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1.…はい?!
しおりを挟む始まりは、とあるパーティーでのこと。
思い返せば、その日は体調が悪いわけではないにも関わらず、どこかいつもと違っていた。
何もない所で躓きそうになるし、パーティーへと出掛ける為にドレスに身を包み、屋敷の外に出た瞬間、突風が吹いてセットした髪の毛がぐちゃぐちゃ。手直しする羽目に。
パーティーへと来れば、グラスを持ったわたくしのドレスの裾を誰かに誤って踏まれ…。
丁度移動しようとしていた私はバランスを崩してしまい、手から離れたグラスの中身はというと…わたくしのドレスだけでなく、側にいた男性にもばしゃりと降り掛かっていた。
「…申し訳ございません。…直ぐにお詫びをさせて頂きますので着いてきて頂けないでしょうか?」
「……あぁ」
その男性は数秒の沈黙の後、ようやく頷くとわたくしの後を着いてきた。
その間もずっと黙りで。
やっぱりこれは、怒っていらっしゃるという事ですわよね…。
申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらある一室へ。
我が公爵家にと用意されていた休憩室だ。
そこに控えていたメイド達に指示を出すと一人は直ぐ様男性のサイズをチェックし、手配をすべく部屋を退出。
もう一人は男性の濡れた服をタオルで拭いてからお茶を用意しに退出。
図らずも部屋に残されたわたくしと男性。
いくらドアの外に見張りがいるからと言っても、この状況はどうなのかしら?そんな考えが頭を過るが、先ずは何よりも謝罪だ。
「わたくし、アスベルグ公爵家・イリーナと申します。この度は大変申し訳ありませんでした。…直ぐに、着替えの手配とお詫びをさせて頂きますので今暫くお待ちになって下さいませ」
ドレスの端を軽く持ち上げ、洗練された優雅なカーテシーを。
そして顔を上げ、男性の顔を伺い見ると視線がばちり、と混じり合う。
先程は慌てていて気にもしなかったが、男性はわたくしと同じ位の年齢で胸元まである茶髪に眼鏡を掛けていた。
その奥の瞳は澄んだ水色で端正な顔立ちをしているのが分かった。
…その上、わたくしの物心ついた頃からのコンプレックス、つり目と正反対の柔らかい目をしている。
申し訳ない気持ちはどこへやら、今のイリーナの心を占めるのはその柔らかい目が“羨ましい”それだけだった。
そんな時、その端正な顔にいつの間にか笑みを浮かべた男性が口を開く。
「…良いね、イリーナ嬢。君のその目は凄くぞくぞくするよ。…ねぇ、僕をその目で蔑む様に見てはくれないだろうか?」
………………は、い?!
男性の口から出た思わぬ言葉に、目を見開き思考停止するイリーナだった。
___イリーナはまだ知らない。
この規格外な発言をした男性が、変装したこの国の第三王子だということを。
そして、この日を境に変態王子に気に入られ、まとわりつかれる日々を送ることも。
イリーナの受難は始まったばかりだ。
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