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第2章 巫女、奔走する
6.蘇る田畑
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翌日、百代はカガチとウズを引き連れて、隼人に一部始終を報告するため草田瀬の村へ降りていった。
村の様子は、数日前と様変わりしていた。田んぼには澄んだ水が張り、青い稲がぴんと力強く伸びている。畑の野菜も地面に倒れていた体を起こし、太陽に向かって葉を立ち上げていた。
「奇跡だ、奇跡が起きた!」
「どこかの神様が助けてくれたのかなぁ。ありがてえ、ありがてえ……」
田んぼの周りに集まった村人たちは、天に向かって手を合わせたり、涙を流したりしている。カガチはその様子を白い目を向けながら嘲笑っている。
「馬鹿な人間どもだな。どこかじゃなくて、主さまのお陰だろ」
「でも主さま、みんなに感謝されてる」
「ああ、この調子でもっと主さまを敬えばいい!」
ふんわり笑うウズに、カガチも釣られて得意気な顔になる。言葉は違えど、主の功績が認められているのが二人とも嬉しいのだろう。
わいわい話し合う二人を連れて、百代があぜ道を歩いていくと、後ろから幼い声に呼びかけられた。
「お姉ちゃん!」
振り向くと、隼人がこちらに手を振っていた。その隣で、とよが小さく会釈をしている。
隼人は百代のもとまで走ってくると、嬉しそうに飛び跳ねた。
「巫女のお姉ちゃん! 水を戻してくれたのって、お姉ちゃんたちだよね!?」
隼人の言葉に、周囲の村人たちの視線が集まった。みな、巫女装束姿の百代に気づいて目を丸くしたり、眉間に皺を寄せたりしている。
「あの女、邪神のところのじゃねぇか」
「あいつが水を戻したんだって?」
「隼人は『たち』って言ってたけど、じゃあまさか邪神も……?」
村人たちはひそひそと囁き合いながら、百代に疑いの目を向けている。けれど先日のように、あからさまな敵意を抱いている者はいなかった。
ミズハのことを広めるいい機会かもしれない。
百代は周囲の村人たちにも聞こえるように声を張った。
「そうよ。私と水神のミズハで、水源にいた蛇を倒して水を戻してきたわ」
百代の言葉に周囲からひときわ大きなざわめきが上がる。
一方の隼人は目を輝かせ、嬉しそうに飛び跳ねた。
「やっぱり! ありがとう、お姉ちゃん! お父さんもお母さんも、すごく喜んでた!」
「隼人くんが私たちを信じてくれたお陰よ」
百代が隼人の頭を軽く撫でる。その後ろで、とよが深く頭を下げていた。
「すみません。私、あなたたちのことを信じずに……」
「いいわよ。あの時はそれで良いって言ったし。それより、聞きたいことがあるんだけど」
今日、村まで来た目的は、隼人への報告とは別にもう一つある。水源にあった、蛇の水人形――あれを仕掛けた人物を調べるためだ。
「もちろんです。ですが……」
とよは周りに集まっている村人たちに、ちらりと目をやった。
「うちにいらっしゃいませんか? ここでは落ち着いて話せませんから」
静かな場所でゆっくり話せるなら願ってもない。百代は即座にうなずいた。
「じゃあお邪魔しようかしら。この子たちも一緒でいい?」
「ええ。ですが二人は……どなたでしょう?」
とよはウズとカガチに戸惑いの目を向ける。
「ミズハの眷属で私のお目付役らしいの。といっても、ちょっと生意気な普通の子供だから安心していいわ」
「普通の子供とはなんだ! 神の眷属だぞ!」
「ね、生意気でしょ?」
噛みついてくるカガチに肩をすくめると、とよは表情を和らげた。
「ふふっ、かわいらしいですね。では皆さん、こちらへ」
とよに連れられ、百代たちは彼女の家へ向かう。
家の前では、穏やかそうな男性が出迎えてくれた。
「巫女の百代さんですね。僕は恭平、妻と子供から話は聞いています」
恭平に促されて茶の間に座ると、隼人が服の裾を引っ張ってきた。
「巫女のお姉ちゃん、神様のお兄ちゃんは今日来てないの?」
「ミズハは今日、お留守番なのよ」
ミズハは「村でのことは君に任せるよ」と言って、社に一人残っている。水源を回復させる神らしい行いをした後でも、やはり人間にはまだ近づきがたく思っているようだ。
それでいい、と百代は思っている。傷が十分癒えるまで、無理に気が引ける場所へ行く必要もない。だが隼人は残念そうに目線を落とした。
「そっかぁ。お兄ちゃんにもお礼したかったな」
「なら、また社に来て、言ってあげてちょうだい。きっと喜ぶから」
「うん!」
隼人は嬉しそうにうなずいた。純粋にミズハを神として信頼している彼の姿に、百代も嬉しくなってくる。続けて隼人と雑談をしていると、とよがお茶を運んで来た。
「どうぞ、熱いのでお気を付けて」
「ありがとう、いただくわね」
食料不足の最中、本当はお茶を出すのも苦しいだろう。気遣いをありがたく思いながらも、百代は一口茶をすすった。湯飲みを置くと、とよと恭平は二人揃って頭を下げる。
「ありがとうございます。妻を救っていただいた上に、村の水を取り戻していただいたなんて」
「なのに私たちは、あなたや社の神様を信じず、本当に申し訳ありませんでした」
「もういいわよ、頭を上げて」
二人の謝罪に、百代は首を横に振って言葉を続けた。
「むしろ、こちらこそお礼を言わないと。ミズハを信じてくれてありがとう」
とよは小さく鼻をすすりながら顔を上げる。
「許していただける上に、そんなことまで……本当に百代さんは寛大ですね」
「あなたたちがミズハを恨む理由も理解できたもの。水源を見に行って余計にね」
水源に水でできた蛇の人形があったこと、その蛇は人為的に作られたものであること、犯人は異能を使う人間の可能性が高いこと。それら全てを百代は二人に話していく。話が進むごとに、とよと恭平の顔が青くなっていった。
「そんな、水不足が誰かの仕業だったなんて……」
「念のため聞きたいんだけれど、この村に異能を使える人はいる?」
恭平は首を横に振る。
「いいえ、草田瀬の村はみんな普通の人間ですから」
「なら犯人は、村の外の人間かしら。水不足が始まった一月前辺りに、村へ誰か来たりしていない?」
「……そういえば、見慣れない人がいたという噂を聞きましたね」
とよの言葉に、百代は思わず身を乗り出した。
「それ、どんな人だったの!?」
「そこまでは……他の方なら何か知っているかもしれませんが」
「そう……でも情報は助かるわ」
外の人間が草田瀬に来ていたことは確実だ。他の村人たちにも話を聞ければ、犯人の手がかりが掴めるだろうか。腕組みをしながら考えていると、ウズとカガチが両側から百代を見上げてきた。
「おい、また村人に話を聞くつもりじゃないだろうな」
「主さまが、危ないことは駄目って」
二人は百代が前と同じく村人たちから傷つけられると思っているのだろう。ミズハからも念を押されているのかもしれない。
「大丈夫よ、多分もう前ほど拒絶されはしないでしょう。でも何も考えず聞くことはしないけどね」
水不足を解決したことで、村人たちの百代やミズハへの警戒心は多少薄れている。再び土を投げられることはないだろう。しかし普通に話しかけても、答えてくれる可能性は低い。
何か良い案はないかと考えながら顔を上げると、壁に猟銃が掛かっているのが目に入った。
「恭平さん、狩りでもするの?」
「ああいえ、あれは僕の父のものです」
恭平の父は村の中でも腕利きの猟師だったらしく、銃や罠を使って獲物を仕留めては村人たちに振る舞っていたという。
「父が獲物を捕ってきたときは、みんな大喜びでした。獣肉といえば、この村ではごちそうでしたから。他に腕利きの猟師はおらず、去年父が亡くなってからは、獣肉も滅多に手に入らなくなってしまいましたけれどね」
「へえ……」
百代は壁にかかった猟銃を見つめる。銃は古いものではあったが、すぐに使えそうなほど丁寧に手入れされていた。きっと恭平が父の亡き後も大事に扱っていたのだろう。
百代は銃を直接扱ったことはないが、回帰する中で銃の扱い方についての本は読んだことがある。それにいつかの人生で用心棒をやっていた頃、野宿中に罠をしかけて獣を捕まえ食べたりもしていた。空腹だったそのときの百代は、肉が焼ける香ばしい匂いに、強烈に惹かれたことを覚えている。
(草田瀬で獣肉はごちそう。しかも水が戻ったばかりで食糧不足は変わらない……)
ひとつの考えが浮かんで来て、百代は恭平に視線を戻す。
「ねえ恭平さん。お父さんの狩猟道具って、まだ使える?」
「使えますけど……」
「じゃあ、ちょっと貸してくれない?」
問いかけた百代に、ウズとカガチはぎょっとする。
「おい、何をする気だ」
百代は猟銃を横目に見ながら、にやりと口角を上げてみせる。
「人間はね、空腹には勝てないのよ」
***
村の様子は、数日前と様変わりしていた。田んぼには澄んだ水が張り、青い稲がぴんと力強く伸びている。畑の野菜も地面に倒れていた体を起こし、太陽に向かって葉を立ち上げていた。
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田んぼの周りに集まった村人たちは、天に向かって手を合わせたり、涙を流したりしている。カガチはその様子を白い目を向けながら嘲笑っている。
「馬鹿な人間どもだな。どこかじゃなくて、主さまのお陰だろ」
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「ああ、この調子でもっと主さまを敬えばいい!」
ふんわり笑うウズに、カガチも釣られて得意気な顔になる。言葉は違えど、主の功績が認められているのが二人とも嬉しいのだろう。
わいわい話し合う二人を連れて、百代があぜ道を歩いていくと、後ろから幼い声に呼びかけられた。
「お姉ちゃん!」
振り向くと、隼人がこちらに手を振っていた。その隣で、とよが小さく会釈をしている。
隼人は百代のもとまで走ってくると、嬉しそうに飛び跳ねた。
「巫女のお姉ちゃん! 水を戻してくれたのって、お姉ちゃんたちだよね!?」
隼人の言葉に、周囲の村人たちの視線が集まった。みな、巫女装束姿の百代に気づいて目を丸くしたり、眉間に皺を寄せたりしている。
「あの女、邪神のところのじゃねぇか」
「あいつが水を戻したんだって?」
「隼人は『たち』って言ってたけど、じゃあまさか邪神も……?」
村人たちはひそひそと囁き合いながら、百代に疑いの目を向けている。けれど先日のように、あからさまな敵意を抱いている者はいなかった。
ミズハのことを広めるいい機会かもしれない。
百代は周囲の村人たちにも聞こえるように声を張った。
「そうよ。私と水神のミズハで、水源にいた蛇を倒して水を戻してきたわ」
百代の言葉に周囲からひときわ大きなざわめきが上がる。
一方の隼人は目を輝かせ、嬉しそうに飛び跳ねた。
「やっぱり! ありがとう、お姉ちゃん! お父さんもお母さんも、すごく喜んでた!」
「隼人くんが私たちを信じてくれたお陰よ」
百代が隼人の頭を軽く撫でる。その後ろで、とよが深く頭を下げていた。
「すみません。私、あなたたちのことを信じずに……」
「いいわよ。あの時はそれで良いって言ったし。それより、聞きたいことがあるんだけど」
今日、村まで来た目的は、隼人への報告とは別にもう一つある。水源にあった、蛇の水人形――あれを仕掛けた人物を調べるためだ。
「もちろんです。ですが……」
とよは周りに集まっている村人たちに、ちらりと目をやった。
「うちにいらっしゃいませんか? ここでは落ち着いて話せませんから」
静かな場所でゆっくり話せるなら願ってもない。百代は即座にうなずいた。
「じゃあお邪魔しようかしら。この子たちも一緒でいい?」
「ええ。ですが二人は……どなたでしょう?」
とよはウズとカガチに戸惑いの目を向ける。
「ミズハの眷属で私のお目付役らしいの。といっても、ちょっと生意気な普通の子供だから安心していいわ」
「普通の子供とはなんだ! 神の眷属だぞ!」
「ね、生意気でしょ?」
噛みついてくるカガチに肩をすくめると、とよは表情を和らげた。
「ふふっ、かわいらしいですね。では皆さん、こちらへ」
とよに連れられ、百代たちは彼女の家へ向かう。
家の前では、穏やかそうな男性が出迎えてくれた。
「巫女の百代さんですね。僕は恭平、妻と子供から話は聞いています」
恭平に促されて茶の間に座ると、隼人が服の裾を引っ張ってきた。
「巫女のお姉ちゃん、神様のお兄ちゃんは今日来てないの?」
「ミズハは今日、お留守番なのよ」
ミズハは「村でのことは君に任せるよ」と言って、社に一人残っている。水源を回復させる神らしい行いをした後でも、やはり人間にはまだ近づきがたく思っているようだ。
それでいい、と百代は思っている。傷が十分癒えるまで、無理に気が引ける場所へ行く必要もない。だが隼人は残念そうに目線を落とした。
「そっかぁ。お兄ちゃんにもお礼したかったな」
「なら、また社に来て、言ってあげてちょうだい。きっと喜ぶから」
「うん!」
隼人は嬉しそうにうなずいた。純粋にミズハを神として信頼している彼の姿に、百代も嬉しくなってくる。続けて隼人と雑談をしていると、とよがお茶を運んで来た。
「どうぞ、熱いのでお気を付けて」
「ありがとう、いただくわね」
食料不足の最中、本当はお茶を出すのも苦しいだろう。気遣いをありがたく思いながらも、百代は一口茶をすすった。湯飲みを置くと、とよと恭平は二人揃って頭を下げる。
「ありがとうございます。妻を救っていただいた上に、村の水を取り戻していただいたなんて」
「なのに私たちは、あなたや社の神様を信じず、本当に申し訳ありませんでした」
「もういいわよ、頭を上げて」
二人の謝罪に、百代は首を横に振って言葉を続けた。
「むしろ、こちらこそお礼を言わないと。ミズハを信じてくれてありがとう」
とよは小さく鼻をすすりながら顔を上げる。
「許していただける上に、そんなことまで……本当に百代さんは寛大ですね」
「あなたたちがミズハを恨む理由も理解できたもの。水源を見に行って余計にね」
水源に水でできた蛇の人形があったこと、その蛇は人為的に作られたものであること、犯人は異能を使う人間の可能性が高いこと。それら全てを百代は二人に話していく。話が進むごとに、とよと恭平の顔が青くなっていった。
「そんな、水不足が誰かの仕業だったなんて……」
「念のため聞きたいんだけれど、この村に異能を使える人はいる?」
恭平は首を横に振る。
「いいえ、草田瀬の村はみんな普通の人間ですから」
「なら犯人は、村の外の人間かしら。水不足が始まった一月前辺りに、村へ誰か来たりしていない?」
「……そういえば、見慣れない人がいたという噂を聞きましたね」
とよの言葉に、百代は思わず身を乗り出した。
「それ、どんな人だったの!?」
「そこまでは……他の方なら何か知っているかもしれませんが」
「そう……でも情報は助かるわ」
外の人間が草田瀬に来ていたことは確実だ。他の村人たちにも話を聞ければ、犯人の手がかりが掴めるだろうか。腕組みをしながら考えていると、ウズとカガチが両側から百代を見上げてきた。
「おい、また村人に話を聞くつもりじゃないだろうな」
「主さまが、危ないことは駄目って」
二人は百代が前と同じく村人たちから傷つけられると思っているのだろう。ミズハからも念を押されているのかもしれない。
「大丈夫よ、多分もう前ほど拒絶されはしないでしょう。でも何も考えず聞くことはしないけどね」
水不足を解決したことで、村人たちの百代やミズハへの警戒心は多少薄れている。再び土を投げられることはないだろう。しかし普通に話しかけても、答えてくれる可能性は低い。
何か良い案はないかと考えながら顔を上げると、壁に猟銃が掛かっているのが目に入った。
「恭平さん、狩りでもするの?」
「ああいえ、あれは僕の父のものです」
恭平の父は村の中でも腕利きの猟師だったらしく、銃や罠を使って獲物を仕留めては村人たちに振る舞っていたという。
「父が獲物を捕ってきたときは、みんな大喜びでした。獣肉といえば、この村ではごちそうでしたから。他に腕利きの猟師はおらず、去年父が亡くなってからは、獣肉も滅多に手に入らなくなってしまいましたけれどね」
「へえ……」
百代は壁にかかった猟銃を見つめる。銃は古いものではあったが、すぐに使えそうなほど丁寧に手入れされていた。きっと恭平が父の亡き後も大事に扱っていたのだろう。
百代は銃を直接扱ったことはないが、回帰する中で銃の扱い方についての本は読んだことがある。それにいつかの人生で用心棒をやっていた頃、野宿中に罠をしかけて獣を捕まえ食べたりもしていた。空腹だったそのときの百代は、肉が焼ける香ばしい匂いに、強烈に惹かれたことを覚えている。
(草田瀬で獣肉はごちそう。しかも水が戻ったばかりで食糧不足は変わらない……)
ひとつの考えが浮かんで来て、百代は恭平に視線を戻す。
「ねえ恭平さん。お父さんの狩猟道具って、まだ使える?」
「使えますけど……」
「じゃあ、ちょっと貸してくれない?」
問いかけた百代に、ウズとカガチはぎょっとする。
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百代は猟銃を横目に見ながら、にやりと口角を上げてみせる。
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