かつて最弱だった魔獣4匹は、最強の頂きまで上り詰めたので同窓会をするようです。

カモミール

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2章:セントフィリアの冒険

32話.逆鱗

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※クラーケン視点です。

咆哮と共に少女の体はみるみるうちに大きくなっていった。

肌質も変わり、黒い鱗が浮き出ており、漆黒の羽が生えた。このフォルムは明らかにドラゴン。

しかもただのドラゴンじゃない。

人化の術を得特しているということは比較的知能の高いドラゴンの筈だった。

ドラゴンは魔獣の中でも最上位種族である。

成熟すれば最低でもAランクレベルの強さにはなると言う。

それに加えて知能のある個体だ。

Sランクは確実だろう。

だが、Sランクこっちも同じだ。
ねじ伏せて返り討ちに…

ん?
あれ?ちょっと待て。

小さな少女がドラゴンへとフォルムを変えたいく中でその内なる魔力量も鮮明に捉えられるようになってきた。

なんだ!?この膨大すぎる魔力は。

「お、お前、何者だ!!?なんだっ!?その魔力は!?」
「………」

問いかけるも返事はない。  
こちらの声などきこえていないかなようだった。

「くっ」

まずい、まずいぞ。
このドラゴンの標的は間違いなく俺だ。

真正面からじゃ勝てない。
しかも、先程の戦いでこっちはもう死にかけている。

いや、待てよ。
岩から洞窟の外をちらりと見る。

あの羽の女がもうすぐここに来る筈だ。羽の女と目の前のドラゴンをぶつければ、その隙に俺は逃げられる。

こんなところで死ねるかってんだ。
絶対生き延びる。

てめぇは肉弾戦で戦うタイプだろ。
その膨大すぎる魔力量で力任せに戦うタイプとみた。

だが、対肉弾戦に関してはこっちもとっておきがあるんだよ。

伸縮能力スケールモールを全解放する。

巨大化MAXフォルム。

体も足も、全てを5倍に調整して巨大化させる。
俺の体長はみるみる伸び、洞窟を破壊した。

俺の巨大は丸見えだったようで、都市中から大きな悲鳴が聞こえた。

「驚いたか、ドラゴン!俺の能力はこけ脅しじゃねぇ
巨大化する分質量も、筋肉量も増える。みろ!ドラゴン。お前より遥かにでかくなったぞ。チビ!」

俺の挑発に目の前のドラゴンは黙ったままだった。

まぁいいさ。使い物になる足は……4本。

十分だ。

羽の女ももうここに着く。
この足でぶん殴って怯ませてから離脱してやる。

先手必勝、くらえ!!

4本の、欠けた足で一斉に拳を繰り出す。

だが、ドラゴンは動じない。

俺の攻撃など意に介さないとでも言うようにただ静かに黒い腕を握りしめた。

そして…






◇◇
※オル目線です

感情が渦に飲み込まれたようにグチャグチャだ。

この感覚は何度か覚えがある。

怒ればいいのか、悲しめばいいのか
それ以外にも消えてしまいたいという自虐的な感情まだ湧き上がってくる。

そうやって感情のコントロールを見失うと、自分が自分じゃなくなったみたいに意識が飛ぶんだ。

以前こうなった時はどうなったか。
いつも正気に戻った時、辺りは真っ平だ。

1番印象に残っているのは両親と会った時こうなってしまったことだ。

そのあと両親は私の目の前から姿を消した。

私がこの感覚に陥る時はいつも同じ。

大切な人を失って孤独を感じる時。
そして、心の奥底から全てを破壊したいと願った時。

今回その感情のトリガーを引いたのは、間違いなくロイだ。

ロイド・エル・ハートブルク。
私の興味を引いた男の子。

昨日会ったばかりだが、何故か彼といると不思議と安心できた。

私は頭が悪いから、誰かと一緒にいることに理由を求めない。ただロイと遊んでたかっただけだ。それなのに。

もうブチ殺す。

「驚いたか、ドラゴン!俺の能力はこけ脅しじゃねぇ
巨大化する分質量も、筋肉量も増える。みろ!ドラゴン。お前より遥かにでかくなったぞ。チビ!」

目の前のデカイのが何か言っている。


だが、その時目の前の敵とは別に頭の中から声が響いた。
「オル!やめなさい!」
「我もそれはまずいと思うわ。人間の味方するわけやないけど。オルちゃんのためにならんよ」

2つの聞き覚えのある声がした。
とても安心感のある声。
親友達の声だ。

少しだけ正気に戻った。
だけど、それでもロイに酷いことをされた怒りは収まらない。
ロイはクラーケンに押しつぶされてしまった。

人間があんな攻撃喰らって助かりっこない。

絶対に許さない!
私から大事なものを奪うな。

沸き狂う感情に身を委ねようとしたその時、またしても声がした。

「落ちついて!オル!
ダイジョーブ!!
私がなんとかしてあげるから!」

「……」

その声も、よく聞いたことのある親友の声だった。

声をかけてくれているのは、皆んな大好きな友達たち。

だけど、最後の声の主。
彼女には、安心とは別の信頼感があった。

どんな大変な状況だろうと、いつも私のことを分かってくれて、必ずなんとかしてくれるという信頼感が。

その彼女が大丈夫と、そう言ったのだ。
だから私は正気を取り戻す。








海の怪物、クラーケンはその巨体をさらに巨大化させ、オルゴラズベリーの硬い鱗を圧力で押し潰そうと攻撃を仕掛けてきた。

しかし、オルゴラズベリーは動じなかった。

彼女は体の中に宿る魔力を集中させ、右腕にその力を思い切り乗せる。

「ガアアアアアアアアアアッ!!!」

オルゴラズベリーは咆哮と共に一振りの拳を放った。
その瞬間、クラーケンの目には何が起きたのか理解できなかった。

その一振りは驚くほどの速さや華麗さを持っているわけではなかったが、それでも強烈な威力を秘めていた。

「・・・・!!!???」



ただ、拳を繰り出す瞬間。
風が荒れ狂い、クラーケンの巨大化させた足は全て吹き飛ばされ、衝撃はそのままクラーケンの体を貫通した。

巨大化させた筋肉は破裂し、肉片と化して、海の彼方まで吹き飛んだ。

衝撃はクラーケンを吹き飛ばす事にとどまらず、周囲の海に旋風を巻き起こした。

もしオルゴラズベリーの一撃が海岸沿いでなかったら、都市の10分の1はその衝撃で吹き飛ばされていただろう。

こうして海の怪物、クラーケンはさらなる怪物の手によって蹂躙されたのだった。






◇◇
※オル目線です


「ふうっ」

人間の姿に戻る。
人化魔法は難しいし苦手だけど、今回はうまくできたかな。

「オル、右手」
「! フェルミナ?いたの?」

見ると私の右手はドラゴンの腕のままだった。

やっぱり人化は苦手だ。

「この子ね。あなたのお気に入りは」

フェルミナの腕の中にはロイが抱えられていた。

だが、無事とは言い難いことは私にも分かった。

「回復ポーションを飲ませたけど、正直助かるとは。それくらいひどい傷」

「…ロイ」

「とにかく、もう直ぐここに冒険者達が来ると思うわ。この子は彼らに任せましょう。あなたは冒険者に見つからない方がいいと思うわ。だから早く外へ」
「それには及ばないよ」

聞き覚えのある声がした。

声の主は液体だった。

その液体はすばしっこく動き、フェルミナの周りをクルクルと回る。

「フェルミナ、ポーション残ってるの?少し借りるわよ」

液体はその動く軌道に合わせてどんどん水量を増やしていき、ロイとフェルミナを包み込むように飲み込んだ。

そして、その青い水は輝き始めた。
まるでキラキラと輝く銀河の様に。

その光景を街の人々がみていたら、すぐさまこの洞窟を観光スポットにしようと騒ぎ立てたことだろう。

だが、やがてその幻想的な光は周囲の景色と一体となって消えてしまった。

フェルミナの方を見ると、先程までフェルミナの腕の中でうなされていたロイが、気持ちよさそうな寝顔を見せていた。

そして、

「安心せい。もうだいじょうぶい!!」

ピースサインをして、私たちの前に現れた液体ことスライム王セレーネは陽気にその姿を顕現させたのだった。









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