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11話.激高
しおりを挟む卒業式の日から僕は、賓客として王宮でもてなされていた。
マーニィの事件で僕から聴取をする必要があったこと、
事件解決に大きく貢献した褒美を取らせることのために
王都にしばらく滞在して欲しいと打診があったのだ。
王宮の生活は、超うまい食事、貸してもらった金で装飾された服、金のライオンから湯が流れる風呂と豪華過ぎて、自分にとって場違い過ぎて目が回った。
とはいえ先日、マーニィが起きたし、そろそろ帰宅する事になるだろうなと思う。
その前に、マーニィの話を検討しないといけないんだよな。
どうしたものかと、考えながら金で刺繍された絨毯が敷いてある廊下を歩いて
いると、正面にマーニィの兄、レオンが立っていた。
「レオン様!?」
僕が驚いて立ち尽くしていると、レオンはフッと笑いかけてくる。
「そうかしこまることはない。レオンと呼べ。それより少し話があるのだがいいだろうか?」
僕としても断る理由がない。というより、第一王子の命を断れるはずもない。
コクリとうなづいて、レオンの後に続く。
案内されたのは、レオンの部屋だった。
そこはマーニィの部屋以上に広く、たじろいでしまう。
レオンは部屋の隅にある椅子を手で指し示し「座ってくれ」と促す。
その言葉のまま、僕は席につく。
「ワインでいいかな?ロゼリア学園を卒業したのだから、もう飲めるだろ?」
「い、いえ、結構です」
学生ではないが、いきなりお酒に手を出すのは少し怖かった。
「そう。じゃあ水を」
レオンはワイングラスに水を注いで、僕に差し出す。
「それで、話って」
そう言うと、レオンはフッと笑って、聞きづらそうな顔をしながら言う。
「君はなぜマーニィの嘘を見破ることができたのかな?私たちは誰1人気づくことすらできなかったのに」
その言葉でレオンが聞きたいことに察しがついた。
なるほど、あの日の話の続きということか。
「あの、その節は大変失礼いたしました」
「そんなことはいいから」
じっとレオンはこちらを見据えてくる。
その目を見ていると、あの日の記憶が鮮明に蘇ってきた。
■■
分かったよ。そういうことなら
僕ももう退く……わけないだろ!!
あの時、僕が感じたのは、マーニィに対する反発心だった。
この3か月間の楽しかった思い出。それがこっちの独り相撲だった…かもわからないで終わらせられるもんか。
そういうつもりならこっちにも考えがある。
君が僕を頼らないなら、僕ももう君に配慮なんてしてやらない。
そうして踵を返し、僕は走り出したのだった。
僕がロゼリア学園での3か月間マーニィのために考えていたのは、彼のお兄さんであるレオンに、
マーニィの秘密を相談することだった。
マーニィの話から、マーニィとお兄さんはとても仲がいいことが伺えた。
なのに、お兄さんにずっと勘違いされたままなんて辛すぎると思った。
ちゃんと事情を話せば、お兄さんはきっと分かってくれる。
例え彼が後悔の念に苛まれたとしても、真実を知らないでいるままの方がきっとずっと辛いはずだと。
それに、マーニィには、事情を分かってくれる理解者が絶対に必要だと思った。
兄妹なのだから、お互い助け合うことができるはずだと。
だから、お兄さん、レオンのことをライオネルは調べ、この卒業式に彼が来訪する事を突き止めていた。
卒業式の行われている体育館にレオンの姿は見えなかったが、校内のどこかにいることは分かっていた。
だから、外に出てレオンの名前を叫びながら走り回った。
幸い、レオンはすぐに気づいて駆け寄ってくれた。
彼に会うと、俺は早口で現状を説明した。
初めに体育館でマーニィが断罪されそうになっていることを説明すると、レオンは複雑な顔をしていた。
「そうか。だが、それも仕方ないのかもしれないな。ここで死んだ方があの子のためかもしれん」
レオンは俯く。
ライオネルは、最初、彼の言った言葉の意味が分からなかった。
だが、しばしの沈黙、意味が咀嚼できてくると同時に、腹の底から
怒りが込み上げてくる。
「本気で言ってるんですか?」
「あれがどれほど愚かか、君も知っているだろう?どのみち、マーニィは近い将来追放される。このまま自覚もなく忌み嫌われ続けるくらいならいっそ」
そこから先、僕の理性は吹っ飛んでレオンの胸倉を掴んでいた。
彼が王族ということも頭の中にはなかった。
あれほど自分の気持ちをさらけ出したのは、人生で初めてだった。
「ふざけるなよ。マーニィがどんな気持ちでいたのか、お前に分かるのか!!マーニィに一度でも聞いたのか!?もしかしたら、何か事情があるかもしれない、そんなの誰にだってわからない。なのになんで勝手に決めつけて諦めるんだ!!信じてやれないんだ!兄妹じゃないのかよ」
一気にまくし立てて、息が荒くなる。
自分がこんなに、激情に任せた発言ができるなんて、自分でも驚いていた。
レオンはじっと聞いていた。
「……頼むよ。助けてください。男爵の僕じゃだめなんです」
「…事情を聞かせてくれないか?」
そうして、僕はマーニィの事情を包み隠さず、すべて語った。
後から思い返して背筋が凍るが、護衛の兵士が慌てて剣の柄に手をかけ、
レオンはそれを制してくれていた。
よく王族にあんなことを言ったものだと思う。
それで、レオンからの質問はなぜ僕がマーニィの秘密に気づけたか、ってことだったな。
「簡単ですよ。実は僕の姉も結構な悪女で。リアル悪役令嬢って言ったら僕の中じゃマーニィじゃなくて、姉なんです。姉に比べたら、マーニィはどこか不自然さというか、演技っぽさがあって、それでですかね」
「そうか。大変だったのだな」
レオンがワイングラスに口を付ける。
「姉は、なんというか、慈しみがない人で、僕も散々いびられてきました。僕が男爵位を継いでも、姉と父の傀儡になるのが用意が想像できます。その点マーニィには違和感しか感じませんでした。僕は、花壇に本当に嬉しそうに花に水をやってるマーニィを見て、本当に奇麗な人だと思った。世間で言われているような悪逆非道な令嬢にあんな顔はできない」
「それを見て、マーニィに惚れたんだな。一目ぼれではないか」
ニヤニヤと笑ってワインを飲みながら、レオンはこちらを見ていた。
そういえば、卒業式の時、檀上でこの話はマーニィにもしていたことを思い出した。
カッと顔が熱くなる。
「ええ。まぁ。でも反対しないんですね。僕は男爵なのに」
「私にそんな資格があると思うか?どこぞの馬の骨ならともかく、君なら反対する理由は何もないさ」
「僕なんか、そんな大層なもんじゃ」
「謙遜するなよ。君は本当にすごいことをしたんだ。マーニィを救って、私の過ちのも気づかせてくれた。君は俺にとっての勇者なんだ」
「え?」
「だから君に教えられたように、私は今度こそ大事な妹に最大限寄り添おうと思う。マーニィの意思は尊重するつもりだし、もちろん君の意思もね。この前、マーニィに言われてただろ?返事はどうするつもりだ?」
「なんでそれを?」
「聞いてた。こっそり。すまないね」
真顔で手を合わせて謝る彼の言葉に若干体が固まった。
盗み聞きされてたなんて…
この人、妹の為に暴走ししぎじゃないかと思う。
「それでどうする?どんな結論を出そうと、君らの希望が通るよう、俺も全力を尽くそう」
「僕は…」
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