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深淵の深淵の世界
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僕が物語を考え付く少し前の事
「トイレ行ってくるね」
ネムに僕は告げる。
「うん。行ってらっしゃい」
「あ、ちょっとまって。ここでトイレしたら、その…現実世界でもらししちゃうんじゃないかなぁ。ここはゆめの世界なんだろ?」
「……そうだねぇ。安心しなよ。起きたらおねしょしてるだけだから」
「えっ!?い、いやこの年になっておねしょはちょっとまずいよ。特に現実世界じゃ」
僕が慌てふためいているとネムは手で口を押えて吹き出すように笑い出した。
ロバのような耳がヒョコヒョコと動いている。
「フッ、フフッ、大丈夫だよ。ここはね。普通のゆめと現実の狭間の世界。そこに君のような悩みのある人が迷い込んでるわけなのさ」
「それが、君たちの言うマヨイビト」
「そう。マヨイビトはその精神が飛来してこのユメの世界に来る。だから、この世界になじめば肉体と精神は完全に分離されるのさ。だから、単にお茶を飲みすぎたから尿意を催した気になってるだけなんだよ。君は」
「あー、うん。なるほどね」
…からかわれたらしい。
ネムの言っていることはちょっとむずかしいけどまあ漏らさないならいいか。
納得しよう。
そのまま僕はトイレに向かった。
ところで、物語はどうしようか。
大体思いついてきたけど、なんかテーマが弱いというか…
聞く人がネムと車掌ちゃんだからなぁ。
二人に響かせるにはどんな話を作ればいいんだろう。
もっと二人を知りたい。
思考を重ねながらトイレをし、戻る途中、ふと廊下を見るとある事に気づいた。
「あれ?さっきの立ち入り禁止のドア…開いてる?」
恐る恐る扉を開ける。
すると突然ものすごい風が吹き、僕の体は扉の中へ吸い込まれた。
「うわわわわーっ!」
僕の体は暗く深いユメの底へと落ちていく。
こ、ここは?
落ちた先を見渡す。
真っ暗だ。何も見えない。本当に何もない暗黒。
「ネム―?車掌ちゃーん?」
僕は二人を呼び掛けながら歩く。もしかして僕はとんでもない危険な所に来てしまったのではないだろうか。
不安を感じた。
その時、
悲しい?怖い?
突然誰かが話かけたような気がした。
「え?だれ?」
返事はない。
ただずっと声だけが聞こえて
あいつが嫌い、憎い、ひどいことをされた、あいつさえいなければ、あいつばっかり、もう消えたい、どうしてだ、明日なんて来ない、不安だ、怖い、気持ち悪い、浅ましいい、もう終わりだ、もういやだ、絶望だ、おしまいだっ、
…きっと君の夢は叶わない。
「うわあああぁああああああああああっ!!」
必死に耳を押さえる。
だが、まったく意味はなく負の言葉が僕の中にどんどん入ってくる。
「はぁ、はぁ」
辺りには誰かいるわけではないことがなんとなく分かった。
ただ、この空間がささやいてくるのだ。
「な、なんだよこれ」
早く、早くここから出ないと
その時、
何かが風を切る音がした。
と思ったら僕は体を引っ張り上げられた。
「うわっ」
衝撃を感じると共に、バタンッと扉の閉まる音がした。
辺りを見ると列車の中だった。ネムが腕で僕を包んでくれていたのだ。
その腕はよく見ると半分黒い液体に変化していた。
どうやらネムが腕を黒液生物に変化させて伸ばし、僕を救い上げてくれたようだ。
「はぁ、はぁ。ありがとう。ネム」
「どういたしまして。ここは入っちゃだめだよ。なんで開いてたんだか」
「はぁ、はぁ、もしかして今のが深淵の深淵の世界?」
「察しがいいじゃないか。その通りさ。私が生まれた場所だ」
もう二度と戻りたくない場所だけどねとネムは呟いた。
あんな場所で…そりゃ怖くて泣いちゃうよな。
車掌ちゃんの話を思い出した。
何だか急に目頭が熱くなる。
「えっ、ちょっと。君、なんで泣いてるのさ」
「ネ、ネム~。大変だったんだね。あんなところで、ずっと、ずっと一人で」
「ちょっ。近い。それに泣くなよ~」
鼻水を垂らして近づいてくる僕の顔をネムが抑える。
「大丈夫だったー?」
その時車掌ちゃんが様子を見に来た。
「…君たち何やってんのさ?」
ネムに抱き着く形になっていた僕たちを見て車掌ちゃんが言う。
「い、いやこれはその」
「なんてね。分かってるから大丈夫だよー」
そういえば車掌ちゃんはここに起きてるすべての事を把握できるんだっけ
ほっと胸を撫でおろす。
すると、車掌ちゃんが僕だけのそばによりそっと耳打ちした
「それより、参考になったかな?」
「…!?」
そっか僕がネムと車掌ちゃんの事を知りたいって思ったからか。
あの扉は車掌ちゃんが
「…うん。ありがとう」
怖い目にあったけど、なんで車掌ちゃんがそうしたのか
なんとなく分かったから、だから僕はただそう答えた。
ネムは何を話しているのかと首をかしげている。
よし!僕の物語のテーマは決まった。
後は完成させるだけだ。
気合を入れ直す。
そして、僕は元の車両に戻って物語を作り上げたのだった。
「ネム、物語が出来たよ。それで…車掌ちゃん達をここに呼んで欲しいんだ。」
「トイレ行ってくるね」
ネムに僕は告げる。
「うん。行ってらっしゃい」
「あ、ちょっとまって。ここでトイレしたら、その…現実世界でもらししちゃうんじゃないかなぁ。ここはゆめの世界なんだろ?」
「……そうだねぇ。安心しなよ。起きたらおねしょしてるだけだから」
「えっ!?い、いやこの年になっておねしょはちょっとまずいよ。特に現実世界じゃ」
僕が慌てふためいているとネムは手で口を押えて吹き出すように笑い出した。
ロバのような耳がヒョコヒョコと動いている。
「フッ、フフッ、大丈夫だよ。ここはね。普通のゆめと現実の狭間の世界。そこに君のような悩みのある人が迷い込んでるわけなのさ」
「それが、君たちの言うマヨイビト」
「そう。マヨイビトはその精神が飛来してこのユメの世界に来る。だから、この世界になじめば肉体と精神は完全に分離されるのさ。だから、単にお茶を飲みすぎたから尿意を催した気になってるだけなんだよ。君は」
「あー、うん。なるほどね」
…からかわれたらしい。
ネムの言っていることはちょっとむずかしいけどまあ漏らさないならいいか。
納得しよう。
そのまま僕はトイレに向かった。
ところで、物語はどうしようか。
大体思いついてきたけど、なんかテーマが弱いというか…
聞く人がネムと車掌ちゃんだからなぁ。
二人に響かせるにはどんな話を作ればいいんだろう。
もっと二人を知りたい。
思考を重ねながらトイレをし、戻る途中、ふと廊下を見るとある事に気づいた。
「あれ?さっきの立ち入り禁止のドア…開いてる?」
恐る恐る扉を開ける。
すると突然ものすごい風が吹き、僕の体は扉の中へ吸い込まれた。
「うわわわわーっ!」
僕の体は暗く深いユメの底へと落ちていく。
こ、ここは?
落ちた先を見渡す。
真っ暗だ。何も見えない。本当に何もない暗黒。
「ネム―?車掌ちゃーん?」
僕は二人を呼び掛けながら歩く。もしかして僕はとんでもない危険な所に来てしまったのではないだろうか。
不安を感じた。
その時、
悲しい?怖い?
突然誰かが話かけたような気がした。
「え?だれ?」
返事はない。
ただずっと声だけが聞こえて
あいつが嫌い、憎い、ひどいことをされた、あいつさえいなければ、あいつばっかり、もう消えたい、どうしてだ、明日なんて来ない、不安だ、怖い、気持ち悪い、浅ましいい、もう終わりだ、もういやだ、絶望だ、おしまいだっ、
…きっと君の夢は叶わない。
「うわあああぁああああああああああっ!!」
必死に耳を押さえる。
だが、まったく意味はなく負の言葉が僕の中にどんどん入ってくる。
「はぁ、はぁ」
辺りには誰かいるわけではないことがなんとなく分かった。
ただ、この空間がささやいてくるのだ。
「な、なんだよこれ」
早く、早くここから出ないと
その時、
何かが風を切る音がした。
と思ったら僕は体を引っ張り上げられた。
「うわっ」
衝撃を感じると共に、バタンッと扉の閉まる音がした。
辺りを見ると列車の中だった。ネムが腕で僕を包んでくれていたのだ。
その腕はよく見ると半分黒い液体に変化していた。
どうやらネムが腕を黒液生物に変化させて伸ばし、僕を救い上げてくれたようだ。
「はぁ、はぁ。ありがとう。ネム」
「どういたしまして。ここは入っちゃだめだよ。なんで開いてたんだか」
「はぁ、はぁ、もしかして今のが深淵の深淵の世界?」
「察しがいいじゃないか。その通りさ。私が生まれた場所だ」
もう二度と戻りたくない場所だけどねとネムは呟いた。
あんな場所で…そりゃ怖くて泣いちゃうよな。
車掌ちゃんの話を思い出した。
何だか急に目頭が熱くなる。
「えっ、ちょっと。君、なんで泣いてるのさ」
「ネ、ネム~。大変だったんだね。あんなところで、ずっと、ずっと一人で」
「ちょっ。近い。それに泣くなよ~」
鼻水を垂らして近づいてくる僕の顔をネムが抑える。
「大丈夫だったー?」
その時車掌ちゃんが様子を見に来た。
「…君たち何やってんのさ?」
ネムに抱き着く形になっていた僕たちを見て車掌ちゃんが言う。
「い、いやこれはその」
「なんてね。分かってるから大丈夫だよー」
そういえば車掌ちゃんはここに起きてるすべての事を把握できるんだっけ
ほっと胸を撫でおろす。
すると、車掌ちゃんが僕だけのそばによりそっと耳打ちした
「それより、参考になったかな?」
「…!?」
そっか僕がネムと車掌ちゃんの事を知りたいって思ったからか。
あの扉は車掌ちゃんが
「…うん。ありがとう」
怖い目にあったけど、なんで車掌ちゃんがそうしたのか
なんとなく分かったから、だから僕はただそう答えた。
ネムは何を話しているのかと首をかしげている。
よし!僕の物語のテーマは決まった。
後は完成させるだけだ。
気合を入れ直す。
そして、僕は元の車両に戻って物語を作り上げたのだった。
「ネム、物語が出来たよ。それで…車掌ちゃん達をここに呼んで欲しいんだ。」
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