を撫でている。
そうか、人間だけじゃなくて動物にも怖がられていたのかもしれない。だから触り方も分からないのかも。
「そうそう。上手いよ、その感じ」
「そ、そうか」
ちらりと横目で剛磨の顔を盗み見ると、初めて見る穏やかな優しい顔をしている。
本当に勿体無い。今なら怖がられないのに。
不意に顔を上げた剛磨としっかり目が合ってしまい、驚いた後に思いっ切り顔を背けられた。
でもこれは単なる照れ隠しだな、だって耳が赤いもの。
「ふふっ」
「…なんだよ」
「なんでも無いから気にしないで良いよ」
「なんかムカつく」
付き合い難いと思っていたけれど、案外話しやすいのかもしれないな。
「お前、ホントに19歳か?」
「急に何?」
「19っつったらオレより年下だろ。でもお前は年下っぽくない」
「へ~…?」
意外と鋭いね。直感かな?
「それに年下がオレより強そうとか気に食わない」
「ふはっ、なんだよそれ」
思ったより単純な理由に思わず笑ってしまった。
2人で顔を見合わせて耐えきれずに、同時にまた笑う。
「は~、久しぶりに笑ったわ」
「ゴウマはいつもしかめっ面してるからだよ。どうせ元の世界でもそうだったんだろ」
「お前ってホント、ムカつく」
「そりゃどーも」
「マジでムカつくわ、お前」
他愛のない言葉のやり取りを繰り返すが、どうしても気になる事がひとつ。
「お前じゃないよ」
「あ?」
「僕はお前じゃない。名前がある」
「あ~……」
そう言うと気まずそうに頭を掻いて視線をさまよわせている。
剛磨はまだ一度も僕の名前を呼んでいない。
これから一緒に行動することが多いのに、お前呼びを続けさせるつもりなんて更々無い。
「ゴウマ、僕の名前、教えただろう?」
「あぁ」
「じゃあ名前で呼んでくれない?」
「はいよ。………ルーティス」
今度は真っ直ぐ目を合わせてきた。
少しずつ剛磨の事が分かってきた気がする。
「じゃあ改めて。ゴウマ、おはよう」
「………はよ」
そっぽを向いたままだったが、今日のところはこれで勘弁してやるか…なんてね。にしても、耳が赤くなってるよ~。
何にしても挨拶を返しただけでも進歩したと思わないとね。
「で、鍛練。付き合えよ」
「嫌だよ」
「なんで?」
「僕は今忙しい。ゴウマこそ、急に鍛練に付き合え、なんて…どうして?」
鍛練なんて一人で筋トレでもなんでもしてたら良いのに、どうして僕を相手にしたいのか。
第一、僕は朝食の準備中だもの。やらないよ。
「さっき言っただろ、体鈍りそうだから」
「なら、どうして僕?」
「お前、オレのことを簡単にあしらっただろ。余計な動きは一切しないで、最低限の力で。そういう奴は強いってのが、オレの経験則だからな!」
自慢気に話す剛磨を横目に鍋が焦げないようにかき混ぜつつ、灰汁を掬いとっていく。
腕っぷしは強そうだもんなぁ…。きっと今までも結構絡まれたりしたんだろうな。そしてその度に蹴散らしていたんだろう。
「だからオレの相手をしてくれ」
「今は忙しいと僕は言っただろう。やらない」
「ちょっとくらい付き合えよ。減らないだろ」
「時間が減る」
「あー言えば、こー言う!」
「どっちが!」
相手をしないように冷たく突き放す言い方をしても全く堪えてないようで、剛磨は諦める気配がない。
これじゃあ子供の喧嘩だ、もういい加減にして欲しい。
「チッ。…………じゃあ、いつならできる?」
「え~~……」
「なんだよ」
「諦めてよ」
「やなこった。お前が折れるまでしつこく付きまとってやる」
「うわ、迷惑」
ニヤリと口角を上げて、何となく剛磨は楽しそうだな。こういうやり取りやったこと無いのかな? あ~、やる相手がいなかったのか。
「な~、いつなら良いんだよ?」
「そのうち、気が向いたらね」
「相手してくれんのか!?」
「してあげても良いよ?」
「おっし! 約束破んなよ!」
「はいはい」
お~笑った。白い歯を見せてニカッと笑うこの笑顔は年相応って感じだな~。
そういう顔をもう少し見せれば、皆とも打ち解けられるだろうに……。勿体無いな。
「なぁ、ところでさ。さっきから気になってたんだけどよ」
「ん?」
「両肩に乗ってんの、なに? 昨日はいなかったよな?」
「この子達の事は皆が起きたら話すよ」
「ふーん…」
急にフレンドリーになって逆に気味が悪いよ。
あれ…なんか興味持ってる? 肩に視線を感じる。
ん~これはもしや……。
『テト、ゼファー。もしゴウマが触りたいって言ったら、触らせても良い?』
『え~、アタシは嫌なのよ』
『ボクはちょっとだけなら良いよ』
『分かった』
一応、念の為に確認をとっておかないとね。
いきなり触らせて反撃されたら危ないしさ。
「ゴウマ、もしかして…触りたい?」
「はぁっ!? い…いぃ、いや、別にっ……そんなことは…」
とか言いながらも視線はバッチリ感じてるよ、肩に。正確には肩に乗ってる2体に。
素直じゃないなぁ、本当にひねくれた性格してるよ。
「猫のほうだったら触っても良いって。でも優しくね」
「そ、そこまで言うなら触ってやっても…」
強面男子のツンデレは要りませーん。
不良は小動物に優しいって漫画みたいな設定だよね~。ほら、捨て猫に餌をあげたり、雨降った日には傘を置いたりするタイプ。
なんてことを考えてる間に、剛磨は恐る恐るといった感じで手を伸ばしてゼファーの背中を撫でている。
そうか、人間だけじゃなくて動物にも怖がられていたのかもしれない。だから触り方も分からないのかも。
「そうそう。上手いよ、その感じ」
「そ、そうか」
ちらりと横目で剛磨の顔を盗み見ると、初めて見る穏やかな優しい顔をしている。
本当に勿体無い。今なら怖がられないのに。
不意に顔を上げた剛磨としっかり目が合ってしまい、驚いた後に思いっ切り顔を背けられた。
でもこれは単なる照れ隠しだな、だって耳が赤いもの。
「ふふっ」
「…なんだよ」
「なんでも無いから気にしないで良いよ」
「なんかムカつく」
付き合い難いと思っていたけれど、案外話しやすいのかもしれないな。
「お前、ホントに19歳か?」
「急に何?」
「19っつったらオレより年下だろ。でもお前は年下っぽくない」
「へ~…?」
意外と鋭いね。直感かな?
「それに年下がオレより強そうとか気に食わない」
「ふはっ、なんだよそれ」
思ったより単純な理由に思わず笑ってしまった。
2人で顔を見合わせて耐えきれずに、同時にまた笑う。
「は~、久しぶりに笑ったわ」
「ゴウマはいつもしかめっ面してるからだよ。どうせ元の世界でもそうだったんだろ」
「お前ってホント、ムカつく」
「そりゃどーも」
「マジでムカつくわ、お前」
他愛のない言葉のやり取りを繰り返すが、どうしても気になる事がひとつ。
「お前じゃないよ」
「あ?」
「僕はお前じゃない。名前がある」
「あ~……」
そう言うと気まずそうに頭を掻いて視線をさまよわせている。
剛磨はまだ一度も僕の名前を呼んでいない。
これから一緒に行動することが多いのに、お前呼びを続けさせるつもりなんて更々無い。
「ゴウマ、僕の名前、教えただろう?」
「あぁ」
「じゃあ名前で呼んでくれない?」
「はいよ。………ルーティス」
今度は真っ直ぐ目を合わせてきた。
少しずつ剛磨の事が分かってきた気がする。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
卒業パーティーのその後は
あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。 だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。
そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。
【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。
もる
ファンタジー
剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる