かつて最弱だった魔獣4匹は、最強の頂きまで上り詰めたので同窓会をするようです。

カモミール

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2章:セントフィリアの冒険

39話.古城の防衛戦⑤:協力

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炎はとてつもない勢いで燃え盛っている。



人間の弱点はその耐久力の低さ。本当に大丈夫だろうか。

あの炎の中を耐える丈夫さが人間にあるとはとても思えなかった。



だが、その心配は杞憂だった。



いや、杞憂ならまだ良かったのだ。

どうやら敵は想像以上に強敵らしい。



炎が尽きた時、タナとモアが中心から姿を表した。



なんと、2人は無傷で炎の中から姿を現したのだ。

いや、正確には無傷ではない。



彼らの肌には軽い、本当に軽い火傷や傷跡が付いていたがそれだけだ。



「…まじっすか」



バーナードも驚きを隠せないようだ。

それもそうだろう。渾身の一撃だった筈だろうに。



「そう悲観する事もありませんよ。どうやら、無傷の理由はアレのようですね」



タナとモアの足元には大きな魔法陣が展開されていた。



どうやら、後方に待機させていた兵士達が結界魔法を編み込むように重ねがけしていたようだ。



見たところ10000人はいる。そいつら全員が魔法を使えるわけえではないだろうが、魔法陣から感じられる膨大な魔力をみるに

恐らく5000人はその魔法の構築に携わっているはずだ。



むしろその防御力を僅かにでも突破してタナやモアに傷をつけたバーナードの魔法がすごいと言える。



人間は種族間で協力することが得意な奴らだ。



人間、魔獣、魔族

この世界の生命体は3種に大別するとこうなる。



その3種は外見や知性などの面でその特徴に大きく差があり、それを指標に分類されている。



だが、その違いの中に魔法の使い方という指標も存在する。



魔法面で人間と魔獣の違いは魔力を後天的に使えるか先天的に使えるかだ。



魔獣が魔力が生まれつき感覚で操っているのに対し、人間は長き研鑽を積み、初めて魔力が扱えるようになる。



だが、その研鑽の過程で、多くの複雑な魔法を操る人間の魔法技術力は、魔獣では足元にも及ばない領域へと進化してしまった。



もっとも魔獣は先天的に魔力を使えることもあってか、魔力の量を示す単位、MPが人間のそれとは比べ物にならないほど高いという特徴があるが。



だが、それでも人間の魔力技術は敵対する時に非常に厄介になる。



現にあの魔法陣は、人間の技術の結晶だ。複雑な魔法術式を。組み立てる工程を複数に分割し、多人数がそれぞれ担当して結合させ作り上げる、魔法防御結界陣だ。



その魔法陣が、完璧とはいかないまでもバーナードの強力な炎魔法を防いだのだ。







「それだけじゃないよ」



その時、私の分析を察知したかのようにタナが話しかけてきた。



「この魔法陣にはもう一つ別の効果がある。これからわかると思うけど、ちょっと卑怯だと思うから、せめて先に伝えとくね」



「おい!」

自分達の魔法をバラしたことについて、モアがイライラしたようにタナを嗜めるが、タナは気に止めないといったようにモアを無視する。



タナはその大きな黒い目を見開き、中腰で鎌を構えた。



「さぁ、いくよ」



短くそう言い、ダンッとタナは強く地面を蹴り飛ばすように弾き、突進してきた。



速い。それもさっきよりも段違いに。



バーナードが瞬時に危機を察知し、突進してくるタナの前に立った。



再び大鎌とバーナードの炎の翼がぶつかり合い、鈍い音を立てた。



「…っ!おっも」



バーナードの反応から見るに攻撃力もかなり上がっているようだ。



「やっぱ悪くないね!この力があふれる感覚」

タナはブンブンと大鎌を振り回し、勢いをつけて何度もバーナードにぶつける。



ガンガンとうるさく鈍い音がした。



「いたっ…いっす」

炎の翼でバーナードは辛うじて受け止めてはいるが、分が悪そうだ。



「その変な炎でしょ。君が硬い理由は。からくり分からないけど。炎を纏ってない箇所を庇ってるのがバレバレだよ」



そして、ついにタナはさらに大鎌を何度もバーナードにぶつける。

そのすさまじい猛攻に手数がバーナードの炎の防御を潜り抜け、彼女の腹をえぐった。



「あっ!」



バーナードがたまらずに顔をゆがめる。

だがタナはその手を止めずに、ふらついたバーナードを何度も切りつけた。

そして、頭にトドメの一撃を加えようとする。



タナの鎌がバーナードの頭を割ったかに思えた瞬間。バーナードの姿が霧となって消えた。



「!…また幻術」



当然、私もただ見てるわけではない。

幻術でバーナードの身代わりを作り、糸でバーナードを引き寄せて優しく抱える。



バーナードの息遣いはかなり荒い。



「バ、バーナードさん、大丈夫ですか!」

「だ、だいじょぶ、っすよ。ドジやったっす。けど、このくらいの、傷なら私の能力なら5分あれば」



私がよく言葉に詰まるのは引っ込み思案な性格のせいだが、バーナードはそれと違い、明らかにしんどそうに見えた。





「ちっ、あの幻術。やっぱ厄介だな」

もう1人、後ろから見てた男、モアが毒付く。



「だが、もう待機の必要はないな。全隊、突撃!」



うおおおおお、と地面が揺れるかと思う程の大きな怒号が上がり、10000もの兵が一斉に襲いかかってくる。



やばい。このタイミングで突撃!?



いくら私たちSランク魔獣でも、タナとモアを相手にしながらあれだけの軍勢を相手にするのは無理だ。



セレーネ様が連れて来てくださった軍勢を筆頭にここには多くの魔獣がいる。魔獣一体一体の強さは負けてないはずだ。けど。



ここで混戦になってしまえば、必ず多くの死者が出る。



死者を出すなという真蜘羅様からの命令は果たせそうもない。



それは紫苑にとっては何よりも屈辱的で恥ずべきことだった。



生捕りも無理だろう。



正直勝てるかもわからない。

そのくらい、万もの人間たちの能力底上げ魔法によって強化されたタナは脅威的だった。



申し訳ありません。



紫苑が、命令を破り人間達を殺す気で対処をする覚悟を決めた時、万もの軍勢のその足が止まった。



文字通りに、まるで時間が止まったようにピタリと止まったのだ。



それも1人残らず全て。



「どうしたんだ。お前達!?」



異様な事態にタナやモアも振り向く。







その時ぬるりとした全身を舐めまわされるような気持ち悪い気配を全身が感じた。



恐らくその場にいた全員が感じたそれは圧倒的存在感からくる気配なのか、あるいは強すぎる殺気なのか、

独特すぎて未だに紫苑には分からない。



だが、感じたことは今まで何度もある。

最も頼りになる存在からのものだとすぐに分かった。



「あらあら、元気な冒険者ちゃんたちやなぁ。人の家の前に蟻みたいにわらわらと。踏みつぶしてさしあげましょか?」



白い髪に、白装束の浴衣。真っ赤に光る眼。



紫の扇子で口元を隠し、クスクスと不敵に笑いながらゆっくりと歩いてこちらに近づいてくるその人物。



「真蜘羅マクラ様ぁ!!」



魔獣四王の一角である蜘蛛の王、真蜘羅の参戦に歓喜を押さえられず、思わず紫苑は主人の名を叫んでいた。






_____________________________



読んでくださり、ありがとうございます。

次回投稿は7月21日(金)の20時からになります。



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