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二章:冷たい鳥籠(雛子過去編)
12:カナリヤ*
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屋敷に来た時はまだ中性的な子供だった雛子も、成長するにつれて女性的な曲線の身体つきになってきた。
流石に真っ平らではなかったにしろオーブンの中のシュークリームのように大きく膨らんできた乳房。
もともと骨盤が広めだったので尻も丸々と。
腰は筋肉の層もあり括れているので太っている訳でもないが、下腹に少しばかり柔らかな肉まで。
どんな状況でも腹は減るし生きる為には食べねばならない。
かといって、そこまで暴食した覚えはないのだが。
淡い金髪は椿油でこまめにケアされつつ腰よりも伸びてきた。
頭の重みを自覚しながらも当主の好みに合わせて切れない辺りラプンツェルのようである。
長い髪にグラマーな身体、それでも相変わらず幼い顔立ちの無表情なので妙に色気が備わっていた。
「雛子……あぁ、儂のカナリア……」
そんな雛子のことを当主がこう呼ぶようになったのはいつからか。
縋るような、崇拝のような、嘆息混じりの声。
抱き着く当主の腕もまた以前と違う。
乱暴に引き寄せるのでなく、制服の背中に巻き付けるようにして豊かな胸元に顔を埋める形。
どういうことかなんて雛子の方が知りたい。
あれから主人と愛玩具の関係は数年掛けてゆっくりと移り変わっていった。
そうして雛子が高校生になる頃には引っくり返り、もはや逆転とも言えそうな現状。
ベッドで、書斎で、いやらしいことなら散々された。
全身を開発済みの後にこんな触れ方をするようになるとは。
雛子の選んだ武器がじわじわと効いてきたのかもしれない。
媚びず、欲求を否定せず、悠々とした余裕。
受け身であろうと「こちらが抱いてやる」の心構え。
しかしあれらは飽くまでも自分が折れない為であって、当主のことをどうこうしようなどとは全く思っていなかったのに。
睨めっこに勝った結果なのだろうか、これは。
雛子が底無しの闇を宿した目を向けると、最初のうち当主は「見るな」とたじろいでいたのに。
いつしか怯えつつもあちらからも目が離せずに息を詰まらせるようになる。
そして雛子が微笑んでみせると、やっと呼吸を取り戻しつつ苦しげな色はいつまでも消えず。
それとも五十路を迎えたことで老い先を儚み、急に気力が衰えたりしたのだろうか。
情交を求めるだけでなく、雛子の前で愚痴や弱音を吐くようになった。
家を継ぐ為だけに生まれて親に言いなりで生きてきたこと。
「芸術に理解が深い文化人」と知られているが本当は自分が画家になりたかったこと。
妻子を持った後も美しい物にしか興味が持てず、良き夫や良き父にはなれなかったこと。
同情などは欠片も起きず、そんなことを打ち明けられてもどうしろと。
時には業務上の守秘義務がある話までも溢すようになり、それは流石に不味いのではと思いつつも雛子は黙って聴き手に徹するのみ。
そういう時の当主は膝枕で無防備、これがあの悍ましい男か。
眠る前は子守唄まで要求してまるで赤ん坊。
ただし身体は大人なので、ホットミルクにはブランデーを一匙との注文。
ならば、さしずめこれは離乳食だろうか。
雛子がぐちゃぐちゃに噛んだパンを欲しがることまであり、当主の口の中へ吐き捨ててやると恍惚とした表情で味わう。
どうしたものか、以前と別方向で気持ち悪い。
私は一体何をやっているのだろう。
青褪めた顔をしても暖色に光るランプは血色良く見せ、ただでさえ無表情を保つ雛子は変化が出難い。
初めてパンを欲しがった時は正直なところ吐き気を覚えたものだが、何とか堪えて何食わぬ様で従った。
調教されていた時も相手を観察と分析する為に冷静な面は残すようにしていたが、今は娼婦というか女王様の仮面を被って耐える。
確かに犯されることは無くなった。
しかし愛玩具として甚振られていた今までよりも良いか、と問われても困ってしまう。
年単位で異常環境に居て麻痺しそうになるが、五十路の男が女子高校生に甘えている図なんて十分に奇怪。
それに、性行為そのものが完全に無くなった訳でないのだ。
兆しが現れた時、当主は騎乗位など女性優勢の体位で攻められることを好んでいた。
今はというと、書斎の椅子に座らされているのは制服姿の雛子。
向かい合わせの当主は床に座り込んで犬のようにこちらを見上げている。
SMに於いて「SはMの奴隷」とはよく言ったもので、当主は何を望んでいるのか女王様の仮面を被った雛子が自分で考えねばならない。
それもこちらが主導権を握って好き勝手弄んでいる様を装って。
まったく何たる我儘なことか。
考えてみれば、確かに調教を受けていた頃は言うことを聞くだけだったのである意味楽だった。
雛子が自分で望んだ訳でないが、こればかりは天性の才能とも言うべきか。
暗く深い、強い魔力を持つ目は底を見せない。
だからこそ惹かれて魅入られる。
椅子から伸ばした脚、雛子が爪先で当主の顎を持ち上げてみせた。
期待した表情の男を冷たく見下ろしながら、軽くビンタのように浅黒い頬を叩いてみせる。
以前ならとんだ無礼だが今はむしろ罰せられたいとあちらから望んでいること。
そのまま足を取られて頬擦りされるのはあまり良い気分でもないが、好きにさせておいた。
爪先を包む布を噛んで、当主の口に靴下を脱がされる。
本物の犬ならきっと可愛いと思えたのだろうけれど。
唇から顎、喉に落ちてから胸に腹。
裸の爪先を下げて当主の肌を辿り、行き着いた先は股座。
かつて雛子の純潔を奪った禍々しい凶器。
恐ろしい筈の肉塊は素足が触れる前から反応を始めていた。
根本から爪先で撫で上げると、たったこれだけで硬さを増していく。
今ではこうして足蹴にされて興奮するようになってしまった。
両足で挟み込むと脚が開いてしまうので下着が見えないようにスカートの裾を直す。
足の親指と人差し指で雄の先端を摘む感じで刺激すると、当主は痛みで顔を顰めながらも泥々に濡れる。
やはり犬のように当主の息が荒くなってきたところで、一度足を離して雛子も床に座り込んだ。
眼鏡を奪って男の両頬を掴む。
私だけを見ていなさいと、暗に刺す。
そうして自分からワンピースの胸元を開くと、深い谷間と豪奢なレースのブラに包まれた膨らみ。
フロントホックを外すと、しっかりと実った乳房は弾ける勢いで露わになってしまう。
焦れていた当主には堪らない光景。
涎が垂れそうな口元でコーラルピンクの乳首に吸い付き、飢えた赤ん坊のように音を立ててしゃぶる。
「……ん……ッ、ふぅ……」
あまり強く吸われては歯を立てられずとも痛む。
声を上げずに耐え、雛子は当主の下腹部へ手を伸ばした。
先程、素足で扱いていただけで腫れ上がっていたので限界は近い。
授乳の状態から指先を絡み付かせると、それほど時を置かずに射精の飛沫が跳ねた。
会話は視線と吐息のみ。
言葉よりもずっと豊かな色を持った湿度。
洋館の暗い書斎には前から倫理など無く、暗闇は退廃的に淀んでいた。
ランプの光に曝け出されるのは淫靡な背徳。
今はもう啜り泣いていた子供なら居なくなったが、ある意味以前よりも更に倒錯的な匂いは濃い。
それから当主からの打ち明け話は雛子のことも含んでいた。
子供の頃に逃がしてしまったという大事なカナリヤ。
雛子が小学生の頃に一目見た時から金色が重なり、興味を持ってしまったと。
両親を亡くした時、強引にも手元へ置こうとしたのはそういうことか。
実際に鳥籠へ閉じ込めたら逆転してしまい、この有様な訳だが。
だとしても当主が大事に持っていた純真の象徴がカナリヤだというのなら、なんて中途半端なことか。
雛子を愛鳥と重ねるのは勝手だが、それなら組み敷いたりしなければ良かったのに。
汚してしまった後に何を言われても戯言に過ぎず。
そういえば、美術雑誌の人形特集号で読んだドール作家のインタビュー記事を思い出した。
「好き勝手に扱いたい女が欲しいなら人形を買え」というよくある言い草も、ドール愛好家からすれば憤慨してしまうもの。
人形は動かないのだから美しく着飾るのも清潔に保つのも持ち主がやらねば。
愛を込めて世話出来ない奴は人形すら愛せないと。
そうしているうちに持ち主の自分が下僕で、人形の方が主人になってしまうのだ。
際どい部分に触れたりそういったポーズの写真を撮ろうとすると「やめろ」という声まで聴こえて、もう好き勝手に扱えない。
いつしか「大金を出して体の不自由な美少女のお世話をさせてもらう」という状態が出来上がると。
ただし、これは当主と過ごした最後の一年の話。
こうした妙な遊びに付き合わされていたものの犯されることは無くなったのだ。
開発された身体が性衝動に駆られても、まだ自慰で治まる程度なので何とか耐えられていたのに。
そうして雛子が高校二年生になった時、二人目のあの男が屋敷に現れた。
流石に真っ平らではなかったにしろオーブンの中のシュークリームのように大きく膨らんできた乳房。
もともと骨盤が広めだったので尻も丸々と。
腰は筋肉の層もあり括れているので太っている訳でもないが、下腹に少しばかり柔らかな肉まで。
どんな状況でも腹は減るし生きる為には食べねばならない。
かといって、そこまで暴食した覚えはないのだが。
淡い金髪は椿油でこまめにケアされつつ腰よりも伸びてきた。
頭の重みを自覚しながらも当主の好みに合わせて切れない辺りラプンツェルのようである。
長い髪にグラマーな身体、それでも相変わらず幼い顔立ちの無表情なので妙に色気が備わっていた。
「雛子……あぁ、儂のカナリア……」
そんな雛子のことを当主がこう呼ぶようになったのはいつからか。
縋るような、崇拝のような、嘆息混じりの声。
抱き着く当主の腕もまた以前と違う。
乱暴に引き寄せるのでなく、制服の背中に巻き付けるようにして豊かな胸元に顔を埋める形。
どういうことかなんて雛子の方が知りたい。
あれから主人と愛玩具の関係は数年掛けてゆっくりと移り変わっていった。
そうして雛子が高校生になる頃には引っくり返り、もはや逆転とも言えそうな現状。
ベッドで、書斎で、いやらしいことなら散々された。
全身を開発済みの後にこんな触れ方をするようになるとは。
雛子の選んだ武器がじわじわと効いてきたのかもしれない。
媚びず、欲求を否定せず、悠々とした余裕。
受け身であろうと「こちらが抱いてやる」の心構え。
しかしあれらは飽くまでも自分が折れない為であって、当主のことをどうこうしようなどとは全く思っていなかったのに。
睨めっこに勝った結果なのだろうか、これは。
雛子が底無しの闇を宿した目を向けると、最初のうち当主は「見るな」とたじろいでいたのに。
いつしか怯えつつもあちらからも目が離せずに息を詰まらせるようになる。
そして雛子が微笑んでみせると、やっと呼吸を取り戻しつつ苦しげな色はいつまでも消えず。
それとも五十路を迎えたことで老い先を儚み、急に気力が衰えたりしたのだろうか。
情交を求めるだけでなく、雛子の前で愚痴や弱音を吐くようになった。
家を継ぐ為だけに生まれて親に言いなりで生きてきたこと。
「芸術に理解が深い文化人」と知られているが本当は自分が画家になりたかったこと。
妻子を持った後も美しい物にしか興味が持てず、良き夫や良き父にはなれなかったこと。
同情などは欠片も起きず、そんなことを打ち明けられてもどうしろと。
時には業務上の守秘義務がある話までも溢すようになり、それは流石に不味いのではと思いつつも雛子は黙って聴き手に徹するのみ。
そういう時の当主は膝枕で無防備、これがあの悍ましい男か。
眠る前は子守唄まで要求してまるで赤ん坊。
ただし身体は大人なので、ホットミルクにはブランデーを一匙との注文。
ならば、さしずめこれは離乳食だろうか。
雛子がぐちゃぐちゃに噛んだパンを欲しがることまであり、当主の口の中へ吐き捨ててやると恍惚とした表情で味わう。
どうしたものか、以前と別方向で気持ち悪い。
私は一体何をやっているのだろう。
青褪めた顔をしても暖色に光るランプは血色良く見せ、ただでさえ無表情を保つ雛子は変化が出難い。
初めてパンを欲しがった時は正直なところ吐き気を覚えたものだが、何とか堪えて何食わぬ様で従った。
調教されていた時も相手を観察と分析する為に冷静な面は残すようにしていたが、今は娼婦というか女王様の仮面を被って耐える。
確かに犯されることは無くなった。
しかし愛玩具として甚振られていた今までよりも良いか、と問われても困ってしまう。
年単位で異常環境に居て麻痺しそうになるが、五十路の男が女子高校生に甘えている図なんて十分に奇怪。
それに、性行為そのものが完全に無くなった訳でないのだ。
兆しが現れた時、当主は騎乗位など女性優勢の体位で攻められることを好んでいた。
今はというと、書斎の椅子に座らされているのは制服姿の雛子。
向かい合わせの当主は床に座り込んで犬のようにこちらを見上げている。
SMに於いて「SはMの奴隷」とはよく言ったもので、当主は何を望んでいるのか女王様の仮面を被った雛子が自分で考えねばならない。
それもこちらが主導権を握って好き勝手弄んでいる様を装って。
まったく何たる我儘なことか。
考えてみれば、確かに調教を受けていた頃は言うことを聞くだけだったのである意味楽だった。
雛子が自分で望んだ訳でないが、こればかりは天性の才能とも言うべきか。
暗く深い、強い魔力を持つ目は底を見せない。
だからこそ惹かれて魅入られる。
椅子から伸ばした脚、雛子が爪先で当主の顎を持ち上げてみせた。
期待した表情の男を冷たく見下ろしながら、軽くビンタのように浅黒い頬を叩いてみせる。
以前ならとんだ無礼だが今はむしろ罰せられたいとあちらから望んでいること。
そのまま足を取られて頬擦りされるのはあまり良い気分でもないが、好きにさせておいた。
爪先を包む布を噛んで、当主の口に靴下を脱がされる。
本物の犬ならきっと可愛いと思えたのだろうけれど。
唇から顎、喉に落ちてから胸に腹。
裸の爪先を下げて当主の肌を辿り、行き着いた先は股座。
かつて雛子の純潔を奪った禍々しい凶器。
恐ろしい筈の肉塊は素足が触れる前から反応を始めていた。
根本から爪先で撫で上げると、たったこれだけで硬さを増していく。
今ではこうして足蹴にされて興奮するようになってしまった。
両足で挟み込むと脚が開いてしまうので下着が見えないようにスカートの裾を直す。
足の親指と人差し指で雄の先端を摘む感じで刺激すると、当主は痛みで顔を顰めながらも泥々に濡れる。
やはり犬のように当主の息が荒くなってきたところで、一度足を離して雛子も床に座り込んだ。
眼鏡を奪って男の両頬を掴む。
私だけを見ていなさいと、暗に刺す。
そうして自分からワンピースの胸元を開くと、深い谷間と豪奢なレースのブラに包まれた膨らみ。
フロントホックを外すと、しっかりと実った乳房は弾ける勢いで露わになってしまう。
焦れていた当主には堪らない光景。
涎が垂れそうな口元でコーラルピンクの乳首に吸い付き、飢えた赤ん坊のように音を立ててしゃぶる。
「……ん……ッ、ふぅ……」
あまり強く吸われては歯を立てられずとも痛む。
声を上げずに耐え、雛子は当主の下腹部へ手を伸ばした。
先程、素足で扱いていただけで腫れ上がっていたので限界は近い。
授乳の状態から指先を絡み付かせると、それほど時を置かずに射精の飛沫が跳ねた。
会話は視線と吐息のみ。
言葉よりもずっと豊かな色を持った湿度。
洋館の暗い書斎には前から倫理など無く、暗闇は退廃的に淀んでいた。
ランプの光に曝け出されるのは淫靡な背徳。
今はもう啜り泣いていた子供なら居なくなったが、ある意味以前よりも更に倒錯的な匂いは濃い。
それから当主からの打ち明け話は雛子のことも含んでいた。
子供の頃に逃がしてしまったという大事なカナリヤ。
雛子が小学生の頃に一目見た時から金色が重なり、興味を持ってしまったと。
両親を亡くした時、強引にも手元へ置こうとしたのはそういうことか。
実際に鳥籠へ閉じ込めたら逆転してしまい、この有様な訳だが。
だとしても当主が大事に持っていた純真の象徴がカナリヤだというのなら、なんて中途半端なことか。
雛子を愛鳥と重ねるのは勝手だが、それなら組み敷いたりしなければ良かったのに。
汚してしまった後に何を言われても戯言に過ぎず。
そういえば、美術雑誌の人形特集号で読んだドール作家のインタビュー記事を思い出した。
「好き勝手に扱いたい女が欲しいなら人形を買え」というよくある言い草も、ドール愛好家からすれば憤慨してしまうもの。
人形は動かないのだから美しく着飾るのも清潔に保つのも持ち主がやらねば。
愛を込めて世話出来ない奴は人形すら愛せないと。
そうしているうちに持ち主の自分が下僕で、人形の方が主人になってしまうのだ。
際どい部分に触れたりそういったポーズの写真を撮ろうとすると「やめろ」という声まで聴こえて、もう好き勝手に扱えない。
いつしか「大金を出して体の不自由な美少女のお世話をさせてもらう」という状態が出来上がると。
ただし、これは当主と過ごした最後の一年の話。
こうした妙な遊びに付き合わされていたものの犯されることは無くなったのだ。
開発された身体が性衝動に駆られても、まだ自慰で治まる程度なので何とか耐えられていたのに。
そうして雛子が高校二年生になった時、二人目のあの男が屋敷に現れた。
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