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3話.ぎこちないステップ
しおりを挟むざわりと周囲がこちらに注目する。
ライオネルは貴族では最低位の男爵だ。いくらわたくし相手とは言え、本来第一王女と踊る資格などない。
だが、そんなことは気にしていないかのような目にわたくしは気圧された。
「え、ええ。よろしいですわ」
曲が流れ、最初のステップを踏む。ライオネルの動きはぎこちなく、わたくしは仕方なくリードをしてあげる。
ライオネルはそのことに申し訳なさそうに頭を下げた。
「どういうつもりですか?」
周囲に聞こえないよう、小声で話す。
わたくしは、キッとライオネルを睨みつけ、威圧する。
彼はわたくしなんかに関わるべきではないのだ。
「…聞きたいことがあって」
「聞きたいこと?」
「なんで、偽ってるの?」
「…は?」
何を聞かれているのか分からず、頭が混乱する。
「君の態度はすごい高圧的でわがままに見えるけど、相手を気遣ってほんの少しだけどセーブしているようにみえた。それに…扇子で隠してるけど、全然楽しそうじゃない。それどころか悲しそうにみえた。相手を陥れる事に快楽を感じる人間は、もっと嬉々としてる」
「それ…は」
絶句して言葉が出てこなかった。
確かに言われてみればそうなのだろうが、そんなことを指摘されるとは夢にも思わなかった。
今まで、誰も、
お兄様ですらわたくしのことをそこまで見てくれた人はいなかったのに。
それをついさっき会ったばかりの青年が言及したのだ。
「意外と顔に出やすいんだね」
ぼそぼそとライオネルが言う。
「…っ」
「力になりたい。何か事情があるなら」
その時音楽が終わり、ダンスも終わった。
「ひ、必要ありませんわっ」
急いでライオネルの手を放した。
「あっ」
ライオネルが手を伸ばそうとするが、その前に言い放つ。
「調子にのらないでくださる?男爵風情が、二度とわたくしに話しかけないでちょうだい」
そう怒鳴って、舞踏会をあとにし、自室に戻った。
会場中が、唖然としていた。 これでよかったのか。わたくしの心がこれまでに無い位揺れているのを感じた。
でも、彼の手を取ることは決してできない。 わたくしも既に多くの人の心を踏みにじった罪人なのだから。
◇◇
舞踏会から2週間が経った。
冬休みが明け、貴族の子女が通う学園、ロゼリア学園の始業式が行われる。
わたくしもこの学園に通う3回生だ。
今年卒業予定であり、この学園の卒業をもって、貴族は貴族の、王族は王族としての地位を公的に認められることになる。
朝の時間。教室の隅の席で、窓の外をみていた。
貴族の子女たちは、わたくしに気に障らないように控えめな声で、話をしている。
このクラスはわたくしが王族の権力で幅を利かせているから、わたくしがカーストの頂点に立っている。
だが、誰かと仲良くなると、悪意を振り向くのに都合が悪いので、
友達は作らない。
その結果、カーストの頂点にありながら、1人ぼっちというおかしな状況ができあがっていた。
わたくしに隠れて話すクラスメイト達は楽しそうだ。
もし、魔王などに憑りつかれなければ、あの中に自分も混ざって笑っていたのかなと少し思う。
フルフルと首を振る。
ただの未練だ。生き方はもう決めている。
その時、ガラッと教室の扉があき、先生が入ってくる。隣には誰かがいた。
その人物を見て、わたくしは顔を思い切りしかめる。
あの時のようにオールバックではないが、間違いない。
恐らく、人生でこれほど嫌な顔をしたのはこれが初めてだろう。
「あの、ライオネル・メイウッドです。皆さん宜しくお願いします」
編入生として紹介されたのは、2週間前、魔王に憑りつかれてから初めてわたくしの悪役令嬢の皮をはがした青年だった。
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