ぼくらのファーストキスは錆の味がした

あびこわく

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友達ごっこ

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 カーテンの隙間から指す光に上杉は自室で目をさました。
 布団に入ったままスマホで時間を確認して目を閉じる。
 しばらくするとドアを開ける音がして、そのまま寝たふりをしているとズシリとした重みが体にかかり揺さぶられた。

「お兄ちゃん! 起きて!」
「うん……茉莉まつり、起きるから退いて?」
 本当は一人で起きれるのだが毎朝、妹が起こしに来るので上杉は毎度寝たふりをする。
 この家で唯一、自分が家族の一員らしい時間がそれだけなので、ままごとの様だと思いながらも上杉はそうしている。
 体をベッドから起こすと制服に着替えて洗面所に向かった。
 洗面所で父と顔を合わせて一瞬、たじろいだが上杉は直ぐに笑顔を作った。
「おはようございます」
「君は服すらちゃんと着られないのか」
 父は冷たく言い放ち洗面所から出て行った。
 口元だけの笑顔から真顔に戻すと上杉は顔を洗って歯を磨く。
 リビングから父と母と妹の楽しげな声が聞こえてきたが疎外感などとっくに感じなくなっていた。
 これが上杉家の当たり前。
 上杉はリビングに行く事なく朝飯も食べずにいつも通り、学校に向かった。
 
 教室に向かう途中、廊下で武田を見つけると上杉は昨日の事もありテンション高く武田の肩に手を回して捕まえた。
「武田くんおはよー」
「朝から鬱陶しいよ。離してくれる?」
 武田はジロリと上杉に目を向けていつも通りの対応をした。
 昨日の事を引きずっている様子のない武田に上杉は拍子抜けした。
 武田は持っていた紙袋を上杉に突き出した。

「これ、ジャージ洗ったから。ちゃんと血も落ちてるよ」
「早っ。もしかして今日、体育ある?」
「ないよ。てか時間割、把握してないの?」
「え、だって武田くんに聞いたらええやん」
「……上杉くん、何しに学校きてるの?」
「武田くんツンばっかりやな。いつなったらデレんの?」
「デレないよ」
 喋りながら教室に入ると三好が勢いよく話しかけて来た。
「上杉くん、お姉ちゃんっていたりする⁉︎」
「……おらん。妹ならおるけど」
「妹! いくつ?」
「小四」
 三好は聞くなり大袈裟に項垂れたが隣の武田に気付いて顔を上げた。
「そうだ武田は⁉︎」
「一人っ子だけど」
「マジかぁ」
 再び項垂れた三好に上杉と武田は顔を見合わせた。
「ありがとう、他当たるわ」
 教室を出て行く三好に一瞥して武田は自分の席につく。上杉も首を傾げて席についた。
 
「上杉くん、妹いるんだね。意外だった」
 珍しく話しかけてきた武田に上杉は机から顔を上げた。
「ああ、おるよ。歳離れてるやろ?」
「ケンカとかする?」
「した事ないなぁ……女の子やし可愛いよ?」
「へぇ、仲良いんだね」
 一瞬、間が空いて上杉は「うん」と笑った。
 確かに妹は可愛い。懐いてもくれている。
 ただ、母の連れ子で放置されて育った自分と本物の両親から愛されて育った妹と比べてしまう時がある。
 仲の良いフリを自分はしているのかも知れない。妹だけが自分を家族として見てくれている。
「三好くん、何やったんかな?」
「さあ?」
 話を変えて上杉は誤魔化した。
 家族の話は聞かれたくないし話したくもない。
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