皆様覚悟してくださいませ。偽聖女の義妹から全て取り戻します。今まで受けた仕打ちは倍にしてお返し致します。

くろねこ

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二十五



王太子セドリック

――聞いた瞬間、ドン引きしてから耐えきれなかった件

王城・執務室。

午後の光が差し込む中、
セドリック・フォン・ヴェルトリナスは、
側近から渡された報告書に目を通していた。

数行、読んで。

――止まる。

「……待って」

紙を持つ指が、ぴたりと止まる。

「今、なんて?」

側近は、表情を一切変えずに答えた。

「マリエル・フォン・ハーベルト様が、
“結果を出そうとして全力で空回りした件”の詳細です」

「いや、そうじゃなくて」

セドリックは、報告書を指で叩く。

「祈りの回数を三倍に増やす」
「派手な聖女演出で不信感を招く」
「最後に“確実に治す”と断言して失敗」

一拍。

「……これ、全部やったの?」

「はい」

即答。

セドリックは、椅子に深く沈んだ。

「……地獄か」

理解が早い王太子彼は、頭を抱えた。

「完全に詰んでるじゃないか。努力はしている。逃げてもいない」

「でも............方向が全部ズレてる」

側近が、慎重に補足する。

「オリビア様からは、“向いていないことを認めろ”と」

「うわぁ……」

セドリックは、天井を仰いだ。

「正論すぎる。逃げ場ゼロだ」

しばらく、沈黙。彼は、冷静に考える。

(聖女としての才覚はない)
(でも、立場はある)
(母は成り上がりで、本人は何も積んでいない)

(それを――)

「全部、理解した上で“育成対象”にしてるのか」

声が低くなる。

「……怖」

そして、耐えきれなくなる側近が、続けた。

「なお、オリビア様はこう仰ったそうです」

紙を読み上げる。

「『努力は評価しない』」
「『結果を出す役割に移れ』」
「『聖女を降りるのも、立派な成果』」

沈黙。

次の瞬間。

「……っ」

セドリックの肩が、震えた。

「……は……」

堪えきれず、吹き出す。

「はは……っ」

「ははははははは!!」

完全に、腹を抱えた。

「なにそれ!!教育じゃない!!現実叩き込み型育成ゲームじゃないか!!」

机を叩きながら、笑う。

「逃げたら詰み!努力しても方向違えば詰み!役割変えないと詰み!」

側近たちは、誰一人笑えない。

「殿下……」
「不謹慎では……」

「いや、無理」

セドリックは、涙を拭きながら言った。

「これで笑わないのは無理だ」

最終評価、笑いが収まったあと、彼は、真顔に戻った。

「……でもさ」

低く、真剣な声。

「これ、情けじゃない」

側近が頷く。

「はい」
「完全に“生かす判断”です」

「そう」

セドリックは、報告書を閉じる。

「潰さない」
「切り捨てない」

「でも」
一拍。
「向いてない場所からは、容赦なく降ろす」

「王でも、貴族でも」
「できないことは、できない」

椅子から立ち上がり、窓を見る。

「……オリビア」

小さく、呟く。

「君」
「やってること、えげつないほど合理的だよ」

そして、ふっと笑った。

「これはもう。俺が夢中になるのも、無理ないな」

背後で、側近が静かに息を吸った。

(殿下……)
(完全に、惚れていらっしゃる……)

セドリックは、振り返らずに言う。

「次の報告も、楽しみにしてる」

「――彼女が、次に誰を“育て直す”のか」

その声は、警戒ではなく、期待に満ちていた。




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